第22話 第二の絵画
田舎だが伝統ある高校に進学した安楽土 青。
色々あって結局帰宅部に収まり、友だちもできて1年が過ぎようとしていた3学期のある日、いつものように友達の斉藤 高志と購買で買った昼食とともに空き部室に行くと偶然あるものに気づく。
それは表紙全体が薄茶色に変色した大正時代の化学の教科書だった。
何気なく手にとってみると、小さなノートのような切れ端に複雑な化学式のようなものが書き記してある。それをまじまじと見ていた次の瞬間---。
「ガブッ」
ノノカが青の二の腕の内側を噛んだ。
「イッテーッ!なんだよノノカ!そんな柔らかいところ噛むなよ!もっと他の起こし方があるだろう‼」
「いや~、いろいろ噛んでみて一番よく目が覚めるところを探してあげようと思ってさ、ウヒヒ。」
「そういう問題かな…。今何時?」
「6時だよ。早く顔洗って歯磨いてご飯食べに行こうよ。」
「わかったよ。美姫さんはもう起きてる?」
「まだだよ。寝顔が可愛いから起こすのに忍びなくてさ。あ、入っちゃダメだよ、入ったら変態って呼ぶよ?」
「入らないよ(見たいけど)!」
青が歯磨きをしていると、美姫が起きてきた。
「おはよう、青。ふぁ~。」
という美姫の姿はパジャマの右肩と胸がはだけてブラが見えていた。
青は顔を真赤にして慌てて美姫と反対方向を向き、口から泡が飛び出ないように
「うぶっ!みひはん(美姫さん)!はんとははじゃまいて(ちゃんとパジャマ着て)!」
と言うと美姫は
「ん?あ~、そうね。別に見てもいいけど。これ見せブラだし…。」
泡を吐いた青は
「あれ、なんか鼻から流れてくるものが…。」
「やらしー!エッチ!スケベー‼早くティッシュを鼻に突っ込みなさいよ!」
ノノカはニヤつきながら足でティッシュ箱を青に押し付けた。
(もっと優しくしてくれたっていいじゃん…。初めて間近で女の子のブラを生で見たんだから。)
とちょっとムっとしながら青は鼻にティッシュを丸めて入れた。
3人は出かける準備をし、1階に降りて出口に向かった。
青が
「さぁ、行きますよ。第二の絵画。心の準備はいいですか?」
美姫とノノカは同時に
「OK‼」
3人はログハウスを出て、2枚目の絵画に向かった。
ログハウスと同じ側にあるその絵画は、真っ赤に燃えている家の前で1人の男性が横たわった女性を跪きながら抱え込んでいる絵だった。絵のタイトルは「業火の恐怖 2009年 甘寧天五 作」とある。
美姫が口に手を当てながら言った。
「これって女の人が焼死したの…?男の人は恋人?旦那さん? …どちらにしても凄い状況よ。」
青は
「そうですね…。あ、ここよく見て下さい。燃えている家の右奥になにか人かものの影のようなものが描かれていませんか?なにかのヒントになるかもしれませんね。」
「よくわかったわね。ちょっと関心。じゃあ行くわよ!」
とノノカがボタンをポチッ。
「あー!また押された‼」
3人は白い粒子になって絵の中に吸い込まれていった。