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城崎ガールズ  作者: モリオ
16/17

決死の覚悟

「着いた! 玄武洞前だ!」

雨足が強まる中、玄武洞公園駅に着いた。目の前には玄武洞ミュージアムもある。

バスの扉が開くと、雨水がバスの中へと入ってきた。

この雨の中を歩くのか……と思うと、逃げ腰になってしまう。

それでも、行かなければいけないんだ。

「愛菜! 本当に、この中を歩くんだよね?」

「うん。歩く。それが私がやらなければいけない『覚悟』だから」

「分かった! 私も着いていくね!」

バスを降り、歩みを進めた。玄武洞公園に入り、前へ進んだ。

風の勢いは奥へ進むたびに、強くなった。

「あっ!」

芽衣の傘が上空へ飛ばされた。傘は天まで上がり続け、見えなくなった。

「もうヤダよ〜〜うわぁぁ〜〜ん!」と、芽衣は大声で泣いた。

芽衣には本当に悪いことをした。謝らなければいけない。

結局、私の傘に芽衣も入れ、歩みを進めた。雨の勢いが凄くて、傘が意味を成していなかった。全身ビチョビチョになった。

少しずつ、前へ前へ歩みを進めた。そして遂に

「着いた! 玄武洞だ!」

石で出来た大穴が、そびえ立っていた。

『生命力を高め、魔を寄せつけない』という石言葉の通り、どっしりしていた。昔から、城崎にいる番人のようだ。

「やっと、辿り着いた」

私は今にでも倒れそうだった。意識が朦朧としている。

どこからか、声が聞こえた。

「愛菜ちゃん。強くなったね」

ブワッ

声の方向を振り向こうとする前に、一面が白い濃霧に染まった。横にいるはずの芽衣が見えない。

雨は止んだのだろうか? 自分の体が濡れすぎて、雨に打たれているかどうか分からない。

「愛菜ちゃん」と後ろから声が聞こえた。

振り向くと、蓮が立っていた。

「久しぶりだね」

「蓮……生きてたの?」と私が言うと、蓮は首を横に振った。

「俺は3年前に死んだよ。今、目の前にいるのは、自分の意識を実体化させているからなんだ」

「へえぇ……」

「実体化させるのに凄いパワーを使うんだ。今日、パワーを使い果たしてしまうから、愛菜と会えるのは、最後だ」

「……難しいこと、よく分かんないや」

信じたくないだけだった。蓮と本当のお別れをするなんて、嫌だった。

「もう一度だけ、愛菜に会いたかった。そして、伝えたかった」

風が吹いてきた。お別れが近いような気がした。

「ありがとう」

「幸せになってね」

強風が襲いかかった。立っているのに必死で、目を開ける余裕も無くなった。

「蓮〜〜〜〜〜〜」

返事は無く、風の音しか聞こえなかった。

霧は風に乗って、天へ羽ばたいた。そして、消えた。蓮も一緒に乗っているのだろうか。

強風が収まった。目を明けると、日差しが舞い降りた。空を見上げると、雨雲は消え、雲一つない青空が広がっていた。

「愛菜〜〜!」

振り返ると、涙顔の芽衣が走ってきた。

「無事で良かったよ〜〜! 怖かったよ〜〜! うわぁぁん!」

芽衣は私に抱きついた。私もそっと抱き締め、芽衣の頭を撫でた。

そして、一緒に泣いた。

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