大陸暦1527年――19 独白
最近は、気を張ってることが多くなった。
思い出は終わったのだ。
あれ以上の記憶は私にはない。
だから落ちるわけにはいかない。
……そのため、睡眠はあまり取れていないけど、どうでもいいことだ。
だけど起きていると、家族のことばかり考えてしまう。
父は、母は、兄は、無事だろうか。
自分がしたことは報告されたのだろうか。
されていれば、自分のせいで家族はきっと窮地に立たされている。
でも、分かるのは、あの人達は絶対に自分を責めることはしない。
優しくて厳しくなりきれない母。
時には厳しく、でもいつも大事なことを教えてくれた父。
妹のことを、自分のこと以上に考えてくれてた兄。
優しいあの人達のことだから、自分のしたことを、たとえ理由が分からなくとも、信じようとしてくれるだろう。
……もう自分が出来ることは、この首を祖国に送り、少しでも家の汚名を軽くすることだけしかない。
*
戦争が終わるのではないか、と誰かが囁きあっているのを聞いた。
あぁ、やっとだ。
もうすぐ――この苦しみからも解放される。




