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恋の始まり

怜編、堂々の開幕です。

学パロでは彼と結ばれるルートが公式となりますが、ほかの人ルートもちゃんと書いていきます。

 休日の早朝、佑夜からメールが届く。

「佑夜兄……?どうしたんだろ……」

 寝ぼけていた涼恵はその内容を確認すると、電気屋に行かないかという誘いだった。

「怜さんと蘭君もついてくるんだ……それにパソコンで何がおすすめか、か……」

 涼恵は寝ぼけながらも「行くよ」と返信した。


 そのあと朝食を食べて、四人で出かける。

「す、涼恵、大丈夫なんですか?」

 恵漣にそれはそれは心配されたが、「ボクがいるから大丈夫ですよ」と佑夜が言ったのでなんとか許可を得た。

「ごめんね、パソコン関係は君の方が詳しいからさ」

 佑夜が謝ると、涼恵は「ううん、久しぶりに見たかったのでちょうどよかったよ」と笑った。

「涼恵って、そんなに詳しいの?」

 怜が尋ねると、「結構なこだわりがあるぐらいには詳しいよ、涼恵と記也は」と佑夜は答えた。

「あー、確かにずっと話してたもんな……」

 蘭は最初に三人で出かけた時のことを思い出す。確かにこの双子はかなり詳しくて蘭では理解出来なかった。

「ここだよ」

 四人が来たのはかなり大きな電気屋だった。

「そういえば、今日はなんでここに来たんですか?」

 詳しいことを聞いていない涼恵が尋ねると、「俺のパソコンが壊れちゃってね……ついでに蘭のパソコンも買おうってことになったんだ」と怜が答えた。

「それで、おすすめを聞きたくてね。佑夜に相談したら涼恵を誘うって」

「なるほど……ちなみに、どんなパソコンを使っていたんですか?」

「中古のものを……」

 そう答えると、「あー、中古かー……」と涼恵は苦笑いを浮かべる。

「中古はあまりおすすめしませんね……壊れやすいですし、下手すれば新品を買うより修理代が高くなりますよ」

 そう言いながら、パソコンを見て回る。

「どんな用途で使いますか?」

「小説を書いたり調べものをしたり……あとはバイトで使ったり、かな?」

「ゲームとかは?」

「あんまりやらないね」

「だったら……」

 涼恵は怜の予算と使用状況を聞いて、店内を回りながらおすすめを選ぶ。

「このパソコンなら値段にしてはスペックもいいですし、軽いので持ち運びも楽ですね」

「なるほど……」

「蘭君はそんな感じのがいいの?」

「オレは……」

 涼恵は蘭の方も聞き、そっちのおすすめも選んだ。

 そうして二人の買い物が終わり、たまにはもう少し出かけようとショッピングモールに向かった。

「でも、本当に詳しいんだな……」

 蘭が涼恵を見ると、「まぁね」と笑った。

「うちにある機材は基本、私が選んでいるからね」

「そうなんだ?」

「うん。だからそれぞれ使いやすいものが渡っているんだよね」

 佑夜も頷く。森岡家は主に情報管理をしている。それは守護者である祈花家と高雪家も同じことで、だからみんなに使いやすいものが渡されるのだ。

「へぇ……そんな子に聞けるなんて運がよかったよ」

 怜が笑うと、涼恵の心臓が高鳴った気がした。


 寮に戻ると、「ごめん、ネットに繋げるの手伝ってくれる?」と怜に頼まれた。

「分かりました。記也は蘭君の方をやってくれる?」

「了解!蘭、行こうぜ!」

 蘭を弟に任せて涼恵が怜の部屋に行くと、意外ときれいにしているに驚いた。

「きれいにされているんですね……」

「俺もきれい好きでね。まぁ、涼恵ほどじゃないけど」

「そうなんですね。確かに、精密機械にはほこりとか天敵ですからね」

 涼恵は笑いながら、設定をしていく。一時間もかからず、すべての設定を終えた。

「早いね……」

「全部の設定、私がやったぐらいですから」

 それを見ていた怜の呟きにフフッと笑った。涼恵もだてにずっと引きこもっていたわけではない。ちゃんと出来ることはやっていったのだ。

「……今日はここで小説書く?」

「え、いいんですか?」

「うん。椅子は持ってくるから、座ってて」

 そう言って怜は一度部屋から出た。

(座ってていいって言われても……)

 さすがに怜の椅子に座るわけにはいかないし……と考えて、涼恵はベッドに座る。

 少しして、怜が椅子を持って入ってきた。そして涼恵を見て、

「別に、俺の椅子に座っててよかったのに」

 と言われた。涼恵は「いえ、さすがに人の椅子に座るわけには……」と困ったように答えた。

 男のベッドに座るという意味を理解していないな……。

 きょうだいや幼馴染達に丁寧に囲われていたから危機感がないのかもしれない。

「それに、女の子がきょうだいでもない男のベッドに座るのはあまりよろしくないな」

 危険性を教える意味合いも込めて、椅子を置いた怜が涼恵の顎をクイッと上げ、

「男はみんな獣だからね、何かされてもおかしくないよ?」

 儚く美しいその瞳に、涼恵は頬を染めながら「は、はい……気を付けます……」と頷いた。

(うぁ……き、きれいな空色の瞳……)

 それに見とれていたが、不意に怜は離れ、

「ほら、早くやろうか」

「は、はい」

 誘われ、涼恵は椅子に座った。

(い、いい匂いだったな……)

 怜は冷静を装っているが、実はかなり動揺していた。

(お、女の子、なんだな……というより、さっきのが恵漣にバレたら……)

 そんなことを思いながら、二人で小説を書いていった。


 夕食の時間になり、二人は食堂に向かう。

「うーん……なんか胸騒ぎが……」

「そう?そんなことは……」

 涼恵の言葉にハッとなった怜は「ちょ、ちょっと待っててね」と慌てて食堂に向かった。

 ……すでにそこは、大惨事となっていた。

(……ヤバイ……これを涼恵が見たら鬼神を引き連れてきてしまう……!)

「あ、怜さん!すみません、涼恵を連れてしばらく外に出かけてくれませんか!?片付いたら連絡しますから!」

 遠くを見つめる怜に佑夜が汗を流しながら言った。

「どうしました?何か問題が……?」

 涼恵の声に我に返った怜は「ま、まだ出来てないって!しばらく俺と出かけようか!」と慌てたように提案した。涼恵は少し不思議そうにしていたが、

「……?はい、分かりました」

 では、準備してきます、と涼恵の足音が遠くなっていった。それに胸を撫でおろしながら、怜もすぐに出かける準備をした。

 二人で近くのデパートに向かうと、ぬいぐるみが目に入った。

「あ、可愛い……!」

「涼恵、ぬいぐるみ好きなの?」

 怜がそれに気づいて、声をかけると「はい、いいですよね、ぬいぐるみ」と笑った。

「そうだね。あ、俺、これ好きかも」

 怜が亀のぬいぐるみを見て、同じように笑った。

 ワイワイと話していると、肩をぶつけてしまった。

「あ、ごめんなさい」

「俺の方もごめん」

 そうして目が合うと、自然と近付いてきた。


 佑夜から連絡があり、怜は涼恵に声をかける。

「帰ろうか」

「は、はい」

 涼恵は怜の後姿を見ながら、頬を染めた。

(と、年上の人ってずるい……私だけが意識しているみたい)

 そんなことを思いながら。

 ちなみにその時の怜は、

(なんで抵抗しなかったんだろ?無理やりやっちゃったよね。いやでも嫌がってなかったような?でも涼恵ってそういうのよくわかっていない節があるしうーんとりあえず恵漣に殺される覚悟はした方がいいかな?嫌だなぁ、怖いなぁ……)

 実はそこまで余裕もなく、そんなことを考えていた。この男、こう見えて恋愛経験などないのである。

 寮に戻ると、妹と希菜が涼恵に引っ付いてきた。

「涼恵さん!」

「お姉ちゃん!」

「「一緒に食べよう!」」

 そして、互いの言葉にに火花を散らせる。

「亜花梨ちゃんは昨日も一緒だったでしょ!」

「わたしのお姉ちゃんだもん!いいじゃん!」

 涼恵を取り合うケンカが始まってしまい、当の本人は苦笑いを浮かべた。

「二人とも、一緒に食べようか」

 代替案を出すと、目を輝かせて「いいんですか!?」と涼恵の方を見た。

「うん、ケンカする方が嫌だもん」

「ヤッター!」

 二人が涼恵に抱き着いていると、今度は違う問題が出てきた。

「ねぇねぇ、誰が涼恵さんの膝に座るか勝負しよー」

「「乗った」」

 愛斗の提案に真っ先の乗ってきたのは兄と弟。

「ちょ、ちょっと。涼恵さんも困るでしょ、愛斗」

「そうだぞ、涼恵もなんか言っていいんだぞ」

 佑夜と蘭が止める。しかし愛斗が聞くわけもなく。

「俺達は座れない気がするんだけどなー」

「その場合は涼恵さんを乗せるとか?」

「乗った」

「乗るな!バカ会長!」

 啓もノリノリだ。それに怜を含めた三人はため息をつく。

「だから問題児って言われるんですよ……涼恵、嫌なら断った方が……」

 怜が涼恵の方を見るが、

「……腹をくくろう……」

「武士かよ!?」

 涼恵の反応に蘭がツッコミを入れた。

「まぁ、愛斗君は私が本当に嫌だということはやらないからね」

「それもそうか。でも無理しちゃだめだからね」

 佑夜も手のかかる弟を見るような瞳で愛斗を見ながらため息をつく。


 それから一時間後、

「すずえ~……」

「……兄さん、お酒飲んだね?」

 兄が涼恵に絡んでいた。「お酒弱いんだから、あまり飲んじゃダメだよ……」と困ったように笑っていると、

「涼恵は強いんだな」

 孝に言われ、涼恵は首を傾げた。ちなみに彼は、顔が赤くなっているが酔っているわけではない。

「涼恵の飲んでいるそれ、ワインだぞ。恵漣が注いでたな」

 その言葉に、涼恵は黙ってしまう。そして、叫んだ。

「未成年にお酒を飲ませてはいけません!」

「いや、俺に言うな……」

「誰だここにワインを置いたバカは!」

 佑夜の言葉に「オレだ」と愛良がケラケラと笑いながら手を挙げた。いやお前も未成年だろとかいろいろ聞きたいことがあるが。

「なんでここにいるの?君」

 怜が尋ねると、A氏は「森岡きょうだいに酒飲ませたらどうなるか気になった」と犯行を認めた。

 そのあと、愛良は蓮に説教されながら連れていかれた。

「あ、もしかして……」

 ハッとことの重大さに気付いた涼恵が弟と妹の方を見る。

「すず姉~」

「おねえちゃ~ん」

(やっぱり!)

 予想通りだった。実は森岡きょうだい、涼恵以外は酒に圧倒的に弱いのだ。なぜそれを知っているのかって?間違えて飲んでしまった時があるからだ。

「どうする?」

「……一応、部屋に連れて行こうか。これ以上お酒を飲まないようにね」

 佑夜の質問に、涼恵はあきれながらそう答える。

「俺も手伝うよ」

「ありがとうございます、怜さん」

 涼恵が亜花梨を、佑夜が記也を、怜が恵漣を支えて、涼恵の部屋に連れて行った。

「それじゃ、何かあったら呼んでね、涼恵さん」

 三人をベッドに寝かせると、佑夜は先に戻った。恐らく自分の兄や幼馴染が暴れないように見張るためだろう。

「水を持ってきますね」

 部屋の主も部屋から出た。それを見送っていると、不意に服を掴まれた。

「記也?」

「死なないで……おねえちゃん……」

 どうやら寝ぼけて姉と間違えているらしい、彼は涙を流しながら懇願した。

 ――多分、あの事件の時のことなんだろうな……。

 そう思って、怜は記也の手を優しく握った。

「……大丈夫だよ」

 そう言い聞かせながら。

 数分後、涼恵が水を持ってくると、

「……あら?珍しい。寝ているなんて」

 怜が記也の手を握ったまま寝ているところを見て、小さく笑った。

 起こすのも悪いと涼恵はソファに座り、本を読んだ。

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