現在、戦闘中!
結果から言えば、<アトランティー>族にあっさり見つかり、捕縛された。決してワザとではない。
<バルツブルーダー神殿>から馬車で約一日の場所に、聖地<ブルー・ル・ノーア>は存在した。
<アトランティー>族の領地ギリギリの場所で、赤茶色の崖<グラッタ>の崖を確認したので、馬車の御者に三日経っても帰って来なかったら、<バルツブルーダー神殿>に帰るように伝えると俺は馬車を降りた。
馬車を降りると、俺は気配を消して<グラッタ>の崖を目指して森林の中を走り続けた。約1時間走り続けると<グラッタ>の崖に到着したが、先客がいた。崖の下で左側に<アトランティー>族が約20名と、右側に3つのライオンの頭を持つ<トライアングルレオ>が睨み合っていた。俺は様子を見る為、気配を消したままで<アトランティー>族と<トライアングルレオ>の中間の少し離れた木々の陰に待機していた。
<アトランティー>族は、<トライアングルレオ>の迫力に気圧気味だった。3つの頭から放たれる唸り声で、後差ずる者もいた。それを見越しての強烈な咆哮が<アトランティー>族を襲った。
完全に恐怖で浮足立った<アトランティー>族に、3つの頭から別々に炎・風・雷の魔法が放たれた。
<アトランティー>族のリーダーと思われる女性が、”魔法障壁”を張ったが”魔力”の練込が足りなかったのか、あっさり”魔法障壁”は砕かれ炎・風・雷の魔法が叩き込まれた。
怪我をしても動ける者は逃げ出し、怪我をして動けない者はその場にうずくまり、もしくは逃げようともがいていた。
<トライアングルレオ>の目前に、右足を大きく怪我して血を流している17~18位の少女がいた。少女の顔は恐怖で青ざめて大粒の涙を流し、尻もちをついた状態で必死に手足を動かして距離を取ろうとしている。
<トライアングルレオ>はその少女に狙いを定めて、飛びかかる為に少し体を沈める状態になった。
木々の陰でその様子を見ていた俺は、<魔闘術>(まとうじゅつ)を発動させ”魔力”を体中に行き渡らした。木々の陰から飛び出した俺は、向かって右側にいる<トライアングルレオ>に常人離れした速さで接近した。<トライアングルレオ>の左の真横5メートルに到着すると、正三角形の上の頂点に位置する立派な”たてがみ”を持つライオンの横っ面に、渾身の飛び蹴りを叩き込んだ。
<魔闘術>(まとうじゅつ)は、”ドムント=カシュール”が編み出した戦闘術である。
特殊な呼吸法で丹田に魔力を集中・増幅させ心臓に送り、心臓から全身に魔力を行き渡らせる事により、魔力に満ちた肉体は攻撃力・防御力・素早さが飛躍的に上がった。そして、その技術は剣や鎧にも有効だった。魔力を流し込んだ剣は攻撃力と切れ味が増して、鎧に魔力を流し込むと防御力が上がった。この技術を<魔闘術>(シャイニング)と名付けた。
<HP>(生命力)も同じ方法で試した所、<MP>(魔力)以上に攻撃力・防御力・素早さが上がる事が分かった。<魔闘術>(シャイニング)以上の性能を引き出す、この技術を<魔闘術>(バーニング)と名付けた。しかし、<魔闘術>(バーニング)は<HP>(生命力)を使うので、使いすぎると死亡する諸刃の剣の技術だった。
”ドムント”先生とは、<バジナー城>に無実の罪で4回目の投獄された時に地下牢で知り合った。どうやら俺も先生も共に、”国家転覆罪”で投獄されたらしい。”勇者”から”戦士”なった俺と”魔法の才能が皆無だったドムント”先生は二人とも魔法は使えず、そのくせ二人とも<MP>(魔力)が膨大だったので、意気投合したのを覚えている。
<魔闘術>(シャイニング)を発動した状態の飛び蹴りで、肩高2メートル・体長5メートルの<トライアングルレオ>は大きくよろめいていた。
<トライアングルレオ>が自分を蹴り飛ばした人間を探す為にこちらを向く、俺は真正面に移動して<ファストールの剣>に魔力を流し込み右下に構え、全身のバネを使い<トライアングルレオ>の右下の顔の右顎から、左下の顔の左の額にかけて逆袈裟斬りをした。
斬り終わりバックステップで距離を取ると、一瞬後から<トライアングルレオ>の右前脚の横薙ぎの攻撃が目の前を通り過ぎた。間髪入れず、左前脚が斜め上から振り下ろされたので、左逆袈裟斬りで<トライアングルレオ>の左前脚を斬り飛ばした。
下段の顔2つと左前脚を失い、残った上段の顔が俺に向けて怒りの咆哮を放ってくる。
俺は全く気にせず、両脚にさらに魔力を流し込むみ<トライアングルレオ>の斬り飛ばした左前脚の所まで一瞬で間合いを詰め、真上にジャンプした。
<トライアングルレオ>の上段の顔より上に飛び上がると、今度は両腕と<ファストールの剣>に魔力を流し込み、一気に振り下ろす。残りの上段の顔と左下の顔が斬り飛ばされて、”ボトトン”と音を立てて転がった。
死んだ<トライアングルレオ>の体が黒くなり、やがてボロボロと崩れ去るのを見届けて<魔闘術>(シャイニング)を解除する。
異世界<アーシタ>では、モンスターが死んでも死体は残らない。死んだモンスターの体が黒くなり、やがてボロボロと崩れ去り、お金やアイテム、稀に食料をドロップする。
俺は<トライアングルレオ>に狙われていた少女の元に行き、安心させる為に声を掛けた。
「大丈夫だった?あいつもう倒したから安心だよ!」
出来るだけ明るい感じで話しかけ、<ファストールの剣>を持っていない左手を差し出したが、少女は先ほどの<トライアングルレオ>への恐怖なのか、初めて見る男性の俺に対する恐怖なのかガタガタ震えていた。




