十一話 決着と決断と決意
僕は、武器の代わりに拳を握りしめ、レナさんに構えた。少しの間の静寂の後、突如としてレナさんが笑い始めた。
「フッ、アッハハハ!!!! 君、面白いねぇ〜。私に戦う気はさらさら無いよ。さっきまではごめんね〜〜」
そう言うと、さっきまでのプレッシャーが消え、最初の時のふわふわとしたものになった。
「?? 何を言ってるんです?」
「私は君と戦う気はないよ。まぁ興味はあるけどね。それに、君を捕まえる気もない」
「じゃあさっきまでのアレはなんだったんですか?」
「アレは君を試してただけだよ。君が本当にオーガを倒したのかは分からなかったからね」
「え?? でもなんのために?」
「んーとね、私は君とパーティーを組みたいんだよ。その前に、君の力について知っておきたかったんだよ」
「パーティー?! でも、さっき会ったばかりなのに、そんなことを思ったんです?」
「ダンジョンから出てきた君を見て、感じたんだよ!! 君は私にとって重要な人になるってね! 私の直感だけどね」
レナさんが僕へと近づいて、僕の手をとってそう言った。僕は、レナさんのいい匂いにドギマギしていた。
「じ、じゃあ、さっきまでのは全部芝居だったってことですか?」
「いいや、全部じゃないよ。私が討伐依頼を受けたのは本当だし、君に対して質問があるのも本当だよ。さっきも言ったように無いのは戦う意志だよ。まぁ、さっきので絶望して、真実を言っていたら、本当に戦おうかなとは思ってたけどね〜」
どうやら、僕の選択は間違っていなかったようだった。もし、あの時恐れをなしていたら、本当に僕は終わっていた。僕は、なんとか危機一髪のところで、窮地を乗り切れたのだった。
「ねぇねえ、返事は? 私とパーティーを組んでくれる? 君にとっても悪いことじゃ無いと思うしさ!」
——歩、どうする? 私的には、パーティーを組むべきだ。そもそも、君は、実力のあるパーティーメンバーを見つけるのが目標だったはずだ。信頼は置いておいて、金級とパーティーを組めるなんて願ったり叶ったりなことじゃないか。それに、金級ならば、より多くのダンジョンへ行くことができる。君のランクを上げるのにも丁度いいじゃないか
そう、金級は行くことができるダンジョンに制限がないのだ。ダンジョンはボスを倒せばこの世界から消える。しかし、新しい冒険者の練習や修行場所として、ランクが低いダンジョンなどもボスを倒さずに一定数残しておいてあるのだ。そして、冒険者ランクとダンジョンのランクは基本的に連携してあり、白級だと、ブルーダンジョンまでしか行くことができないのだ。だから、組合に登録をした今、真正面からあのダンジョンへ入る事は出来なかったのだ。しかし、条件を満たした冒険者とパーティーを組んでいれば、一番ランクが高い人のダンジョンまで入ることができる。だから、レナさんとパーティーを組めば、ほぼ全てのダンジョンへ入ることができる。そして、レティアが言うように、僕の当分の目標は仲間を見つけることだった。それに、白級の僕が金級とパーティーを組めるなんて、両手をあげて喜ぶべきことだった。僕の決断は早かった。
「そうですね。僕も、パーティーメンバーは欲しかったですし、よろしくお願いします!」
そう言って、僕がレナさんは手を差し出すと、レナさんが僕の手を握ってきた。
「これからよろしくねぇ!! 」
「はい!!」
「じゃあ、私の能力について、教えてあげるね」
「! ちょっと待ってください。 パーティーを組んだとはいえ、また、信頼も何も無いのに、そんな機密事項を教えていいんですか? もし、僕がその情報を持って逃げたらとかって思わないんですか?」
「逃げる? アハハハ! 大丈夫だよー。逃げるなんて出来ないでしょ? というか逃さないよ?」
レナさんが顔を暗くしてそう言ってきた。
「ああ、そうですよね。ん?」
今、レナさんなんて言った? 『逃さない』って言った? え? ちょっと待って。僕、ひょっとしてこの人とパーティーを組んだの早計すぎた?
——まぁ、なんだ。頑張れ、歩。
レティアが僕に少し同情するように言ってきた。窮地を乗り切れたと思っていたら、違う意味で窮地になってしまっていた。
———2022年 6月9日 この選択が未来が大きく変わる波紋になるとはこの時の俺は露ほども思わなかったのだった。既に運命の歯車は僕が気付かぬ内に回り始めていた。
今回短いです。すみません。
ついに、歩のパーティーメンバーが増えました!! (レティアは除いて)
次回から、パーティーとして、行動していきます。
次回は明後日までに更新します。
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