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第一級の賢聖士  作者: 松木 希江琉
第2章 最初の廊下
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第29話 強力な助っ人

田舎だが伝統ある高校に進学した安楽土あらと せい

色々あって結局帰宅部に収まり、友だちもできて1年が過ぎようとしていた3学期のある日、いつものように友達の斉藤さいとう 高志たかしと購買で買った昼食とともに空き部室に行くと偶然あるものに気づく。

それは表紙全体が薄茶色に変色した大正時代の化学の教科書だった。

何気なく手にとってみると、小さなノートのような切れ端に複雑な化学式のようなものが書き記してある。それをまじまじと見ていた次の瞬間---。

3人は第2ポイントに向かって歩きだした。青はスマホで何かを見たあと暫く黙って考えていた。


美姫が

「青、さっきから黙っているけどどうしたの?なにか引っかかっているような感じがするけど。」


「うん、今午後3時。ここから第2候補地まで約1時間。そこで手がかりがつかめればタクシーを使って4時半頃には現場に着ける。でももし空振りだった場合、第3候補地に向かうから現場には最低でも2時間かかるよね。ということはゆうに5時を過ぎてしまう。さっき調べていたのだけど、今日は日の入りが5時前だから、暗くなってからでは火事の原因を突き止めるのは困難じゃないかって。」


「なるほどね。じゃあ今からタクシー使う?」


「う~ん、それも考えてはいたのだけど即効性に乏しい。それとさっきの候補地でわかったのだけど、み、美姫が有能すぎるので僕は何もやることがなかった。であればいっそ候補地担当と現場担当に分かれて別行動すればより短時間で対応できると思ったのだけど…。」


「だけど?」


「候補地担当はみ、美姫になるからここからタクシーを使ってほしいのだけど、支払いをどうしようかと思って。ハルを取り外しちゃうと再ペアリングしなきゃならないでしょ?何かいい方法はないかな…。」


「そうね…。ハルしか支払いできないもんね…。どうしよう。」


ノノカが入って

「2人とも、忘れてはいませんか?生ける知恵袋、安城先生の存在を!」


「そうだ!5分は無料だったよね!掛けてみよう。『ハル、安城先生を呼び出して。』」


「セイ、了解しました。呼び出しています。少々お待ち下さい…。繋がりました。お話しください。」


「先生、聞こえてますか、青です。お知恵を拝借したいのです。」


「聞こえておるぞよ。困り事かの?何でも言うてみぃ。」


「美姫さんにタクシーを使ってもらいたいのですが、僕しか支払いできないんです。どうすればいいですか?」


「おぉ、そうじゃったの。美姫くんはA-SHOCK持っていないからのぅ。でももっと凄いもの持っとるんじゃなかったか?聞いておるぞよ、かよさんから。」


「え?あ、僕が背負ってる杖のことですか?」


「そうじゃよ。それは“だいたい願いが叶う杖”、略して“もうちょっとで賢者の杖になれる残念な杖”と言うんじゃ。それで美姫くんは支払いはできんが、瞬間移動ができる。お金の節約にもなるし、一石二鳥じゃろ。」


「(青の心の声:略してないけどまぁいいか。突っ込むと時間かかりそうだし。)そんな事ができるんですか!もしかして3人同時に移動できるんですか?」


「いや、残念じゃがそれはまだ美姫くんしか使えんし、1人しか移動できんのじゃ。全員で移動できるようになるにはそうじゃの…、あと5枚は絵画を解いてもらわんと無理じゃの。」


「わかりました!それだけでも十分助かります。ちなみに使い方は?」


「杖を水平の持ち、呪文を唱えてから移動したい場所を心で念ずる。それだけじゃ。簡単じゃろ?」


「ええ。呪文というのは?」


「ちょっと待ちんしゃれ。…あったあった。“ちちんぷいぷいへがでるよ。ちゃんとやらなきゃほんとに出すよ”じゃ。できるだけ滑舌(かつぜつ)良く、大きな声で唱えるんじゃ。」


顔を真っ赤にした美姫が割り込んできた。

「ちょっと先生‼あたしがそんな事言えるわけないじゃない‼(激オコ)」


「しょうがないじゃろう、もともとそれはお父上の杖なんじゃ。時々念じた通りにならないから苦肉の策でそう決めたんじゃろうて。文句なら彼に言うがよろし。」


「だって私アイドルだからおならしないんだけど‼(超激オコ)」


青、ノノカは棒立ちになり

(怒ってるのそこなんだ…。それもどさくさに紛れてアイドルってなんだよ…。)


「そうか、しないんじゃな。残念じゃ。じゃあ、呪文をリセットしてあげようかの。」


美姫はゆっくりと脅すように低音で

「で・き・るなら早く言ってくださいよ!(爆オコ)」


「カッカッカッ!ほれリセットしたぞよ。好きな呪文を決めて使いなされ。それでは引き続き検討をいのるぞよ~。」プチッ


「通信が強制終了されました。3分18秒です。無料通話の範囲内です。」


青がノノカに小声で

(先生、逃げたよね、爆弾落として逃げたよね…。どうするんだよ、すげー怒ってるじゃん…。)

(あーいう人だからしょうがないのよ、あのじーさん。これってある意味セクハラよね…。)


「そこ!何隠れてこそこそ言ってるの!呪文考えなさいよ‼」


青とノノカはびしっと敬礼して

「イエスマム‼」


2人は腕を組んで怒っている美姫の後ろで恐る恐る様子をうかがいながら

「“アブラカアブラ”じゃだめかな~。チラッ」

「“成るか成らぬか。成らねば切るぞ。”は?チラッ」


「もういいわ。私の杖だから自分で考える。2人に当たってごめんね。」



しばらくして美姫は

「決めたわ。これでいく。」


「もう決まったんですか~、さすが美姫様。では実験してみましょうよ。」


「茶化すんじゃないの!じゃあ行くわよ。あの丘まで移動してみる。ちょっとドキドキしてきた。」

と言うと美姫は杖を水平に持ち、


「Pater meus,Vos autem in corde meo.《パーテルメウス ボスアウテミンコルデミオ》」

と唱え、目を閉じて念じた。


次の瞬間、フッと風が吹いたかと思うと美姫の姿は消えていた。


「わっ!消えてる!」


「ここよ~。上手く行ったみたい~。」


丘の方から美姫の声が聞こえてきた。


「やりましたね!美姫さんすごい‼」

青が大声で叫ぶと


「また敬語になってるわよ~。そっちに戻るわ~。」

と言ってまた呪文を唱え、こちらに戻ってきた。


ノノカが

「美姫ちゃん凄いわ!移動した瞬間ってどんな感じなの?」


「もうほんとに一瞬よ。パって視界が変わるの。」


青が

「呪文はどんな意味?」


「恥ずかしいから教えない~。ラテン語とだけ言っておくわ。」


「わかった。よし!強力な能力も手に入ったし、みんなでこの絵画を救おう!美姫は第2候補地へ、僕たちは元の現場付近にタクシーで戻るから、進展があったら電話して。すぐに動くから。」


「いいわよ。まかせておいて!」


「じゃあ連絡待ってる!」


3人は分かれて行動に移った。

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