打ち明け
私は、全てを芽衣に話した。
芽衣は最後まで余計なことは話さず、最後まで聞いてくれた。
話していくうちに、心の中で沈んでいた錘が引き上げられたような気がした。
「そっか……3年前に彼氏さんとそんなことが! 残念だったね!」
芽衣が口を開いた。
「起こってしまったことはどうしようもない! 過去は取り戻せない! でもきっと、出来ることがあるはずだよ!」
「私、どうしても行きたいところがあるの。玄武洞に行きたい」
「玄武洞?」
「城崎温泉の近くにある、国の天然記念物だよ。石言葉が『生命力を高め、魔を寄せつけない』で、パワースポットとしても有名なの」
「そんな場所があったんだ!」
「事故のあった日から、私は立ち直れていない。時が止まったままなの。だから、玄武洞で、強く生きる力を貰いたい。立ち上がらないといけないんだ」
「そっか! それは絶対に行かないとだね!」
芽衣は、ぬるそうなコーヒーを口にした。
「実はね、カニのところでテンション高くしたりして、変にふざけていたのも、愛菜を元気付けたかったからなんだよ!」
「そう……だったんだ」
「最近、本当に愛菜が元気無くて心配していたんだよ? 元気が無い時は、美味しいものいっぱい食べて、温泉に浸かるのが1番じゃない!? ゆっくりリフレッシュして欲しかったから、今回の旅行を計画して誘ったの!」
芽衣は今まで本当に何も知らなかったんだな。ただ私を元気付ける為に、城崎温泉旅行を計画してくれたんだ。
「私ね、旅行に誘ってくれたの、嬉しかった。3年前の事故現場へ行くからこそ、踏み出せるキッカケが出来ると思った。『運命』だと思ったんだよ?」
「運命だってそんなぁ! 温泉が入れてご飯が美味しい場所で選んだだけなのに!」
「自分を変えられるキッカケを与えてくれてありがとう。芽衣」
「そんなぁ……じゃあ素直に感謝を受け止めておこうかな! こちらこそ来てくれてありがとう! 愛菜!」
芽衣は、残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
「今日は、この後、温泉に入って満喫しよ! 玄武洞へ行くのは明日にしよ! パワーを貰って、消えないうちに持って帰らないとだ!」
「そうだね。今日は長旅で疲れたし、温泉に入ってゆっくり過ごすことにしよ」
まだ1口も飲んでいなかったコーヒーを一気に飲み干し、私は席を立った。