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十四話 白と赤と殺意

レナと別れてから少しして、僕は商店街を抜け、閑静な住宅街を歩いていた。すると、レティアが話しかけてきた。


——それにしても歩。パーティーメンバーが見つかってよかったな!! しかも金級ときた。頼もしい事この上無い。 ところで、君は、これから何をすべきか分かっているか?


「分かってますよ。僕がすべきなのはパーティーメンバーをまだ増やす事ですよね? 特に、防御に特化もしくは、僕たちを回復できる能力を持ってた人の」


——なんだ、分かっていたか。私の感想としては、早急に、回復役を見つけるべきだな


「ちなみに、理由は?」


——理由としては、デッドエンドを目標としてるなら、そんじょそこらの防御役じゃただの足手まといになるからだな。防御特化の能力は、基本的に、防御力を向上させる代わりに、スピードなどを犠牲にしているからな。もし、君達が防御役を欲しているなら、最低でも金級でないと意味がないな


「でも、回復役を見つかられるかなぁ。付加の能力を持っている人は沢山いるけど、回復に特化した能力は少ないんですよね」


僕は、顎に手を当てて考え込んだ。回復の能力を持っている人は少ない。特に、回復の能力を持って、冒険者のランクが高い人なんて、ほんの一握り程度しかいない。しかし、パーティーには回復役は必須だ。理由として、傷を治すポーションなどはあるが、それだけじゃ回復が追いつかないことが多くある。そのために、回復役をパーティーに入れてカバーするのだ。それに、ポーションで直せない傷でも、回復の能力なら治せる。そのため、回復役は絶対にパーティーに必要なのだ。高難易度のダンジョンを攻略するのには特に。


——そこで提案だが、一度ここのダンジョンではない所に行くのはどうだろうか


「違うダンジョンですか?」


——そうだ。ダンジョンのレベルとしては、シルバーやゴールド辺りに行くべきだな。特に君、実践経験が少なすぎる。今のままじゃ絶対にデッドエンドで死ぬ。だから、経験を積め。それに、ゴールドやシルバーダンジョンがあるところには組合の本部があるだろう? そっちの方へ行けば、回復役も多いだろうしな


レティアが提案してきたのは理にかなっている。しかし、僕には不安があった。


「でも、そんなことをしていたら、レティアを助けるのに、時間がかかっちゃうんじゃ‥‥」


——今更、そんな少しの時間の誤差程度変わらないよ。それに、私を助けにきてくれようとしてる君をみすみす死なせるわけにはいかないしな。だから、私のことを気にしすぎるな


「わかりました。それじゃあ明日、レナにもそのことを言ってみます!」


——うん。それで良い


そうこうしていると、僕は自宅へと着いた。僕の家は、一軒家であり、一人で住むには大きすぎるほどの広さであった。それに、近くに他の人の家は無く、周りは公園や道路であった。既に、父さんと母さんが死んだ時の死亡保険で得たお金で、家のローンは完済をしていた。家の柵へと近づくと、後ろから声がした。


「おい!テメェは誰だ? なんであのグズの家に入ろうとしているんだぁ?!!」


僕はその声にゾッとした。その声は僕が忘れたくても忘れられないものだった。その声の持ち主は、僕の幼馴染であり、僕を殺そうとした張本人、西倉 蒼丸 のものであった。僕は怒りと動揺で心が埋め尽くされた。レティアがすぐに僕へ言ってきた。


——おい歩!! 気持ちはわかるが、落ち着け! 冷静に、なれ!!


しかし、その声を聞いても、怒りが僕の心から一向に消えなかった。一向に返事がないことにイライラし始めた蒼丸が僕へと言ってきた。


「おい!テメェ! なんか答えろよ! 」


僕は、怒りを蒼丸に悟らせない様に、ゆっくりと振り返って言った。


「この家に住んでいる人に用事があるんですよ」


「なんだお前。変な仮面を付けやがって。それに用事? それは残念だったなぁ!なら教えてやるよ、ここに住んでいた奴は、ダンジョン内の事故で死んだ。そして、最後にあいつは俺に、『家を君に渡す』と言った。だからその家は俺のものだ。俺のものに許可なく近づくんじゃねぇよ!!」


「は?」


僕は、その言葉を聞いて、怒りを通り越して、頭が真っ白になった。理解ができない。こいつは今何と言った? この家は俺のもの? ふざけるのも大概にしろよ。僕を殺そうとした挙句に、僕のものまでも奪おうとするのか。本当に、コイツは僕と同じ人間なのか?


——歩!! 暴走するな! 今ここで暴れたら、君の正体もバレるぞ! それに、今君がこいつに襲い掛かったら、捕まるのは君だぞ!!


レティアの言っていることは正しい。ダンジョンが出て、世界が狂ったとはいえ、ここは日本だ。憲法もあるし、警察だってある。今ここで、僕がこいつを殺したとしても捕まるのは目に見えている。けれど!! それを分かっていても、怒りを抑えるのは不可能だった。どうしようなく、目の前のクズを殺してやりたかった。


「何を言っているんだ? お前の家だと? ふざけるのも大概にしろよ? ここに住んでいた人、いや、 刻藤 歩 を殺したくせになぁ!!」


「!! テメェは何もんだ? 何を知ってやがる?」


「それに応える義理はないだろ、お前みたいなクズに」


「アア?!!! テメェ俺に喧嘩売ってんのか? 」


「だったらどうすんだ? 刻藤 歩 の様に殺すのか?」


僕がそう言うと、蒼丸は腰に付けていたロングソードに手をかけて、鞘から引き抜いた。


「そこまで、知られてるんじゃあしょうがねぇよなぁ! ところでテメェのランクは何だ?」


「白だ」


「ヒャハハハハハ!! それは残念だったなぁ。俺は赤だ。お前じゃ絶対に勝てないんだよ!」


普通ならそうだ。白と赤では勝負にならない。例え、能力が互角のものでだったとしても、経験などの差を覆せないのだ。それに、冒険者同士のいざこざがあった時、証人がいなかった場合、基本的に、ランクが上の者の証言が信じられてしまう。組合側としては、いざこざで、高ランクの者を手放したくないためであった。僕は無言で拳を握り、胸の前に構えた。


「どうした? 怖気付いたのか?」


蒼丸には、僕のした構えは虚勢を張っていると見えたのだろう。だから、僕は言った。


「喋ってねぇで、かかってこいよ。クズ!!」


それを聞いた蒼丸は顔を真っ赤にして、怒鳴った。


「テメェはここで絶対に殺す!! 俺の能力で、少しずつ痛ぶって殺してやるよ!! 能力、物理干渉(リアル ブレイク)!!」


そう言って、僕の周りの重力を増加させた。しかし、僕の姿は既に、そこにはなかった。蒼丸が能力を発動させるのと同時に、僕は走り出していた。


「はっ? 何だと!」


蒼丸が驚いている一瞬の内に、僕は蒼丸の懐へと入った。そうして、右手を振りかぶって、蒼丸の顔面に拳を叩き込んだ。


「殺してやるよ!! このクズが!」


ベキッっという鼻が折れた音共に、殴られた蒼丸の身体は後ろは吹っ飛び、公園の柵に叩きつけられた。


「グハッッッッ!! ウ、、アア、」


叩きつけられた蒼丸はうめき声を上げた後、静かになった。蒼丸の顔は鼻血が出ており、既に白眼を向いていた。僕は心の底からガッカリした。何だこの程度なのかと。僕がずっと敵わないと思っていた奴はこの程度だったのかと。僕はゆっくりと蒼丸の元へと歩いて行き、蒼丸にとどめを刺そうと血の付いた右手を力の限り、振りかぶった。


「死んじまえよっっ!!!!」


——やめろ!! 歩!!!!


レティアの静止の声も僕に届くことは無く、僕の拳は蒼丸の血だらけになった顔面へと放たれた。公園にある時計は10時を指していた。既に周りは暗く、街灯と月の光が僕たちを照らしていた。








謝罪

作者の事情により、一週間程度、更新ができなくなりそうなので、とりあえず、水曜日までは、毎日、更新いたします。


やっと復讐まで行けました。でも、話はまだまだ続きます。

感想やコメントなどお待ちしてますのでよろしくお願いします!

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