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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界転生してきたけど、お前の能力って元の世界のキャラクターでいう誰似?

作者: ツッキー

「よっ、暇か?」



 アンティークな雰囲気した店の隅。

 俺は返事を聞かずに向かい側に座った。



「……俺は今、嫁からチョコレートの試作品を貰っているんだ。 暇ではない」


「ココアちゃんついにそんなもんまで作れるようになったか。 ってそうじゃねぇそうじゃねぇ、つれねぇこと言わずにさ、俺のどうでもいい話に付き合ってくれよ」


「どうでもいい話って自分で言ってるじゃねーか」


「いやいや、これはどうでもいいようで、もしかしたら大事な話だ。 そう、俺達異世界転生者に関わる話だ」



 目の前の男は取り憑かれていたようにチョコを貪っていた手が止まる。



「詳しく聞こう」


「異世界転生してきたけど、お前の能力って元の世界のキャラクターでいう誰似?」



 一度思考を止めて、またチョコを口に含んだ。



「本当に、どうでもいいようで、もしかしたら大事な話だな」


「だろ?」


「そうだな……それは、漫画とかアニメでいう『能力』とか『スキル』とかの話か?」


「まぁそうなるな。 もちろん、お前の持ってるそれが(・・・)……例えばキャラの見た目が好きでその延長戦でスキルも好きになって、今のお前の持ってるそれだになったのかもしれないなら、そう答えてほしい」


「そうか、まぁ俺はこれといったものは参考にしていない。 ……が、強いて言うなら」


「強いて言うなら?」


「ピ〇チ姫だな」


「絶対嘘だろ」


 目の前の男は何事もなかったようにチョコをつまみ出した。


「いやいや、マジマジ」


「お前が『いやいや』とか『マジマジ』って同じ単語を繰り返し言う時は冗談って決まってるんだよ」


「とりあえず冗談は最後まで聞いてくれ」


「冗談って言ってるじゃねーか……何がピーチ姫だよ、亀に連れられるだけのキャラじゃねーか」


「あのな? 俺は戦闘中に『浮遊』する。 ピ〇チ姫だって浮くだろ? そういうことだよ」


「理由になってない、ちなみに前世スマ〇ラでなに使ってた」


「メインキャラクターはロゼ〇コだけど、サブとか遊びででピ〇チやアイ〇ラやル〇ージかな」


「キャラの癖の強すぎる、あとメインがピーチじゃないんかい」


「ちなみにお前は?」


「俺か?俺はジョ〇カーとかヨッシーとか? まぁ下手くそだけど」


「……あー」


「なんだよその納得した顔」


「いやいや、なんでもない」


「その顔と声質は『なんでもなくない』って言ってるようなもんだろそれ」


「……マジか、無意識だった。 まぁそうだな、ピ〇チ姫のくだり、もう掘れそうにないから戻っていいか?」


「ちゃんとしたやつ話せよ」



 一度珈琲を飲み、またチョコを一つ口に入れ、よく考えてるのかまた一つ食べた。

 長くなりそうだから俺も一つ食べた。

 甘い。 この世界でチョコレートを再現するなんて、流石ココアちゃん。


「そうだな……なんて言えばいいか、強いて言うなら俺は格闘ゲームのキャラクターを参考にしている」


「格闘ゲームのキャラクターを?」


「そうだ。 浮遊とか無敵バリア張ったり、在り得ないほどの弾幕張ったり、それでいて肉弾戦するのが好きなんだよ。 というか、そういう強キャラ使ってきて勝ってきた。 だから……なんだ?」



 言葉が纏まらないのか、またチョコを頬張った。 試作品何個作っとるねん。



「俺は使っていたキャラクターのシステムや技やコンボを、この世界でも使っているのかもな」


「ふーん、それってスマ〇ラ?」


「色んなゲームだ。 といってもシステム面ではそのゲームは違うが……まぁ色んなゲームだ」


「なるほどねー、だから在り得ない動きが出来たんだ」


「在り得ない動き? 二段ジャンプとか浮遊とかか?」


「それもそうだけど、やばい奴らはそれくらい普通にやるだろ。 お前が一番やばいのは不自然な動きだよ」


「あー、基本コンボか。 まぁ格ゲーって、技を当てたらその後キャンセルしてコンボするから」


「そういうことかよ、それを現実世界でもするなよ」


「キャンセルなんていうシステムがこの世界になかったら終わってたよ。 なんでコンボレートやコンボ補正やゲージの概念ない癖に、おまけに複数のキャラの技使って現実ではありえないコンボ作ってんのに死なないのはおかしいだろ」


「ありえない程殴ったりしてたよね。 ちなみにだけど、もしもゲームだったら何ダメージ出るの」


「さっきも言った通り、コンボレートや……分からないか。 実際のゲームは無限ループを防止するために運営も対策したりするし、それ用のゲームシステムがある。 それが、この世界にはない……つまり、俺が疲れるまでは無限ダメージだ」


「チートじゃん」


「あぁ、格ゲーに俺みたいなやつがいたら速攻でサービスが終了する。 だがこの世界でこの程度のチートは通用しない。 なんで魔力を開放してバースト代わりにしたり、気合でスーパーアーマーみたいな挙動したりで……あれはペース乱された」


「それは、まぁ大変だったな。 結局、剣で首ちょんぱした方が速いっていうね」


「お前は?」


「ん?」


「話を振ってきたお前は、何を参考にしたキャラだ」



 ここまで真面目半分、おふざけ半分で語ってきた顔がこちらを向く。


「そうだなー……なぁ、お前だったらどうボケる?」


「そう聞くならもうボケるな」


「んー……じゃあ真面目に答えるけど、俺は正直、これ(・・)っていったキャラクターとかは思いつかないんだよね」


「自分から話し振っておいて答えはそれかよ」


「いや、でもどこかにルーツはあるんだよ。 あると思うんだよ」


「……お前の能力は『加速』って呼んでるよな。 前世は足早かったとか」


「いや逆、前世は足遅かったよ。 サッカーとかしてたけど、周りよりも遅くてさ」


「そうか……おい待て、ルーツそれじゃないか?」


「へっ?」


「もともと足が遅かったから、なんとなく足が速くなりたいと望んだ。 違うか?」


「あー、それね。 俺もそれ考えたんだけど、あんまそういう感じしなくて」


「じゃあテンプレ質問だが、前世何の漫画アニメゲーム好きだった」


「漫画アニメかー。 一番好きなのは……よつ〇と」


「せめて戦闘系、もしくはそれに近い物」


「えー、じゃあ……、アニメ漫画で暗殺〇室」


「マッハ二十のタコはもう影響受けてる」


「ゲームだと、ソ〇ックとか? 初めてやったゲームだったし、スマ〇ラでもキャラ愛でよく使ってた」


「バチクソに影響受けてるじゃないか。 なんだ? 結局はアニメ漫画ゲームと過去の自分。 能力のルーツとしてピッタリ当てはまってるじゃないか」


「うるせえ! 俺はもっとかっこいい理由が欲しいんだよ! かっこいいキャラがいいんだよ!」


「自分が好きなキャラクターをかっこ悪いみたいな言い方するのだけはやめとけ」


「うぅー……」



 そう項垂れると、いつの間にか片付いた皿を厨房の奥に持っていき、また奥の方からジョッキを二つ持ってきた。


「そういう風に、前世好きだったキャラクターとか特徴、自分のコンプレックスとかで能力が決まる場合も多いだろうな」


「だろうなー」


 ジョッキの中には泡いっぱいのビールが入っており、感謝も何も言わずに俺は喉に通す。


「ぷふぁああぁ……あ、だとしたらさ」


 ビールで冷えた頭に脳が活性化する。


「ココアちゃんはどうなんだ? 本人が言うには「料理する時にレシピが浮かぶ」とか言ってた気がするけど」


「まぁ、俺達もそうだがスキルを使う時はふわっとした感覚だろ。 言語化出来る奴は少ない」


「そうか?」


「お前だって、ただ何となく早く動く、だし。 それでしていることは普通の剣技だ」


「それはそうだな」


「そういうことだ。 俺だって格闘ゲームの動きが出来るなんて言ったが、記憶している強い連携を頭に浮かべて、なんとなく身体を動かしているだけだ」


「それは分かるけど、お前なんとなくで遠距離攻撃出してんの?」


「旅をしていた時も言っていただろ。 なんとなくだって」


「便利な言葉だな」


「一応魔力は使ってるらしいから、遠距離攻撃は魔力使ってる」


 俺は「知らねぇよ」と悪態付きながらため息をついた。


「能力というものはそういうものなんだろ。 ココアだって、チョコを作りたいの思いで材料集めや試行錯誤を繰り返したんだ。 レシピのような、やり方のような、そんなものが頭に浮かんでその通りにやっても上手くいかないなんてざらだ」


「……逆に、俺みたいに単純なスキルだと分かりやすいんだろうな」


「お前は遊〇王でいう昔のパワカ(パワーカード)だな」


「その理論で言うと、お前やココアちゃんはなんだ?」


「俺は多分最近のテーマデッキの核。 ココアはそもそも戦闘スキルじゃないから難しいけど、あったら嬉しいカードくらいか?」


「ドラ〇ンメ〇ドでいうラ〇リーか」


「いや……必須だけどレアリティが低いパ〇ラ……もしくはお片付け……あぁもうめんどくさい。 ココアは可愛いからハ〇キー、シュ〇ラールでいいだろ」


「はいはい、全ての女子はアルティメットレアリティ定期ってね」



「あんたたち、なに永遠とくだらないことで話してんのよ」

「……」


 少し手が空いたのか、厨房に籠ってたココアちゃんとウェイトレスのモカちゃんがつまみ片手にこちらにやってきた。

 二人は双子で、ココアちゃんだけ前世記憶を持つ転生者だ。 そのためか、ココアちゃんは少し性格がキツイが、モカちゃんはとても無口だ。


 といっても、双子揃ってこいつの嫁さんなんだけどね。

 かーっ、片方前世の記憶会っても好みは一緒ってことですかー。 仲がよろしいようでー。

 まぁ実際仲はとてもいいんだろう。 「モカがショートカットだから私も」とか、「髪染めるのは、ココアと一緒がいいから、いい」って前言ったし。

 かーっ。


「どうしたの? そんな顔して。 いらないのこれ?」


「いる」


 まぁしかし、俺に出会いが無いのは俺自身の問題なのだから、このむしゃくしゃする気持ちはこのソーセージでと一緒に腹の中に収めておく。


「で、何の話してたのよ。 後ろの私が可愛いしか聞こえなかったけど?」


「よりにもよってそこだけかよ。 俺達の持ってる能力って何か元ネタがあるのかって話だ」


「元ネタ?」



 俺達はココア達に話していたことを教えた。



「ふーん……つまり、どのキャラからパクったかって話ね?」


「「パクった言うな」」


「私はキャラクターじゃないかな。 前世から料理が好きだったし」


「ほーん」


「今より本格的じゃないけどさ。 おやつ作ったり、自炊したり」


「それじゃあコンプレックスとは逆だな。 普通に好きな物が能力に反映された形だろう」


「ただ、やっぱり能力はその人の前世と強く関りがありそうだな」


「そうねー、私はそんなに漫画やアニメ見てたわけじゃないし、影響は受けなかったかな」


「聞いたか、これが一般女性だ」


「くッ、こんな世界に来た奴はオタクしかいないと思っていたのに……!」


「オタクっていうか、どちらかと言うと中二病の方が近くないか?」


「どっちも同じもんでしょ?」


 ココアちゃんの言葉に俺達二人は目を背けた。

 ビールがもう一杯欲しい。



 この空気に合わないと察したのか、モカちゃんがジョッキを持って厨房の中に戻っていく。

 この中で唯一転生者ではないからな。


「あんた、さっきのビール勝手に持ってきたけど誰が払うのよ」


「もちろん俺が払う。 最近受けたクエスト報酬がそこそこいい金額だった」


「あー、あれか。 転生者の娘を訓練させてくれってやつ。 貴族の子でかなり貰ったやつな」


「そんな面白そうなクエストに行ったんだ。 失礼はしなかった?」


「王城で何を教わったと思ってる?」


「あぁ、久しぶりとはいえ作法は完璧だった。 といっても、貴族の中でもそこまで位が高くない者らしく、王族にする作法をそのまま使って焦られた。 夫人もフランクに接してもらい、その後は二人とも普段のテンションだった」


「そもそもが転生者の娘なんだ。 普通に接した方がお互い仲良くなれたってもんよ」


「ふーん、どんな子だったの?」


 ちょうど、モカちゃんからジョッキが渡される。

 俺達はそれに感謝を一言言いながら一口飲むと、当時の状況を振り返る。


「見た目はこの世界の人の貴族みたいな感じだったな。 ピンクの髪の毛のサイドテールに赤色の目、戦闘用ドレス、とにかく可愛いに全振りしたい感じだったな。あぁそれと『僕っ子』だったな」


「ぼくっこ?」


「一人称が僕って言ってる女性のことを指す言葉だ。 どうやら前世から使ってるらしい」


「ちなみに能力は結構奇抜だったぞ」


「奇抜っていうと、分かりにくい感じ?」


「分かりにくい……分かりにくい?」


「伸縮自在の髪の毛に、その髪の毛が絡めることが出来れば洗脳などの精神系攻撃をすることが出来る、らしい」


「サイドテールがうにゃうにゃ動いてたな」


「確かに奇抜ね。 その子の前世はどんな感じだったんだろ」


「まっ、本人はあまり話したくなさそうだったけどなー」


 転生者同士での会話では前世の話はよくするが、前世で嫌な経験をした者はだいたい話したがらない。

 そういう人は、自分の好きなことは喜々として話、嫌なことは苦笑しながらだったり、誤魔化したりする。


「前世色々あったっぽい結構エグイ能力使う傾向だよな」


 アルコールが回ってきたのか、適当なことを言ったなと自分でも思った。


「確かにそうだな」


「あれ、肯定された」


「……常連さんの話だけど、前世虐待にあってて、復讐するのにピッタリな能力を今世で貰ったけど、親がいい人過ぎて使う機会がないらしいわ」


「エグイ話かと思ったらいい話過ぎた」


「能力は『受けた攻撃をそのまま与える』だって」


「能力は本当にエグイ」


「両親に同じことをさせてやろうって気持ちが見えまくるの最高にエグイな」




 その後も、三人であいつはこうだったなだとか、絶対あのキャラだろという話をしていた。


「あ! いらっしゃませー! っていうことで、私は仕事に戻るから」


「あいよあいよ」


「あんた、モカの事放置してんだから後で遊んであげなさいよね」


「はいはい、言われなくても」


「嫁が二人いたら大変そうですね」


「……お前も結婚したらどうだ?」



 は?殺す。

「ぶっ殺す。」

 声に出ていた。


「表出ろよ、いや、久しぶりにコロシアムに行こう」


「今日は店が混みそうだし、モカとの時間も取りたい」


「酒飲んでる状態で店手伝えないだろ。 後者は知らんいつでも時間取っとけ」


「言ってることが無茶苦茶だ」


 こいつはやれやれと言いながら立ち上がる。



「コロシアム運営も、急に世界を救った二人が戦うことになって可哀そうだな」


「可哀そうなら誘うな。 ……ったく、三十秒で終わらせる」


「俺の速さなら一秒も掛からないぞ」


「初心者狩りの性能してるやつがなんか言ってるな」



 俺は喜々とした表情でコロシアムに向かう。

 こいつはいやいやとして表情でコロシアムに向かう。


 俺達は、世界を救った時も、救った後でもこんな感じだ。

昔構想だけ練って放置していたものを投稿。

何か問題があったら削除します。

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