神になった人々
一人の作家が、書くのが面倒になって一人のゲームクリエイターに突拍子もない相談をした。
「……最初に世界設定とキャラメイクして、後は観賞オンリーの箱庭ゲーム?それ、需要あんのか?」
作家の相談に首をひねるゲームクリエーター。
「AIが発達した今なら、本読むよりドラマや映画見るより面白いと思うんだけど」
「普通にVRMMORPGを楽しめばいいじゃないか。自分で動きたくない人が未だに本を読んだりドラマや映画を見るんじゃないのか?」
VRやAIが発達した今現在、違う世界に生きることはたやすくなってしまっている。そんな中でも本やドラマや映画というコンテンツは無くならずにある。
「自分が関与できない、コントロールできない、ただの傍観者の立場だからこそ楽しめるコンテンツだと思う、本やドラマや映画ってのは。ハラハラしたり、なんでそう動くんだとか、ああ、そう感じるのかとかさ。要は他人の行動や思考をトレースするコンテンツだと思うのよ」
「まあ、そうだな。感想書いたり、二次創作があるから、完全に関与しないわけでもないだろうがな」
「ベースだけを作って売るの。そして数値入力とか最初の人間だけ創造出来るようにするの。その一族がどうなっていくのかをただ観察するの。面白そうだと思わない?」
期待に満ちた目でゲームクリエイターを見る作家。
「うーん。一定層の需要は見込めるか?」
「書くのが面倒くさいんだよ!世界とキャラクターだけ作って後勝手に動いてくれたら楽なの!」
「……お前、作家にあるまじき思考だな?」
「書いてると、たまにわく思考だと思う」
「ドヤ顔していうな」
「で、ゲームタイトルは?」
「えっと『神になろう!』はいかがでしょうか?」
「なんで、そこで腰が低くなるんだか……。まあ、確かに創造神になれるわな。いっちょやってみるか」
「それでシステムなんだけどね……」
「なるほど。でもそうするとだな、ここらあたりが……」
延々と世界構築について議論を重ね、やがて最初の箱庭が出来上がった。
「「なに?こいつら食っちゃ寝しかしないんですけど」」
死なない楽園を設定して最初に作った二人。
「パンダは許せても、人だと許せないのはなぜだろう?」
「自分たちに似せて作ったからじゃね?」
「やっぱり死なないってのはつまらんな」
「理不尽さがドラマティックにするんだよな」
「「追い出そうか」」
見てるだけと言った二人だったが、その後ちょこちょこと世界に手を加え始めることになった。
「「見てるだけって難しい」」
結局、二人はさらに試行錯誤して、ようやく見てるだけの箱庭世界を売り出した。
こうして、一人の作家の面倒から生まれた世界は、客という名の神々たちによって様々創造されはじめる。
実際社会では出来ない実験世界も多々作り上げられた。自分たちの世界をより良くするためのヴァーチャルな世界を人々は作り上げるようにもなったのだ。
そして、自分の楽しみを実現するためだけに世界を構築する人もいた。より良き世界もあればより悪い世界も出来上がった。
そして実験を終えたり、飽きれば世界は破棄されていった。
あなたの住むこの世界も、もしかしたらそんな世界の一つなのかもしれませんよ?
今、忙しすぎて自分がものすごく殺伐としてます。許してちょー。