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城崎ガールズ  作者: モリオ
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突然の出来事

2019年9月 20時頃 平穏な日々の中で、突然起こった。

私たちは『一の湯』の前にかかっている『王橋』で、記念写真を撮影していた。

「はい! チーズ!」

パシャリ

「ハハッ。愛菜ちゃん。またアゴに梅干し出来てるよ〜」

「んも〜。しょうがないじゃない。だって意識しちゃうと、自然に出来るんだもん」

「じゃあさ、撮る時に『ニー』って言ってみなよ。口を閉じているより、良い写真が撮れるよ」

「そっか。じゃあ次はそうしてみようかな」

蓮と話をしていると、10歳ぐらい歳上のお兄さんが話しかけてきた。

「あの〜。すみません。お二人の写真、撮りますよ。その後、僕の写真を撮っていただいても良いですか?」

「良いよ。じゃあ、俺のスマホでお願い」と、蓮はカメラを起動させ、お兄さんにスマホを渡した。

「ありがとうございます! 準備が出来たら声をかけてください」

お兄さんは嬉しそうな顔で、蓮のスマホを構えた。

「愛菜ちゃん。『ニー』だぞ」

「うん。分かってる」

『ニー』って言いながら写真を撮ったら、笑顔でアゴの梅干しが取れた写真が出来る……か。やってみれば分かるか。

「OKです! よろしく!」

「それじゃあ、いきますよ! はい! チーズ!」

「ニー」

パシャリ

「おお! お二人とも、良い笑顔ですね」

「わぁ! 本当だ! ありがとう!」

「ホント? 見せて」

そこには、見たこともないくらい笑顔の私が写っていた。

「な? こんな笑顔で写真に写る愛菜、見たこと無いぜ?」

「蓮くん。ありがとう」

この写真はプリントアウトして家に飾ろう。辛いことがあっても、幸せな気分にしてくれそうだと思った。

曇っていても、この写真を見たら、晴らしてくれそうだと思った。

「写真撮ってくれてありがとう! じゃあ、お兄さんの写真も撮りますね!」

「ありがとうございます! 川をバックにお願いします」

「分かった! 全身が入るように……っと。ちょっと下がるね」

その時だった。不吉な音が聞こえてきたのは。

「あれ? あの車、凄い勢いでこちらへ向かってくるね」と私は言った。

心配してお兄さんも「本当ですね。少し離れた方が良いかもしれないです」と言った。

しかし、蓮は「いや、大丈夫だよ。真っ直ぐ通り過ぎる車ばっかりだし。こっちには来ないって」と言った。

蓮は下がり過ぎて車道へ出ていた。カメラを合わせるのに必死だ。

車はまっすぐ私たちのいるところへ、スピードを緩めることなく突っ込んでくる。

「蓮、危ない!」

ドスッ

重い音が鳴った。目の前で、私の愛していた人が跳ねられた。

転げ落ちた先で、赤い液体が流れた。

「大変です! 応急処置をしますんで、愛菜さんは早く救急車を!」

早く……しなくちゃ……早く……!

そう思いながらも私は、目の前が真っ暗になり、その場へしゃがみ込んだ。


「……はっ。はぁはぁ……」

夢か。また同じ夢を見てしまった。

あの事故から、3年が経った。あの時の光景が、何回も夢としてフラッシュバックされる。見るたびに動悸を伴いながら目が覚める。

棚に飾っている写真を見た。あの日、2人で撮ってもらった写真だ。見たら悲しい気分になるが、飾るのをやめることが出来なかった。彼との思い出が全て無くなる気がして。

時計を見ると、5時ちょうどになっていた。

そろそろ起きなきゃな。起きて準備しないと。

今日私は、もう一度あの場所へ行く。覚悟を決めて。

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