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第一級の賢聖士  作者: 松木 希江琉
第一章 時止めりの教室
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第7話 めっちゃ素敵な先輩

田舎だが伝統ある高校に進学した安楽土あらと せい

色々あって結局帰宅部に収まり、友だちもできて1年が過ぎようとしていた3学期のある日、いつものように友達の斉藤さいとう 高志たかしと購買で買った昼食とともに空き部室に行くと偶然あるものに気づく。

それは表紙全体が薄茶色に変色した大正時代の化学の教科書だった。

何気なく手にとってみると、小さなノートのような切れ端に複雑な化学式のようなものが書き記してある。それをまじまじと見ていた次の瞬間---。

どの先輩が一番有望か、などと考えている間に2限が終わった。


そして考えに考えた2年の先輩のところへ走り出した。


先輩の名は細野ほその 啓治けいじ同中おなちゅうの先輩だ。背丈は僕より少し低いのにも関わらず、バレー部でセッターとして活躍している。目が細くネズミ顔の容姿だが、性格は温和で後輩の面倒見がよく、皆に好かれていた。しかも厳しい部活にも関わらず、僕の入った普通科より上位で、男女混合の理数科クラスに在籍していた。ちょろっと小耳に挟んだけれど、先輩が2年では東大第1候補、との下馬評だった。


「先輩‼ 細野先輩‼ 話があるんです!」


「おぉ、青。どうした?」


この先輩になら本当のことを全部ぶちまけたいところだったけど、それをしたら抹消される。


「2階の空き部室のこと、先生から聞いてますか?」


「あぁ、聞いてるよ。明日から工事するんだって?」


「そうなんです。実は僕、あそこで友だちと昼飯をよく食べてて、これから使う物…、いえ今日提出の生物の観察ノート、置いてきちゃったんです。ホームルームのあと慌てて取りに行ったんですけどもう鍵がかかっていて…。もしも、もし可能性として先輩がその鍵を持ってる先生を知ってるなら教えてもらおうと思ってきました。」


「たかだか生物のノートぐらいに嫌に真剣だな。先生は高田か?」


「そうです、高田先生です。」


「なるほど、ジジくじ引いたな。それじゃあ困るよな。あいつ提出物には異常に厳しいからな。でもあの校長が決めたことだろう?理由を言えば高田だってわかってくれるさ。」


「…。そうしたいところなんですけど、僕前にも何回か提出物遅れてて、目を付けられているんです。」


「そうか、この高校、容赦なく留年させるからな。わかった、ちょっと待ってろ。」


と言うと先輩は教壇に立ち、


「みんなちょっと聞いてくれ。そこにいる俺の後輩が例の部室に提出物を忘れて、今日使うから困っている。誰か鍵を持っている先生を知らないか?」


かっこいい!かっこよすぎる‼あの先輩にならあげてもいい(なにを?)と心底思った。


しかし、クラスの先輩方はまるで口裏を合わせたように


「No~~~.」


の返事だった…。


「すまんな、青。役に立てなくて。他を当たってくれないか?」


「いえ先輩、僕マジで感動しました!涙が出るくらい嬉しかったです!ありがとうございました‼」



うぅ、また振り出しに戻った。

3限が始まる。終わったら残り45分だ。


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