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第7話:転生賢者は次へ進む

 ◇


 次は剣技試験。

 この試験は試験官と受験生が一対一で決闘を行い、技術や身体能力を見られるらしい。


 冒険者は細分化された職に就くことになるのだが、第七学院は将来性を重視することから、入学の時点では魔法と剣の総合力で見る。そのため魔法師志望であっても剣技の受験が必須とのことらしい。


 俺としては望むところである。

 例によって、順番待ちの間は先に試験官と戦っている受験生を眺めることにしよう。


 先手は受験生側に譲られるらしい。緊張した面持ちの受験生が剣を両手に持ち、地を蹴った。

 少しは剣の扱い方の心得はあるようだが、動きがまだまだ洗練されていない様子だ。


 バレバレのフェイントをかけると、思い切り剣を振るった。

 もちろん試験官にあたることはない。


 というところまでは良かった。なぜだかわからないが妙に大袈裟な動きで試験官は受験生の攻撃を躱した。

 もっと最低限の動きで良いのに、なんであんなことするんだろう?

 本気でかかってくる受験生に対して失礼だと思わないのだろうか。


 ちょっと失礼な試験官である。本気でかかってくる相手には本気で迎え撃つ。そのくらいの礼節は欲しいものである。

 眺めていた受験生は剣よりも魔法が得意な者なのだろう。

 大した力を見せずに試験を終えた。


「なるほどな、流れはわかった」


 小さく呟き、俺はどのように立ち回るか脳内でシミュレーションしておくことにした。

 俺の順番が来るまでの間、何人もの受験生の戦いぶりを見ていたのだが、どういうわけかなぜか全員魔法師志望の者たちのようだった。


 なんで一人も剣士志望の受験生がいなかったんだろうな……?

 やや疑問を浮かべながら、俺は試験本番を迎えた。


「よし、じゃあ好きな剣を一本選ぶんだ。まあ、受験生なら分かってるとは思うが念のための説明だ」


 受験生は、自分の剣を持ち込むことができない。

 学院側で用意された剣の中から使うものを選ぶという形式である。最終的に選ぶまでの間は素振りをしても良いらしい。

 ……というか、剣選びの段階から試験は始まっているという説もあるとミリアから聞いた。


 俺は品質が良さそうな二本の剣に目をつけた。


「剣って、一本しか使っちゃいけないのか?」


「いや……そんな決まりはないが、んなこと初めて聞かれたな。……べつに、二本使おうが三本使おうが問題ないが、まともに扱えるとは思えんぞ。好きにすればいいが」


「分かった。じゃあこの二本にさせてもらうよ」


「……なかなか面白いやつだな。よーし、じゃあ準備ができたらかかってこい。いつでも大丈夫だぞ」


「あっそれなんだけど、そっちから先に攻撃してもらうことってできないのか?」


 両手に剣を構えながらそう言うと、試験官は『は?』みたいな顔になった。

 先に攻撃してもらって、動きを確かめてから反撃した方が有利なのでそうしたいという申し出だったのだが……俺、なんか変なこと言ったっけ?


「……つくづく変わったやつだな。後悔しても知らねえぞ? 面白いやつは好きだが、生意気な態度は痛い目を見るぜ」


 え、なんか怒らせちゃった!?

 すまんと謝ろうとした瞬間、試験官が攻撃を仕掛けてきた——


 あまりにも遅い攻撃は何かのフェイントだろうか?

 警戒しつつ、俺は無駄のない紙一重で避けきり、試験官の後ろに回り込む。


 真価を把握させないために、あえてノロい動きで対応するとは……ちょっと卑怯だが、この試験官はかなりデキるな。

 要注意だ。


 しかしここからが本番だ。

 俺は打ち合いになることを想定して、強めに試験官の剣を叩いた。

 すると——


 スポーンッ!


 ——と、試験官の両手から剣が明後日の方向に飛んでいった。

 飛んでいった剣は誰もいない場所に落下。


 え……? は? 何が起こったんだ!?

 こ、これは何かの演出か!? 俺は試されてるのか!?


 次の瞬間、どっと他の受験生から声が上がった。


「す、すげえええ!!!!」


「試験官って学院の講師だよな!? それに勝っちゃうってヤバすぎだろ!」


「あの受験生何者なんだ!?」


 え、え……?

 これ、本当に俺が普通に勝っちゃったパターン……?


 武器をなくして茫然とする試験官。


「お、俺の負けだ……素晴らしい剣技だった」


 そう、静かにポツリと呟いた。


「え、ああ……良い試合をありがとう……」


 決闘終了の挨拶を交わして、俺はその場を後にした。

 なんの剣技も使わず単なる身体能力だけで試合終わっちゃったけど、あれで本当に良かったのだろうか……?


 たまたま試験官が弱かっただけなんだろうし、俺の評価には悪影響はないよな?

 試験が試験じゃなくなったのは俺のせいじゃないし大丈夫なんだろう、多分。

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