現在、ボクシング中!
「<(株)A・ナーゴ・サウンド>の社長の、”若本 典久”様より、緊急の討伐依頼が来ました。
討伐モンスターは、モンスターランク”F”の<バニング・ドック>が5体です。本田さんは、至急
<サポート車>に来て下さい。」”五十嵐”さんの声で社内放送が流れた。
俺は、”正しい居候の過ごし方”を考えるのを中止し、<サポート車>に急いだ。
<サポート車>に行くと、”五十嵐”さんが待っていた。
「準備は大丈夫ですか?本田さん。」”五十嵐”さんが尋ねて来た。
「大丈夫です!片手剣2本にスペアの片手剣2本、そして、<キューブ>を積みました。」
俺は”五十嵐”さんに、準備万端な事を伝えた。
<キューブ>は、<アズナブル>で製造販売されている<マジックアイテム>である。
<キューブ>は、登録された人間だけが使える<アイテムボックス>で、大きさは掌より少し大きい金属製で、6面全部に1個づつ”白い宝玉”が埋め込まれている。
我が社では、第1班はシスコン兄さん、第2班は”横田”、第3班は”五十嵐”さんが<キューブ>に
登録されている。我が社の<キューブ>は1000万円と高価だが、小学館の体育館位の収納が可能である。
1番安い<キューブ>でも30万円位はして、4トントラックのコンテナ位は収納出来た。
「本田さんは、討伐モンスターの<バニング・ドック>の特徴を知っていますか?」
”五十嵐”さんが、尋ねて来た。
「すいません、全く知りません。」俺は答えた。
「<バニング・ドック>は、体高が140センチ位の大きさの、全身が炎で覆われた一つ目で、兎の様な耳をしたモンスターです。口から火球を放ち、集団で襲って来ます。・・・<魔弾>が無くて大丈夫ですか?」
”五十嵐”さんが、討伐するモンスターの情報と心配をしてきた。
「・・・<魔弾>ですか、無くても大丈夫だと思います。」俺は答えた。
<魔弾>、これも<アズナブル>で製造販売している<マジックアイテム>である。
”ハンター”は異世界に召喚されていない人間なので、魔法は使えない。そこで、異世界で<錬金術>を習得、
もしくは<特殊スキル>で<錬金術>を持っている者が、”弾丸”に魔法を込めた<魔弾>と<魔弾>を撃ち出す<魔導銃>を作り出した。
<魔弾>と<魔導銃>そして、その他の<マジックアイテム>の製造には、<魔石>が必要不可欠である、
<魔石>はモンスターの心臓の中に存在し、モンスターランクが高いほど<魔石>は大きく、”魔力”の純度も
高かった。
<魔弾>は”薬莢”を製造する時に、<魔石>を混ぜる事によって魔法を閉じ込める事が可能となり、
<魔導銃>で撃ち出す事で、”ハンター”でも魔法が使える様になる。
”下級魔法”の<魔弾>は1発の値段が1万円、”中級魔法”の<魔弾>は1発の値段が5万円、”上級魔法”の<魔弾>は1発の最低の値段が10万円である。しかも、”上級魔法”の<魔弾>は、<ハンターライセンス>が”A”か”B”でないと販売して貰えない。
<魔導銃>も、”下級魔法”・”中級魔法”は単発式で、射程距離は5~10メートルである。
<天空の城 ラピ○タ>の”パズ○”が持っていた銃によく似ている。
”上級魔法”の<魔導銃>も<ハンターライセンス>が”A”か”B”でないと販売して貰えない。
”上級魔法”は連射式で、射程距離は15~30メートルである。これは、魔法の威力が高くて、広範囲なので
射程距離が長い。<魔導銃>は<モンスタ○ハンター>の<ヘビーボ○ガン>よく似ている。
<魔導銃>を使う”ハンター”を”ガンナー”と呼ぶ。
我が社では、5人で1小隊を構成している。4人が”剣士”で1人が”ガンナー”である。
モンスターランク”G”の時は、”ガンナー”は戦わない。”F”の時は、”剣士”がモンスターを攻撃し、弱らせて
動きを鈍らせてから”ガンナー”が魔法を撃ち込む。”E”の時は、”ガンナー”の持っている全ての<魔弾>を
撃ち込んでから、”剣士”が攻撃する。これが通常の”ガンナー”の戦法。だが、特例もある。
今回の様な、モンスターが身体に”炎”・”雷”・”水”・”風”を纏っていた場合、攻撃した”剣士”がダメージを
負うので、”ガンナー”が最初に攻撃して”炎”・”雷”・”水”・”風”を消滅させてから、”剣士”が攻撃するのだ。
まあ、俺は”雷”・”風”は無理だけど、”炎”・”水”なら体に触れる前に、移動が出来るから問題無い。
「・・・本当に大丈夫ですか?何か顔色も悪いし。」運転をしながら、”五十嵐”さんが心配してくれた。
「ああ、大丈夫ですよ。真夜中に二人で、”はしゃいで”いただけですから。」俺は苦笑して言った。
「・・・本田さんも”一応”プロなんですから、ちゃんと働いて下さい。」
何故か不機嫌になった、”五十嵐”さんが俺に言って来た。
「え!?あ、はい。」何故、不機嫌になったか分からず、混乱しながら答える俺。
そのまま、”五十嵐”さんは不機嫌で、俺は混乱しながら<(株)A・ナーゴ・サウンド>に到着した。
会社の200メートル位向こう側で、道路に駐車されている車が何台も炎上している。車やビルに火球を撃ち込んでいる、あのモンスターが<バニング・ドック>なのであろう。
”ハンター”車線”に<サポート車>を駐車して、俺と”五十嵐”さんが<サポート車>を降りると、
<(株)A・ナーゴ・サウンド>から、男性が玄関から飛び出て来た。
「待っていたよお!君達いい!!」物凄く、渋い声をした男性だった。
「”若本 典久”社長ですか?お待たせしました、<(株)藤原モンスターバスター>です。私が担当の
”五十嵐”です。そちらの”剣士”は、”本田”です。よろしくお願いします。」
”五十嵐”さんが、営業トークで切り出した。
「うん、うん、待っていたよお!それで、他の”ハンター”は何時来るんだねえ?」渋い声で、社長が聞く。
「えっと、他の”ハンター”は別の現場に行っておりまして、私と”本田”のみになっています。」
”五十嵐”さんは、言い辛そうに社長に言った。
「嘘だろう!高い料金を毎月払っているのに、2人だけって事は無いだろう!詐欺だろう!!」
顔を真っ赤にして、渋い声で社長が怒鳴った。
「・・・!!ア○ゴさんだ!!」社長の渋い声に、聞き覚えがあった俺は叫んでしまった。
「誰が寿司ネタだ!この野郎う!!いいか、俺はランク”F”が5体と言ったんだ!普通なら、最低でも
20人で来るもんだろうがあ!何で2人なんだあ!?2人じゃあ、絶対に討伐できないし、足止めも
出来ない、何しに来たんだお前らあ!!」社長が、渋い声で大激怒して言った。
「お、落ち着いて下さい!社長!」オロオロしながら、”五十嵐”さんが社長を宥めた。
「いや、俺なら討伐は可能ですけど。」俺は冷静に答えた。
社長と”五十嵐”さんが動きを止めて、目を丸くして俺を見た。
「・・・今、討伐出来ると聞こえたんだがあ。」怒りを抑えて、渋い声で社長が言う。
「はい、俺なら討伐可能です。」俺は、両手に片手剣を逆手に持ちながら言う。
「だったら!今すぐアイツ等を倒して来い!今すぐにだあ!」
<バニング・ドック>を指差しながら、俺に渋い声で言って来る社長。
「了解!」俺はそう言って、<魔闘術>(バーニング)を発動して、<バニング・ドック>へ向かった。
<バニング・ドック>の5体中3体が、俺の接近に気が付いてダッシュで向かって来た。
<バニング・ドック>は火球を放つ、”五十嵐”さんから情報を得ていたので、俺は最初の<バニング・ドック>の手前10メートルから、火球の狙いが絞れない様に、左右にジグザグに移動しながら間合いを詰めた。
左右の切り替えしの時、踏み出す足の親指に力を入れて地面を蹴る。すると、体重移動がスムーズになり、
0.1~0.2秒ほど速く動ける。戦闘で0.1~0.2秒ほど速く動けるのは、かなり大きい。
<バニング・ドック>は、左右に移動する俺に火球を放てないでいた。俺は最後の右から左に移動する時に、上半身を前屈みにして上半身を視界から消して、<バニング・ドック>の右前脚の近くに滑り込む。そして、屈めた身体を全身のバネを使いジャンプする。同時に、逆手に持った右手の片手剣でジャンプの勢いを使い、<バニング・ドック>の首を下から斜め上に斬り落とした。
ジャンプの着地を狙って、<バニング・ドック>の2体目と3体目が迫っていたが、一瞬早く俺の方が
地面に着地した。
2体目の<バニング・ドック>が目前に迫るが、左足を力強く踏み込んで、左足を軸に”コマ”の様に左回転し、<右フック>の要領で逆手に持った右手の片手剣を<バニング・ドック>の上顎と下顎の中間に叩き込む。<バニング・ドック>の顔は上下に分かれた。
3体目が、斬り終わりの体勢の所に噛み付いて来た。着地した右足でバックステップで回避したが、
<バニング・ドック>は追って来た。後ろ向きで左右にジグザグに逃げるが、執拗に追っかけて来て、
”ガキン!ガキン!”と噛み付いて来た。俺は左腕の力を抜き、素早く<左ジャブ>の要領で逆手に持った左手の片手剣の剣先を<バニング・ドック>の”眼球”に当てた。そして、右足で緊急ブレーキをかけ左足を力強く
踏み込んで、左足を軸に”コマ”の様に左回転し、<右フック>の要領で逆手に持った右手の片手剣を、
激痛でのた打ち回る<バニング・ドック>の首に叩き込む。<バニング・ドック>の頭が空に飛んだ。
4体目と5体目が俺を睨んで唸っている。俺は苦笑しながら、左手の片手剣を順手に持ち直した。
俺は4体目にダッシュで接近した。10メートル手前から、左右にジグザグに移動しながら間合いを詰め、
<バニング・ドック>から2メートルの真正面に来た時に、右足で地面を蹴り<バニング・ドック>の
顔目掛けて”突き”を繰り出す。しかし、動きが読まれていたのか、”突き”は<バニング・ドック>の右頬を
掠めて失敗してしまった。俺の顔に<バニング・ドック>の口が迫るが、<バニング・ドック>の視界の
外から逆手に持った右手の片手剣を右上から叩き落し、<バニング・ドック>の首と右前脚を斬り落とした。
最後の5体目だったが、俺に問題が発生していた。4体目を斬った時に、俺と<バニング・ドック>が
接近しすぎて、右腕に炎が燃え移ってしまった。幸いにも、防炎・防刃素材のスーツだったので、余り熱くは無かったが俺は焦った。
俺は左手の片手剣を捨て、右腕の炎を消そうとしたが、<バニング・ドック>は火球を放ちながらダッシュで接近して来た。俺は火球を左右に移動して躱したが、<バニング・ドック>は俺の真似をしたのか、
手前10メートルで左右にジグザグに移動し始めた。
<バニング・ドック>の火球は、ハンドボール位の大きさだが、着弾すると人と同じ位の火柱が発生する。
その火球を片手剣から俺を遠ざける様に、連続で放ってきた。俺と片手剣の距離は、かなり開いてしまった。
「くそ!こいつ意外に頭が良いじゃないか!!」頭脳プレーをやられて、苛立ってしまう俺。
何度も左手で叩いて、ようやく右腕の炎が消えてくれた。正直、こんなに頭の良いモンスターとは思っていなかった。<バニング・ドッグ>の動きを止める為に、俺は右腕の力を抜き、素早く<右ジャブ>の要領で逆手に持った左手の片手剣の剣先を<バニング・ドック>に向けて3連続で放つ。
<バニング・ドッグ>は、左右に移動し、俺の攻撃を躱すと顔面目掛けて火球を放つ、俺が上半身を反らして躱している間に、片手剣を持っていない左手の方に移動して、噛み付いて来た。
「あまり、俺を舐めるなよ!」俺は堪忍袋の緒が切れた。
飛びかかってくる<バニング・ドッグ>の左前脚を躱しつつ、前傾姿勢となり、左の拳に俺の全体重を込めて、<バニング・ドッグ>の鼻っ面に叩き込む。当然の事だが、左の拳が炎に包まれた。
”ギャウン”と悲鳴を上げ、左のカウンターで吹き飛ぶ<バニング・ドッグ>に、俺は追う様にダッシュをする。<バニング・ドッグ>が地面から起き上がる瞬間を狙って、片手剣を捨てて堅く握りしめた右の拳が、超低空のアッパーカットで<バニング・ドッグ>の下顎を捕らえる。
”ゴキャン”と下顎の骨が砕ける音と手応え感じながら、右拳を振り抜く。<バニング・ドッグ>の身体が、
上に跳ね上がり後ろ脚二本で立っている状態になった。
俺は右足を踏み込み、膝・腰・背骨・左肩・左肘・左手首と回転を加えた<コークスクリュー>の
左ストレートを<バニング・ドッグ>の心臓を目掛けて叩き込む。
強烈な一撃を貰い、<バニング・ドッグ>が後ろ脚で2.3歩下がる。俺は左足を踏み込み、膝・腰・背骨・右肩・右肘・右手首と回転を加えた<コークスクリュー>の右のアッパーを<バニング・ドッグ>の
既に砕かれている下顎を目掛けて叩き込む。
バキャキャキャキャ!ゴキン!!・・・・・ゴシャ!!
俺の右の拳に、<バニング・ドッグ>の口の中の牙が何本も折れる感触と、首の骨が折れる音が聞こえた。
<コークスクリュー>の右のアッパーで、跳ね上げられた<バニング・ドッグ>の身体は、空中で3回転して、地面に叩き付けられた。
「はあ、はあ、こいつ、何でこんなに頭が良いんだ!甘く見ていた!!」
俺は肩で息をし、両腕の炎を消そうとバシバシ叩きながら呟いた。
ようやく両手の炎が消えて、両腕がちゃんと動くか”ニギニギ”と掌を開け閉めしていると。
ヴォオオオオオオオ!!ガキャン!!・・・・・ゴシャ!!ガガガガガガ!!
何かの叫び声がして、1つ向こうの交差点の左のビルの奥から、白い自動車が空中を飛んで、右のビルの奥に
消えていくのが見えた。
「・・・今日は、厄日か?」俺はそう呟いた。




