表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌う聖女は金色の獣のお気に入り  作者: 小椋かおる
3/24

第一話 約束と光に包まれて




 それから、十一年が経過した。




 私はこの前二十八歳になった。

 それでも身長は伸びなかった。

 何も変わりない日々であったと思う。去年突然両親が交通事故で亡くなって、血縁者はだれもいなくなって、一人きりになったのと、突然勤めていた職場が倒産して明日から来なくていいと言われた以外は。

 目まぐるしく変わる環境に、本当にめまいを起こして倒れそうになった。


「美雪姉ちゃん!」


 それを支えてくれたのは、それはもう立派に育った好青年だった。

 宗一郎あれからすくすくと育って、昔天使だと呼ばれた少年はあっという間に大人になった。物理的にもすくすくと育った。なんだ、身長185cmって。話をするときに首が痛くなる。しかもまだまだ成長期なんだって。すごい。


「宗一郎くん」


 軽々と抱きかかえられて、顔を上げるとまぶしいぐらいのイケメン顔が視界に入る。


「なんか他人行儀」


 少し拗ねたようにそんなことをいうから、少し笑った。

 ああ、笑うなんて、いつぶりだろう。


「美雪姉ちゃんが倒れたら、俺が困る」


「あら、いっちょ前になったわね?」


「ほんとだよ」


 そのまま、抱きかかえられて、真剣な顔をされると困る。

 乙女心を忘れたわけじゃないのだ。

 いくら昔からの付き合いで息子か弟かみたいな付き合いをしている仲であっても、イケメンがそんな顔をして困っているとわたしも困ってしまうのだ。

 わたしの髪を愛しげに撫でてくれる指先はすごくやさしい。

 なんとなく、その気持ちを分からないでもない。

 でも、応えるのは、ちょっとだけ不安もあるのだ。

 そっと地面に降ろしてくれて、名残惜しげに指先が髪から離れていく。

 その熱が離れるのは寂しいと思う気持ちはなくもないけれど。


「宗一郎くん、あのね」


 この、自分の中でまだわだかまっている気持ちに名前を付けようとすると、なんとなく不安になる。

 恋とか、愛とか、それとも情とか。

 一体、なんていう名前を付けたらいいのだろう。


「美雪、姉…? ??」


 それは本当に突然だった。

 目の前の宗一郎の足元に金色をした光が広がっていく。

 それは記号や文字や図形を描いて、彼を包み込むように広がっていくのだ。


「!」


 無意識だった、その行動は。

 手を伸ばして、彼に、届けと願った。


「宗一郎!!」


 いつかの日、彼が言った言葉を思い出す。


<<何かあったときは、ぼくの名前を呼んで>>


 その約束は確かに果たされた。

 まばゆく輝く黄金色の光がわたしもいっしょに包み込む。


「えええ???」


 いやな感触ではなかったのだけが幸いだった。

 自分の体にもまとわりついていく光を見つめていると、宗一郎が呆然とした顔をして自分を見ている。

 そして、光が視界をすべて真っ白に染めて、わたしは気を失った。

というところから始まる異世界転移。

ゆっくり進みますがのんびり楽しんでください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ