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帰還したら平行世界(べつせかい)だった  作者: ネコバーンナックル!
25/46

現在、晩御飯中!

俺は、住む所が見つかるまで、社長のお宅に居候いそうろうする事になった。就職するまで、シスコン兄さんも

”千歳”ちゃんも、社長宅に住んでいたらしい。今、俺はシスコン兄さんが使っていた2階の部屋を、

使用している。


「・・・何とか就職できたが、明日からマズイな。」俺は、溜息ためいきをつきながら呟いた。


あの後、シスコン兄さんに3本勝負とゴネられたのだ。よっぽど、妹の”千歳”ちゃんの目の前で負けたのが、

悔しかったのであろう。


2本目、「始め!」社長の号令で、今度はシスコン兄さんが、ダッシュで間合いを詰めてくる。

俺の目前で、右から左へフェイントをかけつつ、死角から右腕一本の鋭い突きを、俺の喉めがけて

突いて来た。


俺は右に軽くサイドステップし、シスコン兄さんのバスターソードの先端から1/3位の所に、俺の右手の片手剣の刃をあてがい、左側にシスコン兄さんの突きを流す。そして、突きを流されて、体勢を崩した

シスコン兄さんの無防備な腹へ、左の片手剣で左一文字斬りする。


ドムス!! 「グブゲ!」


俺の左の片手剣に確かな手ごたえを感じ、カエルが潰れた様な、変な声がシスコン兄さんの口かられた。


シスコン兄さんは、右手のバスターソードは離さなかったが、左手と両膝は地面に着いていた。


「勝負あり!勝者、本田!!」社長が、再び勝ち名乗りをしてくれた。


これで終わったと思ったら、<ポーション>を使って、シスコン兄さんが3本目を挑んできた。

「その<ポーション>、経費じゃ落ちないからね!」と”千歳”ちゃんが怒ったのを覚えている。



3本目、「始め!」社長の号令で、今度はシスコン兄さんが、またダッシュで間合いを詰めてくる。

俺の目前で、バスターソードを両手で持ち、素早く・細かく打ち込んできた。だが、俺は、無数に打ち込んできたバスターソードを、左手の片手剣のみで斬撃を流した。シスコン兄さんは苛立いらだち、一歩下がって両手で持った突きを俺の眉間みけんへと打ち込んできた。


ガキイン!! ドムス!! 「ブゲル!」


俺はシスコン兄さんの突きに対して、左の片手剣を下から、右の片手剣を上から、勢いよく交差させて、

バスターソードの真ん中位を捕らえて左側に引っ張る。同時に、引っ張られて体勢を崩したシスコン兄さんの無防備な腹へ、右足で強烈な蹴りを叩き込む。また、カエルが潰れた様な、変な声がシスコン兄さんの口かられた。


「勝負あり!勝者、本田!!」社長が、本日3回目の勝ち名乗りをしてくれた。


りもせず、5本勝負にシスコン兄さんがしようとしたが、”千歳”ちゃんが激怒し勝負は流れた。


俺は、当面の着る服と日用雑貨を買う為に社長に連れ出され、現在は社長宅の2階で晩御飯待ちである。


「・・・よく考えると、シスコン兄さんって”国峰”隊長なんだよね。」

俺は、溜息ためいきをつきながら呟いた。


<(株)藤原モンスターバスター>は、20名から形成される”ハンター部隊”が2つある。第1班をまとめる

隊長が、”千歳”ちゃんの兄の、”国峰くにみね ひろし”である。第1班が20名・第2班が20名・休日の予備ハンター10名、会社の半分近くの”ハンター”達の前で、俺は第1班の隊長を、完膚かんぷなきまでに叩きのめして

しまったのである。


「・・・ヤバイな、絶対に第1班の”ハンター”には嫌われたな、絶対に。」明日の出社が、少し憂鬱ゆううつになった。


1階で、社長が晩御飯が出来たと呼ばれたので、気分を切り替えて1階に降りて行く。


1階の居間に行くと、掘りごたつの布団無し状態の上には、”にくじゃが”・”肉入り野菜炒め”・”玉子焼き”・”キュウリとカブの塩もみ”・”なめこと豆腐とネギの味噌汁”・”大盛りのご飯”が俺の席に並んでいた。


「お替わりもあるから、いっぱい食べてね。」微笑みながら、社長の奥さんの”深雪みゆき”さんが言った。


「”深雪”さんは、料理上手だから期待していいよ。”味噌汁”は私が作ったんだから、残さないでね。」

”千歳”ちゃんが、微笑みながら言った。俺が心配で社長宅に来てくれたらしい。


「ごめんなさい、お兄ちゃんが何度も勝負を挑んで。迷惑だったでしょう。」

”千歳”ちゃんが、少しシュンとしながら言って来た。


「俺は気にしていないよ。妹の前で負けてしまって、兄として、ムキになっちゃったんだと思うよ。」

俺は苦笑しながら、”千歳”ちゃんに言った。


「もう!いつまでも、”妹離れ”出来ないお兄ちゃんなんだから!私も、もう20歳なんだから、心配しなくても大丈夫なのに!」少し怒りながら、”千歳”ちゃんが言った。


「まあまあ、”弘”にとっては”千歳”ちゃんは、いつまで経っても可愛い妹なんだよ。十年前に、まだ10歳

だった”千歳”ちゃんを護る為に、高校卒業後に”ハンター”にしてくれと頼んで来た”弘”の目は真剣だったよ。」

微笑みながら、社長がフォローを入れた。


「それは、本当にありがとうって言いたいけど。今日の勝負はやりすぎよ!」

少し不満げに、”千歳”ちゃんが言った。


「まあまあ、それ位にして、ご飯を食べましょう。」”深雪”さんが、場を締めた。


三年振りの家庭料理、”深雪”さんと”千歳”ちゃんが料理上手なのもあるが、本物の”醤油”・”味噌”・”ごま油”の味に感激し、舌鼓したつづみを打った。


「<アーシタ>のごはんって、どんな味だったんですか?」

”玉子焼き”を頬張ほうばりながら、”千歳”ちゃんが聞いて来た。


「城や貴族の家は、”香辛料”がたっぷり使われていて、かなり”スパイシー”だったよ。”香辛料”は高いから、王様や上級貴族は見栄で大量に使うので、俺にはからすぎたよ。逆に庶民は、”塩”がメインの味付けだったよ。その土地の”調味料”もあるけど、俺には薄味だったよ。それでも、庶民の方々には感謝しているよ、食べ物が少ないのに俺達に分けてくれたんだから。」

”にくじゃが”の”じゃがいも”を食べながら、俺は答えた。


「旅をしている時は、どうしていたんだ?やっぱり自炊をするのか?」

”ごま油”の効いた”肉入り野菜炒め”をバリバリと食べながら、社長が聞いて来た。


「いえ、”勇者パーティー”で行動している時は、”黒パン”と”干し肉”と”水”の3つです。」

”にくじゃが”の”豚肉”と”しらたき”を食べながら、俺は答えた。


「・・・確か、”僧侶”の方は女性じゃなかったかしら?」

”キュウリとカブの塩もみ”をパリボリ食べながら、”深雪”さんが尋ねて来た。


「全然、料理してくれませんでした。逆に、かなり独創的な料理をすると、恋人の”魔法使い”が言っていたので、食べる機会が無くて良かったです。」”なめこと豆腐とネギの味噌汁”を食べながら、俺は答えた。


「まあ、俺1人の時は、<なんちゃって”醤油”>と<なんちゃって”味噌”>で、ちゃんと料理していましたけどね♪」”にくじゃが”のお替わりをもらいながら、俺は言った。


異世界<アーシタ>には、不思議な植物が生えている。<アーシタ>の人間には、嫌われ者の”雑草”だったが、俺には神が与えてくれた”調味料”だった。


きっかけは、<ポーション>作りだった。俺は、”僧侶”の平本に嫌われていて、回復魔法や解毒魔法を旅の途中で1回もかけてもらった事が無い。なので、自分の傷をいやすには、<ポーション>が必要だった。


<ポーション>の材料となる<薬草>を森で探していると、体が傷だらけの所為せいで上手く動かず、前のめりに盛大に転んでしまった。両手を地面に着いたので、顔面は打ち付けなかったが、右手が変な草の実を潰してしまった。右手の掌を見てみると、黒い水の様な汁が付いていた。それは、懐かしい香りをしていた。


俺は左手の人差し指で、右手の黒い水の様な汁に触り、舐めてみた。”生醤油きじょうゆ”の味がした。”だし”は効いていないが、確かに”醤油”の味がした。後で<アーシタ>の人に、この実の名前を聞いたら、<ソイソの実>と言うらしい。


俺は驚き、嬉しくなった。<アーシタ>の味付けは、”スパイシー”か”薄味”の両極端で、中間の味付けが無かったからだ。俺は他にも”調味料”なる実を探した。そして、何種類かの実を発見した。


鰹節かつおぶし”の味がする<ブシカオの実>、”昆布の出汁だし”の味がする<コブダの実>、”味噌”の味のする

<ミソミの実>、”砂糖水”の味のする<アマイスの実>、”みりん”の味のする<ミリリーの実>、”ごま油”の味のする<セサーユの実>、”菜種油なたねあぶら”になる<カノラーユの実>が見つかった。


”調味料”の実は、本体の草から切り離すと一日は持つのだが、二日目になると腐った様な、すえた臭いを出す。これは、俺の<アイテムボックス>に、”調味料”の実を入れても防げなかった。


<アイテムボックス>は、食材の鮮度を守ってくれる。肉や野菜などは大丈夫だったが、”調味料”の実

だけは何度やってもダメだった。そこで、”調味料”の実同士を調合して、なんちゃって”醤油”を作り、一度火を通し、冷ました物を<アイテムボックス>に入れると、鮮度が保たれていた。


俺は、一番美味しい、<なんちゃって”醤油”>の配合を試した。結果、<ソイソの実>5個と<ブシカオの実>3個と<コブダの実>3個が、一番美味しい<なんちゃって”醤油”>になった。


<ミソミの実>5個と<ブシカオの実>3個と<コブダの実>3個が、一番美味しい<なんちゃって”味噌”>になった。俺は異世界<アーシタ>で、初めて味噌汁を飲んだ人間になった。


「つまり、タケルさんは1人で美味しい物を食べていたんですね。」

目を細めて微笑みながら、食後のお茶を飲みつつ”千歳”ちゃんが言った。


「俺が傷だらけで、<ポーション>を作っている時に、”高級娼館”や”高級ホテル”の泊まって、

快楽をむさぼって、美味しい物を食べていた3人に、俺の”調味料”を使う権利無しです!」

俺は、”大盛りのご飯”を食べながら言った。


「まあ、確かにそうだな。」食後のお茶を飲みつつ、社長が賛同してくれた。


「働かざる者、食うべからずですよ」食後の、”苺みるく”を”深雪”さんが持って来てくれながら言った。


「タケルさんは、”特殊スキル”<芸術>で料理できるんでしたっけ?」

”苺みるく”の苺と格闘しながら、”千歳”ちゃんが尋ねて来た。


「まあ、お陰様で、お金が無い時に、食堂や酒場で働かせてもらったよ。」

俺も”苺みるく”の苺と格闘しながら、質問に答えた。


「・・・タケルさんの恋人やお嫁さんになる人は大変だね。」ポツリと”千歳”ちゃんが呟いた。


「何で?美人の恋人や嫁さんが、俺の為に作ってくれた料理の方が、俺が作った料理よりも、何倍も価値が

あるし、嬉しいじゃん。」俺は、”苺みるく”の苺と夢中になりながら、格闘していた。

シスコン兄さんより、手強い苺だった。


”千歳”ちゃんが顔を赤くして、無言になった事を俺は知らなかった。そんな”千歳”ちゃんを社長と”深雪”さんが、微笑みながら見守っていた事を、”千歳”ちゃんは知らなかった。


楽しい晩御飯が終わり、後片付けが終わると、”千歳”ちゃんは自宅に帰って行った。

俺も、社長と”深雪”さんに就寝の挨拶をして寝る事にした。俺はすぐに泥のように眠った。

よく考えれば、魔王と三日三晩戦った後、最初の安心した眠りだった。








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