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第6話:転生賢者は試験を受ける

 ◇


 翌日。

 俺とミリアは早朝から第七学院に赴いていた。


「じゃあ、ここからはお別れですね。一緒に合格できるように頑張りましょう! ……と言ってもユーマの方は大丈夫だと思いますが」


「いやいや、俺はまったくの無対策で受験だからな。どちらかと言うと俺の方がやばいと思うぞ? ま、始める前からネガティブになるってのもアレだしな。俺はミリアが絶対合格するって信じてる。頑張ろう」


「はい!」


 俺とミリアはハイタッチを交わして、それぞれ受験に向かった。


 確か、試験は全部で三回。


 魔法試験、剣技試験、面接——この順番だったはずだ。

 先の二つは分かるとして、まさか面接があるとはな……。俺が一番苦手なやつである。


 ミリアによれば王国には七つの学院があり、それぞれ校風というものがあるらしい。

 俺たちが受験する第七学院は、技能は特化型よりも総合力を問われるらしい。加えて、現時点での実力というよりも将来のポテンシャルに重きを置くと聞いた。

 面接ではその辺を確認されるものになるのかもしれない。


「ま、とりあえず魔法試験だ」


 魔法試験は、広い校庭で行われる。20メートル離れた場所から任意の魔法を放ち、的に当てるというものだ。

 正確性と威力の両方を総合的に見て点数化するとのことらしい。


 俺は指定された受験者たちの列に並び、順番が来るのを待った。

 その間、暇なので他の受験者がどんな魔法を使っているのか眺めておくとしよう。


「次——」


 名前を呼ばれた受験生が的を狙って魔法を放った。

 見たところ、ファイヤーボールか。


 最も基本的な火属性魔法ということもあり非常に扱いやすい。威力だけでなく緻密なコントロールも要求されるこのタイプの試験で使う魔法としてはベストだと思う。


 しかし、受験生が放ったのはなんとも頼りないファイヤーボールであった。


 ヒョロヒョロと不安定な軌道。それだけじゃなく威力も弱めだ。


 金属製の的の端にギリギリ衝突し、ポン! っと音を出した。

 あれはさすがに不合格だろうなぁ。いくらなんでも酷すぎる。


 と思っていたのだが——


 パチパチパチパチ!


 会場から拍手が起こり、当の受験生は満面の笑みでガッツポーズしていた。

 え——? どういうことなんだ!?


 まったく、さっぱり状況が掴めない。

 その後も似たり寄ったりの受験生たちが試験を終えていき、


「次——ヤマモトユーキ!」


 ——俺の番になった。


「なるほど、つまりそういうことか」


 仮説だが、この試験はどれだけ威力を抑えられるかを見ているのだろう。

 威力を抑えるとコントロールが逆に難しくなるし、意識して抑えるというのはやや難易度が高い。


 そういうルールだと分かれば話は早い。思いっきり出力を抑えてファイヤーボールを放つとしよう。

 ミリアも言ってくれれば良かったのになぁ。


 できるだけ魔力を抑えに抑えて、ファイヤーボールを発射する。

 しかし、レベルが高く、スキル熟練度が高い俺にとって抑えると言っても限界があるのだ。


 ドガガガガ————ンッ!!!!


 物凄い勢いで飛んでいったファイヤーボールは的の中心で爆散し、轟音を立てた。

 終わった瞬間、やっちまった——と思ってしまった。


 出力を極限まで抑えたものの、完全にやりすぎてしまった。

 ああ、これはかなり点数が低いだろうな。


 当然だが拍手なんて起こることはなく、皆あまりに俺の技術がショボすぎたからか固まって微動だにしない。

 担当の試験官すらその反応である。


 まあ、試験は残っているし、まだまだチャンスはある。

 万が一点数が低くても、面接で一発逆転のチャンスもあるらしいから望みが完全に消えたわけじゃないしな。


 次の試験は剣技試験だっけ。

 賢者は魔法だけじゃなく、剣の腕も最高峰なのだ。その中でも俺はトッププレイヤー。次こそはちゃんとやろう。

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