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二周目、本

男が再び気づくと

今度は本になっていた。


そしておそらくここは図書館。


向かいの書棚に

びっしりと並べられている

本を見て彼は確信していた。


このまるで何かの

ゲームのような展開からすると

ここもまた異世界であることは

容易に想像が付く。


前回と同じルールであるならば、

今度は本として

この世界の魔王を倒せ、

ということであろう。


厳密に言えば彼は今

ど直球で本の勇者

ということになるのだが、

本人はそのことに気づいていない。


-


これがゲームであるのなら

それはそれでいいのだが、

今彼は大きな問題に直面していた。


それはこれから

本になった今回を乗り切るのに

とても大きな問題であり

死活問題と言ってもいい。


彼は今自分がなっている本が、

何の本だか分からないのだ。


『自分で自分に

何が書いてあるか

分からないって

どういうことだよ?』


例えば、

背中にタトゥーを入れた人間が

鏡を使わなければ

それが見られないのと同様に、

本となっている彼には

自分に書かれている内容は

読むことが出来ない。


それではこの先どうやって

ここから脱出すればいいのか、

作戦を考えることすら

ままならない。


もし人気がない本で

全く手に取る人が

いないような内容であれば、

石と同じか

もっと酷いことになるかもしれない。


何せビーストやドラゴンに

咥えてもらう訳にはいかない、

図書館であるだけに、

入って来ることも出来ないだろう。


-


しかしそんな彼の心配は

杞憂のものと終わる。


彼の本はそこそこ人気があり

手に取る人は多かった。


その本を読むのは

若い男子が多く、

みな眉間に皺を寄せ

真剣な顔をして

読みふけっていた。


時には、まるで何か

重大なことが書いてあるかの如く

興奮している者もいる。


『この反応、

これは、もしかしたら、

俺はすごい本なんじゃあないか?』


自分がすごい本であることを

誇らしく思う人間の魂という

よく分からないことにもなっていたが。



図書館で本を

立ち読みしている男子が

思わず声を上げる。


「おぉっ、これは……」


『マジ?

そんなすごいこと

書いてあんの?俺』


思わず声を上げた男子の反応に

本になった男の期待値は高まる。


その男子は一緒に来ていた

連れの男子を小声で呼ぶ。


「おい、これを見てみろよ……」


「おぉっ、すごいな……

これはすごいなっ……」


『ヤベェな、これは

俺に書いてあるのは

相当すごいことに違いないな』


本になった男の期待値は

もはやMAX、最高潮。


「……こんなすごい官能小説

今まで見たことないな」


『……』


『え?

官能小説って、何?

もしかしてエロ小説ってこと?


え? 何?

ちょっと待って、

俺エロ小説なの?


え?

俺、エロ小説で魔王倒すの?


ここの魔王って何?

エロ同人誌とか好きなタイプなの?』


期待値のハードルを

上げまくっていただけに

一気に奈落に突き落とされたような

そんな気分の本になった男。


彼は今、

エロ小説が書いてある本の勇者

ということになる。






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