第5話 大ピンチ!
田舎だが伝統ある高校に進学した安楽土 青。
色々あって結局帰宅部に収まり、友だちもできて1年が過ぎようとしていた3学期のある日、いつものように友達の斉藤 高志と購買で買った昼食とともに空き部室に行くと偶然あるものに気づく。
それは表紙全体が薄茶色に変色した大正時代の化学の教科書だった。
何気なく手にとってみると、小さなノートのような切れ端に複雑な化学式のようなものが書き記してある。それをまじまじと見ていた次の瞬間---。
翌日。
ほとんど眠れず頭がボーっとしたまま自転車を漕いで学校に着いた。
教室に入り、席に座ると同時に机にかがみ込んで目を閉じた。眠い。
そういえば高志の父さん、どうしたんだろうな。高志に昨日電話したけど出てくれず、折返しもなかった。メッセも既読付いてなかったな。もうスマホ使えないからホームルームが終わったら公衆電話からかけてみるか…。
そんなことを考えていると朝のホームルームが始まった。
担任の先生が「3つ伝達事項がある。1つ目は、昨日斉藤のお父上が怪我で入院し、母君と交代で看病にあたらなければならないといことで今日は休むと連絡があった。なので今日授業で使ったプリント類は後ろの席の穴澤が責任を持ってきちんとまとめて机の中に入れておくこと。
2つ目は2階の空き部室だが、壁が脆くなってきていて書棚が倒れるかもしれないとのことで明日から工事に入る。その関係から今日から入室禁止となる。あの頭の硬い校長のお達しだ。万が一崩れて怪我でもされたらオレたちの鼻毛どころかケツの毛まで抜かれかねない。3つ目は…」
おいー‼待ってくれ‼‼今日から入室禁止⁉冗談は立派に育ててる耳毛だけにしてくれ‼なんで今日⁉今日すること⁉いつするの⁉今じゃないでしょ‼ もう頭は支離滅裂の ダ・イ・ピ・ン・チ‼
くーっ‼今行ってもしょうがないし、こればっかりは諦めるか⁉いやいや、やめるにもこの紙切れ元のところに戻さなきゃいけないんだ!なんとかしなきゃ…なんとか…。でも何も浮かばない…。このままじゃ僕この世から抹消されちゃうかもよ⁉いいの⁉それでいーの⁉短かったけどそれなりに楽しい人生でした。神様仏様ありがとう。っなんて言ってる場合じゃない!(この間約0.01秒)
落ち着け‼そうだ落ち着け。まだ約束の時間までは4時間弱ある。まずはホームルーム終わったら行ってみよう。もしかしたらそこで紙切れを握れば行けるかもしれない。うんうん、可能性にかけよう。
ホームルームが終わると一目散にあの部室に行った。
…カギかかってました…。