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事故現場
「芽衣、ここが事故現場だよ」
北柳通りに戻り、私たちは『一の湯』の前に来ていた。
「王橋で写真撮影していた時に、道路へ出過ぎてしまって。ひかれたの」
事故の日を思い出し、激しい吐き気と喪失感が襲いかかってきた。
それでも、向き合わなければいけないんだ。覚悟を決めないと、先へ進めないんだ。
「そうだったんだね!」と芽衣は言ったあと、目を瞑り、手を合わせた。
その姿を見て、私も目を瞑り、手を合わせた。
どれくらい手を合わせていただろう。背後から鋭い目線を感じた。振り返ると、誰かが慌てて建物の裏へ隠れるのが見えた。姿を捉えることは出来なかった。
「ん? どうしたの! 愛菜!」
「いや、大丈夫。ごめんね」
「そっか! そういえば、もう15時だね! 旅館に向かおっか!」
「うん!」
時折、後ろを振り返りながら、北柳通りを歩み進めた。
じゃあね。蓮……。
柳の木が揺れていた。私に向かって手を振っているように見えた。