第3話 いい訳
田舎だが伝統ある高校に進学した安楽土 青。
色々あって結局帰宅部に収まり、友だちもできて1年が過ぎようとしていた3学期のある日、いつものように友達の斉藤 高志と購買で買った昼食とともに空き部室に行くと偶然あるものに気づく。
それは表紙全体が薄茶色に変色した大正時代の化学の教科書だった。
何気なく手にとってみると、小さなノートのような切れ端に複雑な化学式のようなものが書き記してある。それをまじまじと見ていた次の瞬間---。
ガラッと部室のドアが開いたと同時に
「いつ戻った⁉ どこに行ってたんだ⁉」
と大きく震えるような高志の声。
「おいおい、あまりでかい声出すなよ。ときとま…ときれ…トイレに行ってたんだ。高志こそどうしたんだよ。なんで呼び出されたんだ?」
「トイレ⁉嘘つけよ、オレ見ちゃったんだよ、職員室から戻った時ピカって部室のドアが光って、開けてみたらお前が影のように消えていったのが‼」
あぁ見ちゃったのね…。どうしよう…。というかやっぱり消えるんだ、あの教室に行くと。ということは時止めりは嘘?いや、待て、落ち着け。下手に言ったら僕抹消される…。消える瞬間はまだあそこには行ってないから高志も動ける。その後だよな~。僕が戻ってきてドアが開いたってことは高志はドアの外に出れてたわけで…。やばい、説明がつかない…。ごまかせるのか?(この間約0.2秒)
「なんで考える人になってるんだよ!オレ、親父が仕事中屋根から落っこちて重症らしいから病院に行ってくる‼その後きちんと理由聞かせろよな‼」
高志はカバンをぐいっと掴むと弾丸のごとく部室を出ていった。
助かった~。いや、本当なら親父さんの心配しないとだよな。ごめん、高志。あとで必ずお見舞いに行くから今は許してくれ。
まずは明日のこの時間までに結論出さないといけない。今でも信じがたいけど高志が消えたの見たって言ってたから本当にあるんだ、あの教室は。あとは挑戦するかしないか根拠になるものはないかな…。
僕が29人目って言ってた。ということは先輩のうち少なくとも28人がこの学校から消えてるってことだ。どんな人だ?それを確かめるには?考えろ、考えろ…。
悩んでいるうちに午後の授業の時間になったので教室に戻った。