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実家で起こる怪な日常

作者: 豊川竜矢

僕には姉がいます。歳は二つ離れていて、今も昔も気が強い。

僕が小学生の時の話です。


その日は学校が休みで、母と父は仕事に出かけていました。

だから昼間、家の中は姉と僕の二人きり。


僕は明るい日刺しの差し込む二階のリビングルームで、一人で遊んでいました。

姉と遊ぶと、必ず意地悪をされるからです。


父に買ってもらった、子供用のペーパークラフトを組み立てて遊んでいました。

切り取り線にそってハサミで紙を切り、説明通りに組み立てるものです。

しばらく熱中して遊んでいましたが、

のどが渇いたので階下に飲み物を取りに行こうと立ち上がりました。


リビングルームの隣は姉の部屋で、ふすまで閉め切られた部屋の中から

おそらく姉が本を読んでいるのでしょう、

時折 ぱらり とページをめくる音が聞こえています。


姉の邪魔をすると怒られること間違いなしなので、

そのまま階下へ行って冷蔵庫から飲み物を取ると

また二階へと戻りました。


それからしばらく一人で遊んでいたのですが、いやに隣が静かなことに気が付きました。

本のページをめくる音と、たまに座り直しているのか

重いものが畳を擦る音がしていましたが

息を付く声などは聞こえてきません。


「ねーちゃん」


何の気なしに、ふすま越しに呼びかけてみました。答えはありません。

怒られるのが嫌なので、ささやき声で呼びかけたのですが聞こえないようでした。


「ねーちゃん!」


もう一度、今度は大きめの声で呼びかけてみましたが、やはり答えはありません。

いつもなら「なに、うるさいんだけど」などと不機嫌な声が返ってくるのですが。


相変わらず本をめくる音は続いています。


何となく不安になった僕は、しばらく沈黙しました。

しかし意を決してふすまに手をかけると、

わざと大きな音を立てて開け、姉の姿を確認しようとしました。

が、…部屋の中には誰もいませんでした。


ただ、読みかけの本が一冊、開いたままの状態で畳の上に置いてありました。


ぱらり


僕の見ている目の前で、本のページがめくられる。

部屋の窓は開いていませんでした。


姉はその時ちょうど塾か何かに行っていて、

午後3時頃になると玄関のドアを開ける音と共に

「ただいまー」

疲れたような姉の声がしました。


僕は昼間、一体誰と過ごしていたのでしょうか。

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