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歌う聖女は金色の獣のお気に入り  作者: 小椋かおる
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第五話 これからの私たちを考える

 これから、どうしようかと言う話になった。

 私たちはこの世界のことに疎すぎるし、何で宗一郎が私の世界にいたのかも分からないし、強制的に呼び出された理由も分からない。


《ご提案、なのですが》


 人馬(ケンタウロス)族の長からすべての権限を借り受けたというレアータが私たちに話しかけてくる。


《もしよろしければ、私たちの里に来ませんか? 人馬だけではなく獣人たちもおりますが、人型の生き物の方がミユキ様も落ち着かれるのでは》


 そう言われて宗一郎を見上げると何故か少し不本意そうな顔をして、私を見つめてくる。何でこんな顔してるのかな? 不思議そうに見つめ返すと苦笑しながら口を開いた。


「美雪姉ちゃんはどう?」


 異世界であるのに言葉が通じるのは何かあるのかなー、なんて明後日のことを考えてると、宗一郎はそう質問してきた。思わず、周りをくるりと見回す。よくよく見てみればウサギっぽい生き物にはツノが生えてるし、なんか凶々しい見た目のトカゲのような爬虫類系統の生き物も見える。ウサギに囲まれてモフモフしながら過ごすのは一日二日ならいいけど、多分飽きる。対してレアータは礼儀がきちんとしているし、私や宗一郎が知りたいことも教えてくれるような気がしている。


「あの、質問なんですが」


 小さく手を挙げて聞いてしまうのは、何となく癖みたいなものだ。


《はい、何でしょう》


 レアータはにっこりと微笑んだ。信用していいと思う。何より宗一郎のことを敬っている気配がひしひしと伝わってくる。


「私、この世界のこと何も知らないんです。いろいろ教えてもらえますか?」


 そう言うと少し驚いたように何度か瞬きをして、先ほどよりももっと親しみが込められた笑顔でレアータは大きく頷いた。


《わたくしでお役に立てることなら何なりと! もし、わたくしの知識で足りぬことがあれば長老方や教授たちにもお力を借ります故》


 おっと思わぬ大事に。

 そんなことを考えていたのが伝わったのか、宗一郎が隣で笑いを噛み殺している。さっきまで泣きそうだったくせに!


《我らの王が帰還を果たされたのです。これ以上の僥倖がございましょうか! 我らは王の御心に従います》


「……うん。良きにはからえ」


 偉そうなこと言ってるけど、これもしかして一生懸命レアータさんに合わせてるのかな? じっと宗一郎を見つめると手のひらでぱたぱたと顔を煽がれた。


「宗一郎?」


「あんまり見つめられると照れる」


 はっ! そうでした。異世界という非日常に感覚が狂ってしまっていたけど、こんなに宗一郎の顔を至近距離でずっと見ることなんて今までなかったかも。言われて私の頬もかっと熱くなる。ひっつき虫がそばにいるのなんて日常になってしまっていたけど、そうだよね。大きくなって高校生になってからはこんなにぴたっとくっついてることもなかった。


「じゃ、じゃあ、離れよっか? ちょっと」


「それはだめ」


 にっこり笑って、ぎゅうと抱きつかれた。なんだもう。何このでっかい犬は。

 そんなやりとりをレアータはにこにこしながら見ている。というか、今更だけどレアータさん、おいくつなんだ。

 金色の長い髪をひとつにまとめてサイドで三つ編みに編んであって、片側だけ結んだ布が豊満な胸を隠している。肌は白磁、瞳はこの森の緑によく似た明るい緑色だ。顔も手もしわひとつない。


《では、里へ移動しましょう。いつ追手がかかるか、わかりませんので》


 唐突にそんな物騒な発言をぶっこまれた。

 追手? 追手って言った?

 ぎゅう、と私に抱きついている宗一郎の顔は見えないので、どんな表情をしているのかは伺いしれない。

 私は私でこれは腹を決めないといけないのかもしれない、なんて考えていた。




出来たら一日一話と思ってますが、気長にお待ちください。

次回はいよいよこの場所から移動します。

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