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帰還したら平行世界(べつせかい)だった  作者: ネコバーンナックル!
19/45

現在、3つの平行世界集合中!

俺は、女神”サリース”に異世界<アーシタ>を救う為に召喚された。


異世界<アーシタ>に召喚された時は、エレベーターが降りていく感覚が続き、それが終わると足の裏に堅い地面の様な感触がした。どうやら異世界<アーシタ>に到着したかもしれない。


異世界<アーシタ>に着いて、数秒もすると徐々に光も収まって来て、外の景色が見え始めてきたのだが、朝霧に包まれた原生林の中にいた。周りを見ると、赤い髪の男・筋肉質な大男・中学生位の男子・中学生位の女子の4名が、俺と同じ様に異世界<アーシタ>に召喚されて来たらしい。


問題は召喚された場所だ。漫画やアニメでは、召喚の儀式をした城の大広間とか、城の庭に出現するはずなのだが、俺達が召喚された場所は、薄暗く朝霧の所為せいでかなり寒い原生林だった。もちろん、この状況を説明してくれる人間もいない。


俺達は全員がパニックになった。周りを不安げに見回したり、周りに誰かいないか声を上げたりしていたのだが、赤い髪の男と筋肉質な大男が言い争いを始めてしまった。


それは突然の出来事だった。朝霧を裂いて大トカゲの口が筋肉質な大男の左腕から左腰にかけて噛み付いたのだ。異世界<アーシタ>に到着して、たった三分の出来事だった。


あまりの激痛に絶叫する筋肉質な大男、大トカゲの口から逃れようと右手で顎を叩いたり、右足をばたつかせていたが、大トカゲの口からは逃れられず、逆に骨が砕かれる音をさせていた。


筋肉質な大男の惨状さんじょうを見て、赤い髪の男がこちら側に走って逃げてきた。

その顔は恐怖で歪んでいたのだが、俺の手前3メートルの所で盛大に転倒した。朝霧の所為せいで地面がぬかるんでいたのか、起き上がった赤い髪の男の顔と体は泥だらけになっていた。そして何故か俺をにらみつけて、俺の横を通り過ぎて原生林の中へ逃げて行った。


同様に、中学生位の男女も恐怖に顔を歪め泣きながら、俺の横を通り過ぎて原生林の中へ逃げて行った。


1人残された俺は大トカゲに視線を戻すと、筋肉質な大男は両足だけになっていた。両足のすぐ上では血塗れになった大トカゲの口が、筋肉質な大男の体を大きな音を立てて咀嚼そしゃくしていた。


その惨状さんじょうを見た時、俺もきびすを返し原生林の中へ逃げて行った。多分、3人同様に恐怖に顔を歪ませて、絶叫していたと思う。


俺は原生林の中を全速力で走っていた。だが朝霧の所為せいで視界は3メートル程だったので、何度も原生林に激突をしていた。それでも、大トカゲから少しでも離れようと、走る事を辞めなかった。


やがて、原生林の大木に、人ひとりほど入れる”うろ”を見つける。俺は転がっている石を掴み、大木の近くに生えている腰くらいの木を見つけて、その木の枝を石で叩き折り、それを集めて束ねて”うろ”の入り口をカモフラージュして、”うろ”の中で明るくなるのを待った。多分だが、この時はもう”特殊スキル”<芸術>が発動していたと思う。召喚される前の俺に、こんなに上手に木を集めて束ねて入口をカモフラージュする技術は無かったからだ。


朝霧が消え、原生林が明るくなって来たのだが、問題が発生した。明るくなると、モンスターも活動を開始するのだ。俺が隠れている”うろ”の前方10メートル位の所で、<ゴブリン>10匹が鹿みたいな動物を解体して、生肉を食っていた。もし見つかったら、自分が同じ運命を辿たどると思うと気が気じゃなかった。


しばらくすると、人間の声が聞こえて<ゴブリン>と戦闘をする怒号と金属音が聞こえ始めた。約十分後、<ゴブリン>の声は聞こえなくなり、人間の声だけ聞こえる様になったので、俺は”うろ”に隠れるのを辞め、人間の前に姿を現した。


声の主は、<ホワイトベス城>の<アルビオ騎士団>の騎士達だった。本来は、召喚の儀式を行った場所に”異世界人”が出現するのだが、今回はモンスターが大量にいる森に、”異世界人”が出現する光の柱が<ホワイトベス城>がら見えたので、大急ぎで”異世界人”の俺達を救出しに来てくれたらしい。


俺は<アルビオ騎士団>に保護され、<ホワイトベス城>に連れて行かれた。

温かい食事を与えられ、大きな風呂で体を洗った後、貴族が着る様な服を着せられて、応接室に通された。


応接室に入ると、森の中で別れた俺と同じ3人の”異世界人”が待っていた。


「よう!遅かったな。」赤い髪の男が、右手を軽く上げて挨拶してきた。


「そんじゃあ、全員揃ったし自己紹介でもするか!じゃあ、一番最後に来たあんたから。」

赤い髪の男が仕切り始めた。


「名前は、本田ほんだ たける20歳、大学2年で群馬県出身です。」

俺は素直に自己紹介をした。この当時の俺は、身長185センチで黒い髪の黒い瞳、普通の体型だった。

ちなみに髪型は、<るろう○剣心>の”弥○”ヘヤーである。


「そんじゃあ、次は俺な!」赤い髪の男が自己紹介を始めた。


「俺の名前は、塩谷しおや 一輝いっき20歳、大学2年で東京出身!」

塩谷は、身長170センチで赤い髪の赤い瞳、普通の体型だった。一番印象的だったのは、左耳に大きなリングのピアス、そしてピアスの先に七夕の短冊の様な金のプレートが付いていた。

そして、俺と同じ<るろう○剣心>の”弥○”ヘヤーであった。


「そんじゃあ、次は君!」塩谷が、中学生位の男子を指差した。


「はい、僕の名前は真下ましも しゅんです。16歳で高校1年です。北海道出身です。」

真下は、身長165センチで茶色い髪の茶色い瞳、痩せ型の体型だった。あまりに華奢きゃしゃだったので、中学生だと思っていた。髪型はツーブロック


「そんじゃあ、最後は君!」塩谷が、中学生位の女子を指差した。


「はい、私の名前は平本ひらもと じゅんです。16歳です。高校1年で新潟出身です。」

平本は、身長160センチで茶色い髪の茶色い瞳、”Aの胸の双丘”の持ち主。ミディアムヘヤーを斜め後ろでツインテールにした髪型。


俺達は自己紹介を終えると、応接室の中央にあるたたみじょうほどある豪華な机と豪華な椅子に腰を下ろした。


俺・真下・平本は暗い顔をしていたが、塩谷だけは明るい顔をしていた。


「・・・なあ、塩谷君。君は戦うのが怖くないの?なんでそんなに明るくしていられるんだ?」

俺は塩谷に聞いてみた。


「そりゃあ、魔王を倒して帰還したら、俺達”エリート”だぜ!”エリート”!!」塩谷が興奮気味に答えた。


「”エリート”って”英雄“じゃ無くて?塩谷君は、魔王を倒しても<アーシタ>に残るの?」

俺は再び、塩谷に聞いてみた。


「はあ!?何言ってんだよ、俺は元の世界に彼女いるし、元の世界に戻るに決まっているだろ!!」


塩谷はそう言って、左耳のピアスの先の金のプレートを右手の人差し指で軽く弾いた。どうやらこのピアスは彼女からのプレゼントらしい。


「・・・ちょっといいかな、塩谷君。何で元の世界に帰ると、”エリート”なの?」

俺は良く分からないのでもう一度、塩谷に聞いてみた。


「・・・なあ、お前さ、俺を馬鹿にしてる?異世界から帰還したら<アズナブル>がスカウトに来るだろうが!それともお前、<アズナブル>知らねえのか!!」

塩谷が怒りながら答えて来た。


「<アズナブル>って知ってる?」俺は、真下と平本の方に向き、2人に質問してみた。

二人は顔を左右に振り、”知らない”と”ジェスチャー”した。


「ふーん!そうですか!!群馬・新潟・北海道のクソ田舎には<アズナブル>はありませんか!世界的な組織なんですがね!じゃあ、モンスターが出現したらどうしているんだよ!!」

塩谷が大激怒で吐き捨てた。


「モンスター出るの!!」俺・真下・平本が塩谷の言葉に驚く。


「当たり前だろ!何言ってんだお前ら!」俺達3人のリアクションに戸惑っている塩谷。


「当たり前じゃないよ、熊・猪・猿の出没でも全国区のニュースになるよ。モンスターの出没なんて世界のニュースでも聞いたことが無いよ。」俺の意見に、真下・平本も頷く。


「・・・・・」塩谷は沈黙してしまった。


「・・・俺、アニメでこれに似た状況を見た事がある。2つ質問するから真面目に答えてくれないか?」

俺は3人に質問しようとした。


「・・・アニメかよ、お前、アニオタか?」塩谷が茶化して来た。


「茶化すなよ。塩谷君、君が召喚された時の総理大臣の名前を教えてくれ。」俺は塩谷に質問した。


「・・・”大泉おおいずみ 純一郎じゅんいちろう”」塩谷が答えた。


「!!」俺・真下・平本が、再び塩谷の言葉に驚く。


「ありがとう、答えてくれて。ちなみに、俺が召喚された時の総理大臣は”安部あべ 新一しんいち”総理大臣だ」

今度は俺が答えた。


「真下君と平本さんの召喚された時の総理大臣は誰なの?」今度は、真下と平本に聞いてみた。


「僕が召喚された時の総理大臣は、”天田あまだ 五郎ごろう”です。」真下が答えた


「私も一緒です。”ジンクスなんて吹き飛ばせる”が口癖の”天田あまだ 五郎ごろう”さんです。」

平本が続けて答えた。


「奥さんが外国の方の”アイーナ”さん。すごく綺麗な人だよね!」さらに真下が返し、平本が頷いていた。


「それでは、次の質問。自分が持っている最新のゲーム機を教えてくれるかな?俺は<プレイステーシ○ン4>で、好きなゲームは<スーパーロボ○ト大戦>。塩谷君は?」俺は塩谷に質問した。


「俺は<ブイMAXマックス>で、<スーパーマリ子シスターズ>」塩谷が答えた。


「ありがとう、じゃあ次は真下君。」次は真下に質問した。


「えっと、僕は<スーパーアスラーダ>で、<路上喧嘩野郎・弐式>です。」真下が答えた。


「あ!!私も<スーパーアスラーダ>で、<路上喧嘩野郎・弐式>です。ちなみに、”健二けんじ使い”です!!」

真下の答えに平本が続いた。


「へ~!。僕は”龍一りゅういち使い”だよ。」二人の間で会話が弾んでいた。


「やっぱりな、塩谷君の世界がA・俺の世界がB・真下君と平本さんの世界がC。3つの平行世界が集まっているんだよ。」俺は3人に、3つの平行世界の存在を教えた。


「・・・それが分かって、何か良い事があるか?」塩谷が聞いて来た。


「塩谷君は魔王を倒して、帰還したら<アズナブル>に就職して”メリット”しか無いけど、俺達は帰ったら”デメリット”しか無い。魔法が使えて、力が常人以上なら良くて監禁か実験動物、悪くて標本にされるのがオチだよ。」俺は魔王を倒した後、自分の世界に帰った場合を塩谷に言った。


「・・・はあ、お前ってなんでそう”ネガティブ”なんだ?良い方向に考えろよ!人前で力を使わなければ良いだけだろ!。」塩谷が呆れて言って来た。


「・・・まあ、そうなんだけど。人間、力があったら使いたくなるもんだよ。」

俺には人前で力を使わない自信が無かった。何かの拍子に、とっさに使ってしまう気がしたのだ。


「自己責任!力を使うのも、使わないのも自己責任だ!!そんな事、言っていたら何も出来ねえよ!」

塩谷が正論を言った。


「・・・そうだな、魔王を倒したら、<ホワイトベス城>に帰る間に対策を考えれば良いか。」

俺は前向きに考える事にした。


「さあ!俺はこの<アーシタ>で、実力付けて”S級・勇者”になって、契約金であいつの好きなもの全部買ってやるぜ!」塩谷は興奮気味に言った。


「・・・なあ、塩谷君。さっき”S級・勇者”って言ったけど。”勇者”にも格付けがあるの?」

俺は塩谷に質問した。


「ああ、あるぜ!異世界を救って帰還した時に、身に着けた実力でランク付けされるんだ。」

塩谷は嬉しそうに言った。


「”s級”が化け物クラス、”A級”が超エリートクラス、”B級”がエリートクラス、”C級”が普通クラスかな。ちなみに、日本には”S級”クラスは6人しかいない。俺もその中に入ってやるぜ!」

塩谷の意気込みが半端じゃ無い。


「・・・もしかして、モンスターにもランク付けとかってある?」俺は再び、塩谷に質問した。


「ああ、もちろんモンスターにもランク付けはあるよ、S・A・B・C・D・E・F・Gの8つのランクがある。ちなみにS~Dまでが”勇者”の担当で、E~Fが”ハンター”の担当だ。」塩谷が答えてくれた。


「”ハンター”っていうのは?」新しい単語が出てきたので、塩谷に聞く俺。


「”ハンター”っていうのは、普通の一般人の会社だ。モンスターを討伐したり、モンスター被害を食い止めたり、モンスターの体から”薬”とかになる、希少な部位を採取して販売する警備会社みたいなもんだ。雑魚モンスター相手に、いちいち”勇者”が出動していたららちが明かないからな。」

塩谷が自慢げに言った。


「そうそう、言い忘れたが、お前ら間違っても俺の世界には来るなよ。<アズナブル>は異世界を救って帰還して来た”勇者”が所属する組織だ。俺のように<アズナブル>のスカウトを受けるなら問題は無いが、たまに異世界で強大な力を手にした”勇者”が、<アズナブル>のスカウトを受けずに、日本を支配しようとする事があったけど、<アズナブル>の”勇者”全員と戦う事になって瞬殺されたよ。同様に、お前ら別世界から来た”勇者”も、俺の世界の秩序を乱す”侵略者”扱いになるから、武器と鎧取り上げられて死ぬまで”勇者”達の戦闘訓練に付き合わされるぞ。」塩谷は意地悪そうに言った。







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