大陸暦1522年――10 士官学校
夢を見た。
私は士官学校の自室で手紙を書いている。
入学してまだ数日しか経っていないのに、早速書いている。
もちろん相手はエルデーンだ。
何を書くか迷った挙句、宣誓が上手く言えたことや、初めての騎士剣を与えられたこと、入学前に長かった髪を切ったこととか、何てことのない些細な日常会話になった。
目の前で話せないもどかしさを感じながら、一生懸命、初めての手紙を書いた。
返事が待ち通しい。
*
エルデーンからの手紙は意外と早く届いた。
手紙の封は開けられていた。入学前に懸念していた通りだった。恐らくこちらから出す手紙も検閲されているのだろう。正直いい気持ちはしないけれど、そのつもりでいたので特に驚きはなかった。
彼女からの手紙の内容は、宣誓が上手く言えたことへの喜びや、髪を切ったことへの驚き、あと身体に気をつけて訓練と勉強を頑張ってね、とこちらも何てことのない日常会話だった。
でもそれが逆に、私たちの関係が何も変わらないように思えて嬉しく感じた。
封筒には手紙と一緒に押し花のしおりが入っていた。
彼女の家の庭で育てている花らしい。
教本に挟んで、いつも大事に持ち歩いた。




