支え 【月夜譚No.77】
彼の行動は、いつも想像の範疇を超えている。それが良い方向に働けば良いのだが、悪い方にばかり傾いてしまうのだから、上手いこといかない。
自分が周囲にとってマイナスになる行動をしている自覚は彼にないようだ。彼らしいといえばらしいのだが、その分自由度が増して行動に拍車をかけている気がする。
青年は溜め息を吐いて、遠くに見える彼の後姿を見遣った。黄昏時の色に染まった道の真ん中に立つ彼は、いつも以上にはしゃいで、とても楽しそうだ。後始末をするのは青年だというのに、そんなことは頭を掠りもしていないようだ。
でも何故か憎めないのだから、不思議なものだ。これだけ迷惑極まりない仕打ちを受けているというのに、もしも彼が目の前からいなくなってしまったらきっと淋しいだろうと思うのだ。
青年は人差し指で頬を掻き、そっと足を踏み出した。