表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/62

第12談

泰然(タイラン)の住まう黎明山は、誰よりも太陽に近い場所にあった。

黎明山は元は皆と同じ位置にあったのだが、罪人の棲家と言うこともあり、今は移動させられ、ただひとつ、上空にぽつりと浮いている。


日中は山の上に晒され、その身体を太陽に焼かれる責苦を受けているのだから、一番高いところにあるのは当然と言えば当然だ。雪玲(シューリン)峰花(フォンファ)のお陰で暑くも寒くもないが、実際は違うようだ。大気の膜もないこの場所は、太陽光線を直接浴びているようで、師匠である泰然(タイラン)は裸で雨晒しとなっているため、皮膚が火傷を負ったように赤くなっていた。だが仙人の力なのだろうか。火傷の跡はあっと言う間に無くなり、また火傷をくり返えしている。少なくとも雪玲(シューリン)にはそう見えた。


「髪も髭もぼうぼうで、若いんだか年寄りだかも分かんないなぁ」


泰然(タイラン)は仙界きっての美青年よ。仙界に並ぶものなしと言われ、男性でありながら藤の花の美しさに例えられたくらいよ。まぁ、確かに今は見る影もないけどね……」


「イケメンかぁ……イケメンは余り好きじゃなんだよね」


「あら、そうなの?今はともかく、昔は泰然(タイラン)に弟子入りをしたがる道士は多かったのよ」


「だってイケメンって、自分本意なのが多くてさ。女を満足させる前にーーって!また殴った!もう、頭がたんこぶだらけになる!!」


「近づくから、余計なこと言わないように!」


峰花(フォンファ)にギロっと睨まれて、雪玲(シューリン)はぺろっと舌を出す。なんだかんだ言いつつ、この掛け合いは嫌いじゃない。峰花(フォンファ)雪玲(シューリン)がどんなにエロい話を言っても、殴るだけで蔑むことはない。


翠蘭(スイラン)姐姐(ネーサン)とは違う反応だけど、温かさは同じだと雪玲(シューリン)は思う。



峰花(フォンファ)が緩やかに泰然(タイラン)に近づく。

黎明山は山の頂きに棒が刺さっていて、泰然(タイラン)はそこに縛られている。霊力を封じる棒には、東王父によって書かれた罪状が書かれている。


「……泰然(タイラン)、久しぶりね?」


峰花(フォンファ)が話かけると、泰然(タイラン)はその視線を雪玲(シューリン)に向けた。そして唾を吐くように、言葉を吐く。


「それが東王父が言ってた弟子か……くだらん!私は弟子など取る気はない!許されるつもりもない!」


「そう……東王父は宣言をあなたに聞こえるように発言したのね。だけど放たれた言葉は消えないわ。あなたは許された。そして雪玲(シューリン)の師になるのよ」


「帰れ!それにその女とて私が師では嫌なはずだ……私のような、どうしようもない、罪人(つみびと)が師など」


「この子はそんなこと考えてもないわ。むしろ雪玲(シューリン)を弟子することで、苦しむのはあなたかも知れないわ」


「……意味が分からない。私は師などにならぬ!釈面されたなら、十耳(ジュウジ)魔王を倒しに行くまでだ!」


峰花(フォンファ)は悲しそうな表情をする。


「まだ……そんなことを。雪玲(シューリン)、これがあなたの師よ。……って雪玲(シューリン)……何を……見てるの?」


「うーん、体の割には小さいな……って」


峰花(フォンファ)泰然(タイラン)雪玲(シューリン)の視線の先を追う。視線の先には……。



「お――お前!女のくせに、どこを見てるんだ!しかもまだ小娘のくせに、じっと見過ぎだ!」


雪玲(シューリン)はまだ、そんなことを言っているの!それは師弟関係じゃないって言ってるでしょう!」


「えーだって、峰花(フォンファ)様。男と女が同じ屋根の下で暮らすんですよ?間違いなんてありまくるに決まってるじゃないですか。むしろ来いってんだ!こんなところで素っ裸で晒されて、何十年も旱つづきの男なんてもう、獣のように襲ってくるんじゃないかと……あ――、でもなんだろう。全然興味が沸かない。見た目の野獣っぷりは大歓迎なんだけど、なんか興味が沸かない。やっぱ小さいからかな?乳首だって……まだ……っつう――!!イッタ!今のまじ痛い!峰花(フォンファ)様、今の本気だったでしょ⁉︎本気であたしを殺しに来てるでしょ!なに、なに、その目は?怖い――峰花(フォンファ)様――まじ殺そうとしてません?あ、でも……峰花(フォンファ)様のお胸に抱かれて圧迫死させられるなら、死んでも――あ――ゴフっつ……………………」


峰花(フォンファ)の見事な膝蹴りをくらい、雪玲(シューリン)はそのまま雲の上にばたりと倒れる。あまりにもの出来事に泰然(タイラン)はごくりと唾を飲む。なぜならここで誰よりも殺気を放っているのは峰花(フォンファ)だ。今峰花(フォンファ)に逆らうと、何をされるか分からないと泰然(タイラン)は黙り込む。


「――釈面状を……読み上げるわよ?」


「――ああ、分かった」


峰花(フォンファ)が朗々とした声で書面を読み上るのを、師弟揃って静かに聴くしかすべは無かった。

毎日12時に投稿します。

面白かったらブックマーク、下の評価よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ