現在、最強の鎧と剣発動中!
一週間後、完成された鎧の<テッカード>と剣の<ボルクドテッカー>を装備した俺、”トト”様、”グレミー”様、ミスリル鉱山で働くドワーフ達が、ミスリル鉱山の麓の開けた場所に集まっていた。
俺の目の前には、全高5メートル位の大岩がある。
「タケル!<ボルクドテッカー>を”大剣”にしてみろ!」”トト”様から指示が来た。
「了解!」俺は<ボルクドテッカー>の柄を引き伸ばし、変形機構を発動させる。そして、右手と左手から<ボルクドテッカー>に魔力を流し込むと、2メートル位の魔力の刃が形成された。
<ノーティラス鉱>が(”神”からの贈り物)だと言う、<アトランティー>族の言っている意味が分かった。
<ノーティラス鉱>は、僅かな魔力でもこんな巨大な魔力の刃を簡単に作り出してしまう。
魔力を何十倍にも増幅してくれる鉱石、それが<ノーティラス鉱>だったのだ。
<アトランティー>族が、自分達を”番人”だと考えているのも分かった。これは世に出してはいけない物だ。
俺は<ボルクドテッカー>”大剣モード”が長くて振りづらいと考え、<テッカード>に魔力を流して2メートル位体を浮かした。そして、大岩に<ボルクドテッカー>を右上から左下に袈裟斬りをした。
まったく抵抗が無く振り抜く事が出来た。少しの間を置き、斬られた大岩の上の部分が”ズズン”と地上に落ちた。そして、大岩の切り口は鏡の様に滑らかだった。
「良し!次は<ボルクドテッカー>を元に戻して、刀身に魔力を込めてみろ!」再び、”トト”様からの指示。
「了解!」俺は<ボルクドテッカー>の柄頭を押し込み、変形機構を元に戻す。今度は右手のみで<ボルクドテッカー>を握り、魔力を流し込む。刀身が魔力を帯びて光り出す。
俺は、地上に落ちた大岩の近くに着地して、右手のみで縦横無尽に<ボルクドテッカー>で大岩を斬りつけた。やっぱり抵抗が無く振り抜く事が出来た。
「想像以上の鎧と剣が出来ましたね!」ブロック状になった大岩の1つを拾い上げ、鏡の様に滑らかな切り口を指で触りながら、”グレミー”様が言った。
「魔王”ジュドー”を追い込むのだから、これ位はな!」どこか嬉しそうな”トト”様。
「タケル君、次は飛行魔法の練習をしよう。<テッカード>にもう少し魔力を流してみて!」
今度は”グレミー”様から指示が来た。
「了解!」俺は返事をして、3メートル位浮上してから<テッカード>に魔力を流し込む。
俺の魔力に反応して、鎧の縁ふちに刻印された小さな呪文が緑色に発光し風魔法が発動して、風の魔法障壁が発生した。
「この魔法障壁って!」俺はこの風の魔法障壁に見覚えがあった。
「そうです、<アトランティー>族の集落から、<バルツブルーダー神殿>へ移動した魔法です。」
にこやかに”グレミー”様は言った。
「タケル君、飛行魔法の練習の為に、ここら辺を2,3回往復してくれませんか?」
再び、”グレミー”様からの指示が出た。
「了解!」俺は、ミスリル鉱山の麓の3~4キロ位は開けた場所を、魔法障壁を張ったままで高速飛行した。思った以上のスピードが出て、少し焦ったが徐々に慣れて行った。
高速飛行にもかなり慣れてきたので、”トト”様と”グレミー”様のそばに着地する。
「”トト”様、”グレミー”様ありがとうございます!俺の想像以上の性能を発揮していますよ、<テッカード>と<ボルクドテッカー>!!」俺は二人に感謝の言葉を贈った。
2人とも、嬉しそうに頷いてくれていた。
「ふふふふ、まるで新しいおもちゃを与えられたガキだな。」人を馬鹿にするセリフが聞こえた。
その言葉に反応する、俺と”トト”様と”グレミー”様。俺は右手の<ボルクドテッカー>を握り直し、”トト”様は自分専用の巨大ハンマーを構え、”グレミー”様は腰に差している魔法の杖を抜いた。
周りを見渡し、気配を探るがまったく分からない。人を馬鹿にするセリフを言った奴が見当たらなかった。
「そこ!!」突然、”グレミー”様が叫んで左手を斜め上に向けて、無詠唱で攻撃呪文を放つ。
ドゴン!!
見えなかったから多分、風魔法だと思うが”グレミー”様の放った魔法は、上空5メートル位の命中し、爆音と爆煙を撒き散らしていた。
「やるじゃないか、エルフの王”グレミー”」爆煙が消えてくると、魔法障壁があり鎧を着た男が中にいた。
銀色の鎧を着て、身長185センチ位の翠の髪のウルフヘヤーを持ち、垂れ目で人を馬鹿にしている笑みを口元に浮かべている28歳位のイケメンがいた。
「良く分かったな、”グレミー”。俺の姿と気配は完全に消したはずだったんだが。何故分かった?」
鎧を着た男が聞いてくる。
「大気の揺らぎですよ、エルフにしか分かりません。ところで、想像はつきますがどちら様です?」
男に左手を向けたまま、”グレミー”様が問いかける。
「風の四天王、”サイバス”。」”サイバス”はそう名乗った後、”グレミー”様から俺へ視線を移した。
「貴様が”勇者”か、本当にこんなガキに他の四天王は敗れたのか?」
”サイバス”が俺に向けて、憎しみのセリフを吐いた。
俺は”こいつ、何言っているんだ?”と思った。確かに、水の四天王”ガデース”には、半殺しの目に遭いながら何とか勝った。だが、大地の四天王”ザムジ”は”ラムール”将軍が2太刀で瞬殺、炎の四天王”グラベール”は”ドムント”先生が一撃で撲殺。こいつは俺を過大評価している。あと俺、”勇者”ではなく”戦士”です。
”サイバス”が言っている事が分からず、”トト”様と”グレミー”様を見ると二人とも真剣な顔で、必死にコクコク頷いていた。
”グレミー”様の視線が、(こいつを”勇者”塩谷に会わせるのは、死亡確実だから話を合わせて!)
と言っている気がした。
”トト”様の視線が、(魔王”ジュドー”にトドメを刺せるのは、”勇者”塩谷だけだ!演技しろ!!)
と言っている気がした。
俺は二人に頷き、<ボルクドテッカー>を上空の”サイバス”に向けて、演技をした。
「次はお前の番だ!」我ながら、ありきたりな言葉が口から出た。しかし、”サイバス”を怒らせるには十分だった。
”サイバス”の顔が、余裕の表情から怒りの表情へと変わる。そして、高度5メートルから15メートル位まで上昇し、ミスリル鉱山で働くドワーフ達に左手を向けた。
「<”ディース・カッター”!>」”サイバス”が呪文を唱え、風魔法を発動させた。
ズガガガガガ!!
ミスリル鉱山で働くドワーフ達の5メートル先の地面に、10メートル位の鎌鼬による、横一文字の傷跡が出来ていた。
「!!!」無関係のドワーフ達を攻撃されて、俺・”トト”様・”グレミー”様の動きが止まる。
「”グレミー”、私は今から”勇者”と戦う。余計な手出しをしたら、そこのドワーフ共を無数の肉塊にする。”勇者”、お前が逃げても同じだ。空は飛べるのであろう?もう少し上に行くぞ。」
”サイバス”はそう言い、高度30メートル位に上昇して停止していた。
「・・・ダメです、タケル君。あいつと戦ってはいけない、逃げて<テッカード>と<ボルクドテッカー>を自在に操れる修業をして下さい。」”グレミー”様が青い顔で言った。
「何故?俺には二人が作ってくれた<テッカード>と<ボルクドテッカー>があります!」
俺はそう答えた。
「・・・先ほど”サイバス”に放った風魔法。無詠唱でしたが、かなりの高威力の魔法でした。ですが、魔法障壁ですら破壊する事が出来なかった。それだけの実力者なのです!それにタケル君には、空中戦の経験が無い。練習と実践はまるで違う、空中戦は”サイバス”の得意分野でしょう、だから逃げるんです!」”グレミー”様が真剣な顔で俺に言った。
「・・・そうだな。実力を付けて”サイバス”と魔王”ジュドー”を倒せれば良い。今は逃げろ、逃げて修業して、最終的に勝てば問題ない!!」」”トト”様も真剣な顔で俺に言った。
ズガガガガガガガガガガ!!
ドワーフ達の10メートル後ろの地面に、15メートル位の鎌鼬による、横一文字の傷跡が出来ていた。どうやら”サイバス”が俺を急かす為に、風魔法を放ったらしい。
「・・・分かりました。」俺は二人にそう言い、3メートル位浮上してから<テッカード>に魔力を流し込み、風の魔法障壁を発生させて、真上に急上昇した。
”トト”様と”グレミー”様が何か叫んでいたが、無視をした。
高度30メートル位に上昇すると、前方10メートル先に”サイバス”は待っていた。
「遅かったじゃないか、もう少し遅かったらドワーフ共は肉塊になっていたぞ。」
再び、人を馬鹿にした笑みを浮かべて”サイバス”は言って来た。
「俺には俺の都合があるんだよ!」俺はそう言って、<ランバル流剣術>の構えを取った。
<ランバル流剣術>は、日本の<霞の構え>に似ている。剣先と顔と左肩を相手に向け、剣は自分の目の位置より少し上に位置する。両足を両肩より少し広く開き、少し腰を落とし両足のバネを生かせる様にする。左肩と右肩を水平にして、左肩を拳1つ分下げて相手に向けて前傾姿勢を取る。
「さあ!始めようか、”勇者”よ!!」戦いの宣言をする”サイバス”。
「来い!」初めての空中戦で、戸惑いが隠せない俺。
「<”カローリック・サイル”!!>」左手を俺に突出し、呪文を唱える。すると、4つのテニスボール位の光弾が発生し、4つが別々の軌道の時間差で俺に向かってくる。
「くそ!」右手に握った<ボルクドテッカー>に魔力を流し、刀身に魔力を帯びさせる。
一番最初に到達する右からの光弾に、水平斬りを叩き込むと光弾はテニスボールからハンドボールの大きさになり、刀身に留まった。続いて、左肩・腹・右足に着弾してハンドボールの大きさになった。
4つ全てがハンドボールの大きさになった瞬間、刀身の光弾が爆発した。続いて、左肩・腹・右足の光弾が間髪入れずに爆発した。俺は4回連続で爆発の衝撃を受け、激しく体を爆風に弾かれた。
4回連続で爆発の爆煙が消えた時、俺は右手に<ボルクドテッカー>を握り、両手・両足をだらりとした脱力した状態になっていた。
「・・・なんだ、つまらない奴だな貴様は。<”ハイ・ファーリア”!!>」
再び、左手を俺に突出し、呪文を唱える。すると、2つのサッカーボール位の光弾が発生し、2つが別々の軌道で俺に向かってくる。
「・・・」俺は無言で、右上から来る光弾に対して、右手のみの左逆袈裟斬りで応戦した。刀身が光弾に当たった瞬間、大爆発を起こして俺の体は爆風で左下に吹き飛ばされた。吹き飛ばされた先にもう1つの光弾があり、俺の体が接触すると大爆発を起こして俺の体は爆風で右上に吹き飛ばされて元の位置に戻された。
俺の体は再び爆煙に包まれていた。爆煙が消えてくると、下の方から”トト”様と”グレミー”様の声が聞こえてきた。どうやら先ほどの爆発音で心配になって、風の魔法障壁で上空に来たらしい。
”トト”様と”グレミー”様が、<ボルクドテッカー>を握り、両手・両足をだらりとした脱力状態になっていた俺のすぐ後ろの位置までやって来た。
「タケル君!私は逃げろと言ったのです!戦えとは言っていません!!」
今まで見た事の無い様な激怒した顔で”グレミー”様が言った。
「たける!ここは俺と”グレミー”殿に任せて、今すぐ逃げろ!!目的を見失うな!!」
”トト”様も激怒して言って来た。
俺は”トト”様と”グレミー”様の方に体を向けた。
「すいません、心配をかけて。でも俺、これだけ攻撃を喰らっても、無傷なんです。」
俺は”トト”様と”グレミー”様に言った。
「はあ!?」”トト”様と”グレミー”様の表情と言葉が重なる。
俺は本当に無傷だった。”カローリック・サイル”の最初の光弾が爆発した時、衝撃で体が弾かれたがダメージは無く、続く2発目、3発目、4発目の爆発もダメージは無かった。確認の為に、脱力して次の”ハイ・ファーリア”もワザと当たってみたが、やっぱり2発の大爆発にも無傷だった。
「嘘は見苦しいぞ!”勇者”!!」”サイバス”の怒りが滲んだ声が後ろから聞こえた。
体を”サイバス”の方に向けると、やはり怒りの表情を浮かべていた。
「”サイバス”、お前は最初に言ったな、”まるで新しいおもちゃを与えられたガキだな”って」
俺は”サイバス”に聞いた。
「ああ言った。貴様は愚かなガキだ!後悔しながら死んで行け!!」”サイバス”が言い放った。
「・・・確かに俺はガキだ。”サイバス”という新しいおもちゃを壊してしまうガキだ。」
今度は俺が、”サイバス”に静かに言った。
「貴様ああ!!」本気で”サイバス”が逆上した。
「”トト”様と”グレミー”様!今から俺は全力を出します!地上へ避難してください!!」
俺は”トト”様と”グレミー”様に言った。
「分かりました!」”グレミー”様がい言った。
「俺に全力を見せてみろ!!」”トト”様が言った。
俺は少し息を吐き、少し息を吸った。そして、
「うおおおおおおおおお!!!俺の魔力に答えろ!!<テッカード>!!<ボルクドテッカー>!!」
魂の雄叫びと共に、<魔闘術>(シャイニング)を発動させる。
全身と<テッカード>と<ボルクドテッカー>に全力で魔力を流し込む。
<ボルクドテッカー>の刀身が魔力を帯びて光り出す。
<テッカード>の中の<ノーティラス鉱>に含まれる、無数の小さい蒼い粒子が活性化されて、鎧の色が、黒金色から蒼色に変化し、鎧の縁ふちに刻印された小さな呪文が緑色に発光する。
「”トト”様と”グレミー”様!早く地上に行ってください!!」俺は”トト”様と”グレミー”様に頼んだ。
「死んだらいけませんよ!」”グレミー”様が言う。
「”ルルーカ”を悲しませるんじゃないぞ!」”トト”様が言った。
それだけ言うと、”トト”様と”グレミー”様は地上に向かって避難をしてくれた。
「最後のお別れは済んだか?」”サイバス”が馬鹿にして来た。
「いいや、今夜もおっとり美人と、情熱的な夜を過ごして良い事の許可を貰っただけだ!」
俺も”サイバス”を馬鹿にした。
「・・・もういい、貴様は死ね!!<”カローリック・サイル”!!>」
”サイバス”が再び左手を俺に向けて、4つの光弾を撃ち出した。
刹那、俺は”く”の字の軌跡を描き、”サイバス”の右側に移動していた。
”サイバス”が驚愕の表情を浮かべて、こちらに顔を向けようとしたが、俺の左手は魔法障壁をあっさりと砕き、”サイバス”の顔の右側を左手で掴んでミスリル鉱山へ加速しながら突っ込んで行った。
”サイバス”の顔の左側が、ミスリル鉱山の山肌にめり込む。
ドガ!!ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
”サイバス”の顔の左側が、ミスリル鉱山の山肌にめり込んだまま200メートルほど水平に山肌を削る。首から下の体が、山肌のデコボコに当たり、激しく弾かれている。
200メートル行った先で、”カローリック・サイル”の4つの光弾が追い付いて来たので、左手一本で光弾に投げつける。俺の時と同様に、”サイバス”の体は4回連続で爆発の衝撃を受け、激しく体を爆風に弾かれ、爆煙に包まれた。
俺は爆煙の中に突っ込んで行き、苦悶の表情を浮かべる”サイバス”を発見した。俺は左拳にさらに魔力を込めて、腰の回転を生かし”サイバス”の腹筋にボディーブローを叩き込む。
バギン!!俺の左のボディーブローは、”サイバス”の鎧をあっけなく砕き腹筋にめり込んでいた。
「ぐぼはお!」垂れ目を見開き、イケメンらしからぬ言葉が口から出た。
左の拳を”サイバス”の腹筋から引き抜き、前屈みになった”サイバス”の左の二の腕に、右足で右上から左下へ振り抜くような回し蹴りを叩き込む。
メキキキ!バキン!!・・・・ドガン!ザザザザザザア!
”サイバス”の左の二の腕の骨が軋み骨が折れた音と同時に、スマッシュされたテニスボールの様に、地面に叩き付けられて、ワンバウンドして礫の地面を滑って行った。
礫の地面に転がる”サイバス”が、両膝と右手を使って身を起こして俺を睨んだ瞬間、急接近していた俺の左手が”サイバス”の顔の正面を左手で掴んで、礫の地面に勢い良く後頭部を打ちつけた。
ドガ!ドザザザザザザザザザザザザア!
”サイバス”の後頭部を打ちつけたまま、礫の地面を100メートル位を後頭部と背中で削る。
首から下の体が、礫の地面のデコボコに当たり、激しく痙攣したような感じで振動している。
礫の地面を100メートル位を後頭部と背中で削った後、俺は左手に力を入れて”サイバス”の顔を左腕を伸ばした状態で、左肩の高さまで持ち上げる。”サイバス”の頭蓋骨が悲鳴を上げていた。
メキ・・メキキ・・・・メキ・・
俺は”サイバス”の頭蓋骨が悲鳴を上げるのを聞きつつ、ゆっくり上昇していった。
左の掌の下で、「ばあ・・い・ばあ・・」と”サイバス”が呻き、無事な右手で俺の左手首を掴んで、左の掌を剥がそうとしていたが無視した。
地上から15メートル位ゆっくり上昇していると、目の前と胸の前に”ハイ・ファーリア”の2つの光弾が発生し、俺と”サイバス”の間で大爆発をした。
俺は”ハイ・ファーリア”の2つの光弾の大爆発で、後方に10メートル位吹き飛ばされたが、無傷だった。”ハイ・ファーリア”の大爆発の爆煙が消えると、憤怒の表情の”サイバス”がいた。
どうやら、左の掌の下で呻いていたのではなく、”ハイ・ファーリア”の呪文と魔法障壁を作っていたらしい。
改めて、”サイバス”を見てみる。顔の左半分が血塗れで、左の二の腕が完全骨折、腹筋の所の鎧に大穴が空いていて、両目は血走り、歯を見せて怒っていた。肩で息をしている姿は、初めて姿を現した時のイケメンの姿は微塵も無かった。
「・・・お前、血が出ているぞ、転んだのか?」俺は”サイバス”を挑発した。
「!!・・・貴様ああ!腸ぶちまけて死ね!!<”アーカ・シクル・バスター”!!>」
発狂寸前の”サイバス”が右手を前に突出し、魔法陣を発生させる。魔法陣の中から黒い巨大な竜巻が、俺に向かって襲い掛かる。
俺は左手を突き出し、左手の手前1メートルに直径5メートルの風の防御壁を作り出す。
バキャキャキャキャキャキャ!!!
俺の作り出した風の防御壁に、”サイバス”が作り出した黒い巨大な竜巻がぶつかり、派手な音を出している。風の防御壁にぶつかって弾かれた物を見ると、雷を帯びた黒水晶だった。
「・・・全力でこの程度か。」俺は、<テッカード>と<ボルクドテッカー>の性能の高さを改めて知った。
俺は風の防御壁をその場に固定して、再び”く”の字の軌跡を描き、”サイバス”の右側に移動していた。
”サイバス”は”アーカ・シクル・バスター”の威力を少しでも上げようと、右手の魔法陣に集中していて俺の存在に気付いていなかった。俺は<ボルクドテッカー>を下から上へ、右肘から先だけの動きで斬った。”サイバス”の右の二の腕が斜めに斬れて地上に落ちて行った。
「あ!ああ!!!ああああああ!!!!」
”サイバス”の目が見開かれ、右腕を斬り飛ばされたショックなのか、激痛なのか分からないが”サイバス”の口から絶叫が発せられた。左手で傷口を押えようとしたが、完全骨折していたので左手は動かず、
パニックになり右腕の傷口を意味もなく振り回していた。
べキン!!・・・・ドガン!ザザザザザザア!
パニックになっている”サイバス”の腰の上辺りに、左足で左上から右下へ振り抜くような回し蹴りを叩き込む。完全に背骨が折れた音と同時に、本日2度目のスマッシュされたテニスボールの様に、地面に叩き付けられて、ワンバウンドして礫の地面を滑って行った。
礫の地面の上で、折れた左腕と斬り飛ばされた右腕、腰から下が動かない下半身の”サイバス”が逃げようともがいていた。まるで、海の砂浜にいるウミガメである。
やがて”サイバス”は魔法で体を浮かせて立ったので、俺は”サイバス”の2メートル手前に着地した。
「よう!」俺は”サイバス”に挨拶をした。
”サイバス”からの挨拶は帰って来なかった。恐怖で顔を引きつらせ、目は恐怖に染まり、顔を左右に小さく振っている。斬られた右腕の切り口を振り回し、少しずつ俺から遠ざかっている。
「・・・そっか、やっぱり壊れちゃったか。それじゃあ、さよならだ”サイバス”。」
俺は<ボルクドテッカー>を握り直し、”サイバス”を斬り殺せる距離にゆっくり歩いて移動する。
「もうすぐ魔王も地獄に行くから、寂しくないぞ”サイバス”!!」
”サイバス”が絶叫する前に、右手一本で<ボルクドテッカー>を縦横無尽に斬り付けた。”サイバス”だった物が”ドチャチャチャチャチャ!!”と嫌な音を立てて肉塊になって、礫の地面に落ちて行った。やがてそれは黒くなり、やがてボロボロと崩れ去った。
俺は戦闘が終わったので、<魔闘術>(シャイニング)を解除する。
<テッカード>が蒼色から黒金色に戻り、<ボルクドテッカー>の刀身も通常に戻った。
俺は”サイバス”を倒した場所に、ドロップされた翠色の宝玉と大袋に入ったお金を回収して、”トト”様と”グレミー”様の所へ50センチ位浮上しホバー状態で移動した。
俺の姿を見つけて、”トト”様と”グレミー”様が駆け寄って来る。
「やりましたね!タケル君!!」満面の笑みで、俺の両肩を叩く”グレミー”様。
「本気でやられてしまうかと思ったぞ!あまり心配かけるなタケル!!」俺の腰をバシバシ叩く”トト”様。
「2人とも、心配かけてスイマセン。ですが、<テッカード>と<ボルクドテッカー>が”三種の神器”と同等の力を持っている事が分かりました。俺に、<テッカード>と<ボルクドテッカー>を作ってくれて、本当にありがとうございます。これで、魔王”ジュドー”とも戦えます!」
俺は再び、”トト”様と”グレミー”様に感謝の言葉を贈った。




