第20話 第一の絵画 解決
田舎だが伝統ある高校に進学した安楽土 青。
色々あって結局帰宅部に収まり、友だちもできて1年が過ぎようとしていた3学期のある日、いつものように友達の斉藤 高志と購買で買った昼食とともに空き部室に行くと偶然あるものに気づく。
それは表紙全体が薄茶色に変色した大正時代の化学の教科書だった。
何気なく手にとってみると、小さなノートのような切れ端に複雑な化学式のようなものが書き記してある。それをまじまじと見ていた次の瞬間---。
青はノノカと一緒にネットカフェに戻った。
合志は
「どうだった?上手く説明できた?」と2人に訊くと
「うん、ちょっとかっこよかったかな、青。」
とノノカ。
「素直に喜んでおくよ。よし、最後の仕上げだ。」
と青。
合志は
「うん、そうだね。もうこいつらに絶対にこんなことさせちゃいけないよね。ちょっと待って。運営者からは…、まだ返信来てないね…。」
青は
「わかりました。じゃあもう少し頑張りましょうか。奴らに警告を出しましょう。警察も動いていると思うし、それでこの絵画はクリアじゃないかな。」
ノノカが
「そうだね‼なんか “正義の味方”?みたいな感じがする‼めっちゃテンション上がってきた‼」
合志は
「青くん凄いよ、なんか計算ずくめみたいな気がする。知識も凄いし、それを実際やってのける。いいよ、私にできることなら何でも言って!」
「ノノカ、合志先輩、ありがとうございます。2人がいなかったら思いつかなかった計画ですよ。ではここからは見ていて下さい。」
青は合志のパソコンに向かって何やら5分ほど掛けて、ウィンドウを2つ立ち上げた。その2つのウィンドウにはあのテキスト型のSNSとほぼ同じものが映っていた。
合志
「これって、あのSNSを同時に立ち上げたってこと?」
青
「いえ、ちょっと違います。これはリモートログイン、と言って、まだインターネットがアメリカの大学、企業だけで使われていた技術の応用です。つまり」
ノノカ
「あの2人と繋がってるわけ⁉」
青
「その通り。これであのSNSのように、テキストだけだけど直接あの2人とやり取りができるわけ。もちろんこちらの場所がすぐに特定できないようにいくつかのサーバーを介して繋げたから、誰がやったかはまずわからない。でもあまり長い時間は繋げないからね、始めるよ。」
青は一呼吸置いてキーボードを打ち始めた。
『駒江中学校2年のCくん。同じ学年のAさんに掲示板でこんなやり取りをしていたね。
https://www2.holmes.xxxx(あのスクリーンショットが表示されるURL)
これは断じて許されない行為だ。警察がもう動き出している。
さらに今後もし同じようなことをやったら私が君のことをすべて晒すぞ。努々忘れるな。』
同じ文章をもう一枚のウィンドウに貼り付け送信し、2枚のウィンドウを閉じた。
「ふぅ。これぐらいでどうですか?」
合志
「完璧よ‼もうビビってあのSNS使えないと思うわ!」
ノノカ
「凄い凄い!青凄い‼」
青は愁眉を開くと
「なんか、力が一気の抜けた~。これで綾野さんが早く元気になってくれれば言うことなしだね。」
ノノカが声色を変えて
「青くん、おめでとう。最初の絵画クリアじゃ。しかも今までで最速じゃ。今廊下への扉を開けるぞ。
それと合志君が行っておるな。仲間にするんじゃろう?手続きはわしがやっておこう。では次も期待しておるぞよ。カッカッカ。」
眼の前に縦に長い楕円の光る枠が現れ、3人は絶望の廊下に戻っていった。




