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騎士物語  作者: 連星れん
前編

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33/72

大陸暦1526年――13 本物の騎士


 最近、自分が起きてるのか、寝ているのか、

 白昼夢を見ているのか、夢を見ているのか、

 分からなくなってきている。





 皇都こうとにある零黒れいこく騎士団の兵舎。


 兵舎内の広場で、新人遠征訓練の出発式が行なわれている。

 整列した新人騎士の面前では、リセス伯爵――零黒騎士団長が、新たな零黒騎士となった私たちに激励を送って下さっている。


 初めて見た団長の風貌は、まさに歴戦の騎士そのものだった。

 鍛え上げられた肉体と傷だらけの厳つい顔は、見るものを緊張させるぐらいの威厳に満ちあふれている。

 騎士団長は全員の前で話し終わると、新人一人一人に声をかけ始めた。

 それは左端から始まったので、前列の右端に位置していた私の番はすぐに回ってきた。

 私は何を言われるのかと緊張した。

 周りの新人騎士は騎士の家系ばかりだ。

 そのことを指摘されないかと少し不安になる私に、騎士団長はこう言った。


 ――私は何度か、言ったことがあるのだ。


 何のことか分からず、私は騎士団長を見た。

 騎士団長は厳つい顔に、まるで悪戯っ子のような笑みを浮かべる。


 ――そのがたいで文官とは何かの間違いだとな。


 がたい、そこでやっと父のことを言ってるのだと気づいた。


 ――これで騎士の家系の仲間入りだな。期待しているぞ。


 勢いよく返事をすると、騎士団長は微笑んで頷いた。


 私の気持ちは高ぶった。

 帝国騎士の在り方――吹っ切れたと思っていたその疑問は、士官学校生活でまた大きくなっていた。騎士の家系という名の敷かれた道の上で、ただ流されるように騎士を目指す同級生たちを見て、その思いはさらに強くなった。


 だからこそ、騎士団長のような本物を見ると安心する。

 幼いころ、助けてくれた騎士のように、その立ち振る舞いだけで、私は間違っていないのだと思わせてくれる。


 これでいいのだ。

 過去の歴史など気にするな。

 帝国騎士は――私は野党やならず者、そして瘴魔しょうまから、国を民を守る。

 ただ、それだけだ。






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