現在、宴(うたげ)中!
<アトランティー>族の集落に着くと、立派な木造建築の宮殿の庭に連れて行かれた。
日本史の教科書に載っていた、邪馬台国の”卑弥呼”が住んでいた宮殿に似ている。
「木で作った、掘立小屋かと思ったのかい?初代”勇者”様が婿に来る時に、日常生活に困るといけないから、色々な技術を<アトランティー>族に<アーシタ>国々から派遣された職人から伝授されたんだよ。」
”グランディ”が得意そうに言った。
「”グランディ”さ~ん!お帰り~!」宮殿の中から1人の少女が駆け寄って来る。
「”マリーリ”、ただいま!」駆け寄ってきた少女の頭をワシャワシャ撫でる”グランディ”。
「この人は誰?私、久しぶりに男の人を見たよ!」興味津々で俺を見てくる”マリーリ”。
「こんにちは、”マリーリ”ちゃん。」俺は出来るだけ自然に挨拶したが、”マリーリ”は素早くぴゅんと”グランディ”の後ろに隠れてしまった。結構、ショックである。
”マリーリ”は”チルダ”と同じ、小麦色の肌・蒼い髪・蒼い目をして身長は155センチ位の小柄、ストレートのショートヘアーで丸目・”Bの胸の双丘”の持ち主。俺の勘では年齢は17.18歳位だと思う。
「”グランディ”さん、それに皆さんお疲れ様です。無事に<トライアングルレオ>を討伐成功みたいですね!」宮殿から別の女性が歩いてきて、”グランディ”達を労った。
「いや~、違うんだ”エレクート”。実はこの男が1人で倒してくれたんだ。」
”グランディ”が、後ろ手に縛られて連行されている俺を指差して言った。
「・・・この人は何で拘束されているのですか?」不思議そうに、”エルクート”が尋ねる。
「いや、ちょっとな。”ナディー”様は宮殿にいらっしゃるか?」”グランディ”がお茶を濁してくれた。
”エレクート”は”チルダ”と同じ、小麦色の肌・蒼い髪・蒼い目をして身長は170センチ位、下の方がポニーテールでタレ目・”Cの胸の双丘”の持ち主。俺の勘では年齢は24.25歳位だと思う。
「ねえ、あなた何をしたの?名前は?」”マリーリ”が俺に慣れたのか聞いてきた。
「俺は、タケルだよ。異世界からこの<アーシタ>に来たんだよ。」俺は”マリーリ”の質問に半分だけ答えた。
「”マリーリ”すまないが、私はタケルと”ナディー”様に会わないといけないんだ。行ってもいいかい?」
もう半分の答え<ノーティラス鉱>を盗みに来た事を話す前に、”グランディ”が助け舟を出してくれた。
”マリーリ”はまだ話をしたそうにしていたが、”グランディ”が俺を宮殿内に連れて行ってくれた。
”グランディ”と俺が宮殿内を進んで行くと、大広間に着いた。
大広間の奥には一段高い場所があり、そこに一人の女性が座っていた。
”グランディ”は俺をその女性の前に連れて行った。
「失礼します、”ナディー”様。侵入者を連行して参りました。」”グランディ”が報告した。
「初めまして、侵入者殿。まずは名を聞こうか。」”ナディー”様が聞いてきた。
「・・・初めまして、異世界より召喚された、勇者パーティーで”戦士”をやっている本田 猛と申します。タケルとお呼び下さい。」かなり気まずかったが、俺は”ナディー”様に自己紹介をした。
族長”ナディー”様、小麦色の肌・蒼い髪・蒼い目をして身長は170センチ位、ボブカットで猫目・”Cの胸の双丘”の持ち主。俺の勘では年齢は24.25歳位だと思う。”グランディ”達と同じ服装をしているが、左肩から腰にかけて赤い鳥の羽毛を身に着けている。左肩に載っている鳥の頭は<アルジャージャ>だと思う。
<アルジャージャ>は、ヒクイドリに似たモンスターである。体長は2メートル位で前蹴りが得意なのは一緒なのだが、<アルジャージャ>は炎の魔法も得意である。体の前に小さい火球を作り出し、敵に向かって撃ち出す。<アルジャージャ>の羽毛をドロップするには何体も戦わなければならない。
”ナディー”様の戦闘力の高さが分かる。
「さてタケル殿、我が<アトランティー>族の領土に何の御用かな?」”ナディー”様が質問してきた。
「・・・・・」俺は気まずくて”ナディー”様の質問に答えられずにいた。
「どうした?タケル殿。我が領土で何をしていたのか答えてもらおう。」”ナディー”様が再び質問してきた。
「”ナディー”様、今回の”勇者”は絶望的に弱いそうです。”三種の神器”を装備しても、魔王に一瞬で殺される位に。そこで、”三種の神器”と同等の剣と鎧をワタル殿が装備し、魔王と戦って瀕死状態に追い込み、”勇者”に魔王の首を斬らせる算段らしいです。」”グランディ”がまた助け舟を出してくれた。
「ほう、つまり”三種の神器”と同等の剣と鎧を作るので、<ノーティラス鉱>を盗みに来たと。」
”ナディー”様が核心を突いて来た。
「・・・すいませんでした。」俺は気まずくて、”ナディー”様を見れなかった。
「”ナディー”様!タケル殿は確かに<ノーティラス鉱>を盗みに来ましたが、<トライアングルレオ>を討伐し、我らの傷の治療もしてくれました。その事を、ご配慮してください。」
”グランディ”が進言してくれた。
「<ノーティラス鉱>の盗難は本来は大罪。しかし、<トライアングルレオ>を討伐し、”グランディ”達の治療もしてくれた事を考慮して、今回は不問とする。しかし、<ノーティラス鉱>は諦めよ!」
”ナディー”様がそう言い放った。
「さて!辛気臭い話はこれで終わりだ。ワタル殿のお蔭で、頭を悩ませていた<トライアングルレオ>は討伐され、”グランディ”達も全員無事であった。<トライアングルレオ>を討伐してくれた、ワタル殿に感謝の宴を始めよう!」笑顔で”ナディー”様がまた言い放った。
大広間にて、<アトランティー>族の宴が始まった。
<アトランティー>族の集落付近で採れる”山の幸”が大量に並べられた。
”ココーケの唐揚げ”・”モギュームのステーキ&赤いソース”・”ママスオーの塩焼き”・”シカーナーラの串焼き”・”ブートンの煮込み汁”・”タローイーム芋のスパイスサラダ”その他諸々料理を出してくれた。
「さあ、ワタル殿。<アトランティー>族が誇る料理の数々、腹一杯食べてくだされ!」
上機嫌で”ナディー”様が言って来た。
俺は勧められるままに、<アトランティー>族が誇る料理の数々を食べまくった。味はスパイシー系の料理が多く、後を引く美味しさだった。<ノーティラス鉱>の入手失敗を現実逃避する為に、俺は大量にスパイシー料理を食べていた。
大広間に優雅な音楽が流れ始め、1人の踊り子が舞い始めた。”チルダ”であった。
先ほどの戦士の服装とは違い、上下青いビキニで、額・首・両手首・腰・両足首に鈴飾り、両手首から首の横側・両足首から腰の横側に羽衣の様な薄い布が付いた踊り子衣装だった。
俺の料理を食べる手は完全に止まっていた。”チルダ”の”演舞”に釘付けになっていた。
優雅な音楽の時は静かな“舞”だったが、テンポアップして激しい音楽になると”チルダ”の”舞”も激しくなった。両手と両足を激しく振り、体を回転させるので、額・首・両手首・腰・両足首の鈴飾りは”シャンシャンシャン”と激しく鳴り続け、両手首から首の横側・両足首から腰の横側に羽衣の様な薄い布は、風をはらんで優雅な動きを見せていた。曲が終盤になると”チルダ”はトランス状態になり、少し汗ばんだ笑顔は妖艶だった。
”チルダ”の”演舞”が終わると、大きな拍手を送った。”チルダ”は”ナディー”様に挨拶をすると、俺の横にちょこちょこっと来て、給仕を始めてくれた。
「”チルダ”ちゃん、”演舞”素敵だったよ!”チルダ”ちゃんの”演舞”に思わず心奪われたよ。」
俺は正直な感想を”チルダ”に言った。
「ありがとうございます、さっきのは<アーシタの女神>”モモス”様に捧げる、<感謝の舞>です。あのこれ”果実水”です、美味しいのでどうぞ。」
”チルダ”は少し照れながら、水差しに入った”果実水”を勧めてきた。
”チルダ”に勧められた”果実水”を飲んでみると美味しかった。味としては、リンゴジュースを少し薄めた感じだが、口当たりは良かった。
”チルダ”は”ココーケの唐揚げ”を半分に切って皿に取り分けて、俺に渡してくれた。元々”ココーケの唐揚げ”は美味かったが、美少女に取り分けられた”ココーケの唐揚げ”は、さらに美味しく感じた。
「”チルダ”!”モギュームのステーキ”のお替わり持って来たよ~!タケルさん、いっぱい食べてね~!」
”マリーリ”が元気に”モギュームのステーキ”のお替わりを”チルダ”に持って来てくれた。
「タケルさん、”モギュームのステーキ”のお替わりをどうぞ。」
”チルダ”が”モギュームのステーキ”を食べやすい大きさに切って、皿に取り分けてくれた。
「ありがとう、いただきます!ん!?」
俺は最初に食べた”モギュームのステーキ”より、ほんの少し苦みがある。
「あの、どうかしましたか?もしかして、美味しくありませんか?」”チルダ”が不安そうに聞いてくる。
「いや、何でもないよ。すごく美味しいし、いくらでも食べられるよ!」
”チルダ”に笑顔で俺は答えた。多分、”モギュームのステーキ”を焼く時に、厨房が忙しくて少し肉を焦がしたのだと思い、あまり気にせず”モギュームのステーキ”を完食した。そして、次に取り分けてもらった”タローイーム芋のスパイスサラダ”を食べている時に、俺の体に異変が起こった。




