第26話 ハルの能力
田舎だが伝統ある高校に進学した安楽土 青。
色々あって結局帰宅部に収まり、友だちもできて1年が過ぎようとしていた3学期のある日、いつものように友達の斉藤 高志と購買で買った昼食とともに空き部室に行くと偶然あるものに気づく。
それは表紙全体が薄茶色に変色した大正時代の化学の教科書だった。
何気なく手にとってみると、小さなノートのような切れ端に複雑な化学式のようなものが書き記してある。それをまじまじと見ていた次の瞬間---。
「ハル、ここの絵画をもう一度観せてくれるかな?」
「もちろんです、セイ。こちらです。」
ハルの盤面と垂直に、フワッとあの絵画が空中に映し出された。
「ちょっとちょっと青、本当にハルとアイスクリームで仲良くなったわけ?」
「ノノカ、これは男同士じゃないとわからないんだよ。そんなに不思議ならなにかハルに訊いてごらんよ。」
「わかったわ、ハル。セイのことどう思ってるの?」
「愚問ですね、マブダチです。」
「もうっ‼一言多いのよね‼茹でるわよ‼」
「まぁまぁノノカちゃん、こうやって絵が観られるようになったのだからいいじゃない。これも青の能力よ。
ね、ハル、私達とも仲良くしてね。」
「それは無理です。馴れ馴れしくしないでください。私はあなたの名前さえ知りませんから。私はセイの頼みだけ聞くように出来ています。」
「ノノカちゃん!鍋用意して‼」
「美姫ちゃん、落ち着いて‼」
青は(そんなにムキになることないと思うんだけど、大丈夫かな、これから…)と思ったが口には出さなかった。
3人は気を取り直して映し出された絵をじっくり眺めた。
「2人ともちょっとここを見てください。崩れ落ちた木だと思うんですが、最初に観たときはそんなに違和感なかったけど、よく見るとなにかに支えられているような感じがしませんか?」
美姫が
「そうね、ただ崩れ落ちた感じじゃないわね。何かに寄りかかっているように見えるわ。あ、車があるんじゃない?…そうよ、ここはきっと車庫が崩れ落ちて木片が車を覆っているんだわ。」
「ということはこの家は向かって右側に車庫があるってことですね。これは大きな発見です。ノノカはどう?」
「そうね、この男の人の服装だけど、作業着?みたいな服に見える。色はわからないけど、少なくともスーツではなさそう。」
「そうだね、僕もそう思う。これも新しい発見だ。ノノカありがとう。」
「もう他に特徴はなさそうね。青が言ってたこの影は人か、ものかよくわからないし。まだこれだけでは場所を絞り込むのは難しそう。ノノカちゃん、もう少しこの絵に関係する場所を特定できないかな。前回の中学校みたいに。」
「そうね、この人の勤務先ってことよね。探知してみる。ちょっと時間をちょうだい。」
しばらくするとノノカが
「候補となる場所が3か所あるわ。それ以上はもう絞れない。1つはここから2kmぐらいのところ、もう1つは5kmぐらい。3つ目は遠いな、10km以上15km未満ってとこかしら。どうする?」
「2km歩くには30分ぐらい。5kmだと1時間半弱。10kmだと3時間になっちゃうね。まぁ、そこにはタクシーか何かで行くとしても、今午後2時だから順序良く回らないと家が燃え出す可能性がある。ノノカ、美姫さんのパソコンにその3カ所をざっくりマッピングできる?」
美姫がパソコンをさっと取り出すと、ノノカと一緒にWebの地図上にマッピングしていった。
「大体こんな感じになるけど。」
「ありがとう。ハル、この地図から最短のルートを割り出して。」
とハルをマップに向けた。
「わかりました、セイ。しばらくお待ちください。接続しました。解析中です。…これです、ご覧ください。」
「すごッ‼こんなこともできちゃうんだ!まずい、あたしハルに負けるかも…。」
ノノカにしては珍しく、がっかりしたような表情を見せた。
「ノノカ、僕たち仲間なんだ。勝ちも負けもないよ。得意な分野でお互いをカバーしていけばいいじゃないか。僕も美姫さんも頼りにしているよ。」
「そ、そうよね。ハルは計算得意だもんね。」
「うん、そういうこと。じゃあマップ通りに早速行ってみよう。」
3人はまず5㎞先の候補地に向かった。




