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軍人さんとアネモネ 1
煌びやかな小さな都市は廃墟と化して、どれくらいの時が過ぎただろうか?
突然侵略してきた敵から祖国を守るために志願兵として参加し最前線へと送られた場所は、かつて国境の交易で栄えた街の面影は見るかげもなく地獄の様相に変わっていた。
飛び交う破壊と殺戮の雨は無抵抗で体力もない幼子から老若男女関係もなく命の灯火を無慈悲にも奪ってゆく。
食料も武器も尽きそうになり、今を生きるために見えない敵に怯えつつも何時来るか分からない援軍と輜重隊に淡い期待と諦め半分を抱きつつ、やまない砲撃音が耳障りだった。
絶え間なく遅れて来る揺れが塹壕の壁から土零れを起こし息苦しさを誘う。
「…会いたいな…」
草臥れた紺色の軍服を纏う歳の頃は働き盛りだろうか、煤汚れ無精髭で極度の緊張からのストレスと寝不足からだろうか覇気もなく痩せこけていた。
バックパックを伝い落ちゆく雫が大地へ
染みを作り、水音が彼を眠りへ誘う。