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十五話 拳と涙と眠り

僕の拳は蒼丸へと向かった。辺りに、バンッという音が広がった。


「‥‥っなんで! なんでだよ!? どうして止めたの?!レナ!!」


僕の拳は、レナに止められていた。さっきのバシッという音は、僕が蒼丸の顔を打ち抜いた音では無く、レナが左の手のひらで止めたことによる音だった。


「あれ以上やっていたら君は人殺しになっていたよ。それでも良いのかい?」


「当たり前だろうが!!」


「‥‥本当に、そうなのか?」


「分かるだろ! それなのに‥‥、ふざけるな! ふざけるんじゃねぇよ!!このクズは今ここで、殺さないといけないんだ!」


僕はレナに向かって怒り声をあげた。拳をレナから振り解こうと、腕を振ろうとしたけれど、レナの力は強く振り解くことができなかった。僕の拳を握り続けたまま、レナが僕に言ってきた。


「じゃあゼロ君、どうして君はそんなに辛そうな顔をしているんだ?」


「‥‥はっ、辛そう? 何を言っているんだレナ!!そんなわけないだろ!!」


「いいや、君は辛そうだよ。君も本当は気づいているんだろう? どんなに相手が憎くても、殺すことは間違っているって」


「レナに何が、分かるんだよ!! あいつに殺されかけて、その上僕の全てを盗もうとしていたんだぞ!? ふざけるなよ! ふざけるなよっ‥‥!」


僕の声がだんだんと掠れていった。僕の目から涙が溢れてくる。レナがさっきよりもより一層、優しい声で僕に言ってきた。


「君がどう思っているかなんて私には想像もつかないよ。けどね、君に寄り添うことは出来るんだよ」


そう言ってレナは僕の拳を放し、僕の頭を撫でた。僕は既に涙が溢れて止まらなくなっていた。


「本当は分かってるんだよ‥‥、間違っているって。でも、コイツの言葉を聞いて、目の前が真っ赤になって、コイツを殺さなきゃって‥‥!」


僕は泣きながらそう言った。息を吸うと、涙でむせて、嗚咽を出した。僕の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。


「少し、頭を冷やしな。怒りをぶつけたいのは分かる。でも、君ならその怒りを抑え込めると私は信じているよ。私は君を今ここで人殺しにさせたくない」


そう言って、レナは僕を抱きしめた。僕は何も言わずに、ただ、レナの胸で声を出して泣いた。それから、五分か十分か経って、ようやく僕が泣き止んだ。


「‥‥もう大丈夫? まだ泣いていてもいいんだよ?」


僕は涙を拭って、レナから離れて言った。


「うん。もう大丈夫、ありがとうレナ。それと、さっきはごめん。レナに八つ当たりしちゃって」


「それこそ大丈夫だよ。だって私はゼロ君のパーティーメンバーなんだからね!」


そう言って、レナは僕に向かって笑いかけた。


「それで、コイツはどうする? なんなら、私が組合に連行しようか? 私は金級だから、証言すれば勝てるよ?それにさぁ、さっきはゼロ君を止めたけど、本音を言えば私もコイツにはイライラしてるしね」


レナが僕に問いかけてきた。しかし、僕は一つの疑問が浮かんだ。そういえば、どうしてレナがここにいるんだろう?


「ねぇ、レナ。そういえばなんだけど、なんでさっき別れたはずのレナがここにいるの?」


「!!!! ‥‥あのー、、それは‥‥」


レナは、僕から目線を逸らして、しどろもどろとしていた。そんなレナの様子を見て、僕は更に問い詰めた。


「それは?」


「君の家を見つけるために、尾行してたの!!」


レナは恥ずかしそうに、顔を赤らめてながら早口で言った。それを言って、レナは顔を押さえていた。


「ぇ‥‥、それってストーカーじゃ‥‥? ‥‥まぁでも、レナがいなかったら、僕は止まらなかったか‥‥? うーん‥‥、その件は何も聞かなかったことにするよ」


僕は、レナの行動に驚き、正直少し引いたけれど、素直に、レナには感謝をしていた。レナはそれを聞いた瞬間、顔を輝かせて言った。


「ありがとう、ゼロ君!!」


レナが僕の手を掴んで、ブンブンと振った。


「だいぶ話が逸れちゃったけど、コイツはどっかに捨てとくよ。今、組合に持っていって僕の正体とかがバレたら面倒だし。コイツが僕にやったことの証拠もないしね。それに、あそこまで、格の違いを見せつけたんだから、僕を見つけても、馬鹿な真似はしないでしょ。だから放置しておいて大丈夫だと思う‥‥」


「‥‥まぁ、ゼロ君がそういうなら、私は文句ないよ。あっ‥‥でも、少しぐらいいたずらしてもいいよね!」


そう言って、レナは懐から取り出したペンのような物を使って、蒼丸の顔に何かを書いていた。書き終わるとレナは蒼丸の首根っこを掴んで、僕へ言った。


「それじゃあ、私はコイツをどっか適当なところに捨ててくるね! じゃあ今度こそ、お休み、ゼロ君!」


そう言って、レナは蒼丸を引きづりながら歩いていった。その姿を見届けた後、家へと向かった。鍵を使って、家のドアを開けると、わずか二日しか経っていないのに、ひどく玄関が懐かしく感じた。


「‥‥ただいま」


懐かしい家の匂いが僕の鼻を刺した。

誰もいないけれど、僕はただいまと言った。手を洗ってからすぐに、リビングのソファへ寝転ぶと、すぐに眠気が襲ってきた。眠気に抗うことなく、僕は眠りへと落ちた。

僕の長い長い二日がようやく終わったのだった。

少し、遅くなりました。書いてて思いましたけど、レナのストーカーは普通に考えたら超怖いですよね。ちなみに、歩がここで蒼丸を殺してたら本編とは違うifルートに入ってます。ここはかなり大きな分岐点です。

次回は明日更新です

感想やコメントなどお待ちしてますのでよろしくお願いします

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