大陸暦1527年――15 開戦
新人遠征訓練の野営地。
その食堂テントで、私は同期たちと昼食を摂っていた。
わりと和やかな雰囲気の中、雑談していると、一人の男性騎士が慌てた様子でテントに飛び込んできた。
テント内にいた全員が何事かと彼に注目する。
見ると彼の顔面は蒼白で、その手には力いっぱい紙が握られている。
どうしたんだよ、と彼の友人らしき男が軽い調子で訊く。
彼は友人を一瞥すると、意を決したように口を開いた。
――戦争が、始まった。
その言葉の意味を、そこにいる誰もが理解できなかった。
テント内が静まりかえる中、彼はもう一度、訴えかけるように「戦争が始まったんだよ!」と声を上げると、手に持っていた紙を食堂テーブルに広げた。
テント内にいた全員がテーブルに集まり、広げた書面を見る。
そこには、帝国軍、零紅騎士団による国境都市への襲撃、そして占拠と書かれている。
さらにそれは、新皇帝陛下の命により、宣戦布告なしで行われたとも記されていた。
それはつまり、帝国が、星王国に、
私の故郷が、エルデーンの故郷を、侵略したことと同義だった。




