予期せぬ大雨
朝食を食べ終え、チェックアウトを済ませて旅館の外へ出た。
雨だ。予報では晴れだったのに、大雨が降っていた。
今日は玄武洞へ行かないといけない。
「予報では晴れだったのに、雨降ってんじゃん!」
「予報も変わってる……突然の雨雲が発生。いつ止むか分からないんだってさ。明日まで続くかもって」
皮肉なことに、雨の勢いはどんどん増していった。
「凄いよ! 雨の勢いが強すぎて、川になってる!」
ドシャーーン!
雷が鳴った。近くへ落ちたらしい。
「キャァ」と、思わず声を出した。私は昔から雷が苦手だ。
自分に雷が落ちる可能性もあることを考えると、警戒せざるを得ないのだ。
「これ、行ったら危ないかな……?」と、芽衣は聞こえないくらいの小声で言った。
「え……?」
「だって、しょうがないじゃん! 危ないよ。洞窟でしょ? もし向かっている途中で事故でもしたらどうするのさ。彼氏さんと同じ運命を辿ることになるよ!」
「それでも」
「え?」
「それでも、行かなきゃ」
「私、玄武洞へ行くことで、初めて変われる気がするの」
「その気持ちさえ持ってれば充分じゃん! ちゃんと向き合おうとした愛菜は偉いよ! もう、それで良いじゃん! 本当に危ないから、やめよ?」
「ごめん。絶対に、今日行かないといけないの。芽衣が行かないなら、私1人で行くよ」
昨日、柳通りで蓮の幽霊を見た時「玄武洞で待ってるね」と言っていたから。例え霊界からの誘いだったとしても、行かないといけない。
「愛菜……」
「ごめんね。芽衣。行かなきゃ。行かないと、絶対に後悔するから」
私はバス停へ向けて歩みを進めた。
「待って、待ってよ! 私も行きたい!」
「芽衣……」
「せっかく一緒に来たんだもん! 最後まで一緒にいようよ!」
「うん。分かった」
私たちは傘を差して歩き、バス停まで歩みを進めた。




