十三話 昔と今とこれから
僕が、カツ丼を食べ終わると、レナさんは既に海鮮丼を食べ終わり、残っていたビールを飲んでいた。不意に、レナが僕に問いかけてきた。
「歩君はさ、元パーティーメンバー達に復讐をしたいとは思わないの?」
「復讐したいとは思ってるよ。あいつらを許すことなんて絶対にない。けど、どうするべきなのか自分でもよくわからないんだ。それに、今は、デッドエンドに行くっていう目標もあるしね」
「そっか、まぁ復讐するなら私にも言ってよ。その時は手伝うからさ」
「うん。その時は頼むよ」
そう言って僕たちは笑い合った。すると、レナがビールジョッキを片手に、僕に言ってきた。
「それにしても、デッドエンドに行きたいだなんて、本当に君は面白いね〜。あそこは、場所によってはブラックダンジョンよりも難易度が高いし、モンスターなんて、君が倒したオーガレベルのモンスターがゴロゴロいるのに」
「レナはデッドエンドに行ったことがあるの?」
「私が金級に成り立ての頃に一度だけね。本当に死ぬかと思ったよ。その時私が言ったのはレッドダンジョンのデッドエンドだったけどね」
「えっ?レナのあの能力でも、死にかけたの?」
「うん。私の能力じゃカバーできないモンスターが出てきてね。六人で行って戻ってこれたのは私を含めて二人だけだったよ。残りの四人は、私の前で死んでいったよ。皆んな良い人たちだった」
ジョッキをテーブルに置いたレナは少し悲しそうな目をしながら下を向いて、過去を懐かしむようにそう言った。
「どうしてそんな思いをしてるのに、僕の目標を聞いてもパーティーを組んでくれるの?」
「確かに、それを聞いた時は、びっくりしたけどね。でも言ったでしょ? 君は私にとって重要な人だって。それに、過去は過去なんだよ。どんなに辛い過去があったとしても、それが未来から逃げて良いっていう理由にはならないからね」
レナは、力強い目で僕に言ってきた。正直、僕はレナの強さに驚いていた。レナは精神的にも僕より遥かに強かった。果たして、もし、僕がこの立場だったらレナのように前を向くことができたのだろうか。そんな僕の考えを見抜いてか、レナが僕に言った。
「でも、過去を忘れろっていう訳じゃないよ。過去から学ぶことは沢山あるしね。重要なのは過去と今を混同しないことだよ」
「僕もそうなれるように頑張るよ」
「ゆっくりで良いけどね」
——レナは良いことを言うな。歩。これだけは覚えとけ。どんなに辛くても、前に進め。本当に辛いのは、前に進むことが出来なくなった時だからな
「うん」
そして、僕たちは、これからの指針について話し合った。
「ところで、歩君。これからどうする? とりあえず、君の武器が出来るまでは、ダンジョンへ行かない方が良い?」
「とりあえずはそうだね。あっ、そうだ。レナにお願いをしても良い?」
「お願い? 良いよ良いよ〜。」
「じゃあ、僕に稽古を付けてくれない?」
「稽古? あーー、それはごめん。歩君の頼みだから聞いてあげたいんだけど、私と歩君って戦い方が違うからさ。歩君のお手本になる様な動きとかは出来ないんだよ。ほんっっとうにごめんね」
「そっかぁ」
「でも、私の知り合いになら、歩君と戦い方が似ている人がいるよ。その人に頼んでみてあげよっか?」
「ええっ!! 本当に? 是非お願いします!」
「よし。おねーさんに任せといて〜。じゃあ連絡がついたら教えるね」
「ありがとう!」
話をしていると、もう時刻は9時に差し掛かろうとしていた。もう時刻も回ってきたので僕は外した仮面をつけて、僕たちは、『しんすけ』を出た。会計を済ましてきたレナが後ろから話しかけてきた。
「あゆ‥‥、ゼロ君は泊まるところあるの?」
レナには、事前に外では僕の名前をゼロと呼んでもらうことを頼んでいた。
「あるよ。一回、自宅に帰ろうかなって思ってるよ」
「そっか、じゃあここでお別れだね。また何かあったら連絡してよ〜」
「うん! じゃあまたね」
「じゃあね〜」
そう言って僕たちは別れて、それぞれの帰路へとついた。しかし、この後にまだ、事件が起こることを僕はまだ知る由もなかった。
今回話が短いです。すいません。
次回の更新は明日します。
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