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歌う聖女は金色の獣のお気に入り  作者: 小椋かおる
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プロローグ 前編 〜隣に天使がやってきた〜

それはとてもよく晴れた朝のことだった。



「お隣に越してきた方よ」


母がそう言ってわたしを呼ぶ。

ちょうど夏休みだったのもあって家でごろごろしていたわたしにとって、それは偶然でもあった。

背の高い女性はわたしと同じくらいの年齢に見えた。綺麗な黄色に近い金髪をしている。青い瞳はスカイブルー。肌は白くて背はすらっと高く、まるでモデルさんみたいだ。


「はじめまして、アニタといいマス」


にっこりと笑うと手を差し出してきたので、握手の意だとんでわたしも手を差し出す。

人見知りのわたしではあるけれどにっこり笑ってうまいこと握手をすることが出来た。

母は隣でそんなわたしの様子を微笑みながら眺めている。絶対、娘が内心困っているのを楽しんでいるよ、この人は。

ふと、視線を感じてアニタさんを見ていた目を下に下げた。

ふわり、と柔らかそうな黄金色の髪が揺れた。

彼女の足に隠れるように小さな人影がこちらを見ている。

しゃがんで視線を合わせるようにすると、少し驚いたのか人影が弾んだ。


「こんにちは」


出来る限りの笑顔で話しかける。


「こんちぁ」


舌ったらずのソプラノボイスが返ってきた。

黄金にも似た薄い色彩の瞳と黄金色のふわふわとした髪、白い肌に整ってかわいらしい顔。

天使はここにいたのか! と彼と二人であったのなら叫びだして不審者扱いされていたことだろう。叫ばなかった自分を褒めたい。


「ダニエル、ダニーと言いマス」


片言の言葉でアニタさんが教えてくれる。

彼ははじめて見たわたしをどこかキラキラとした目で見つめながらこくこくとそれに頷いていた。


「よろしくね、ダニエル」


二人はアパートの隣の部屋に越してきたらしい。

下衆の勘繰りというのをするとしたらシングルマザーとその子なのかなーという感じ。


「あのっ」


ちょっとぼんやりしていたら、ダニエルから声をかけられた。

彼は少し小柄だけど今年小学生になったらしい。


「なぁに?」


「あのっ、名前」


おっと相手に名乗らせて自分の名前を伝えるのを忘れていた。


「わたしは美雪、古里ふるさと美雪みゆきと言うの」


名前を伝えるとふにゃっとダニエルが笑う。かわいいなー。本当に天使みたい。


「みゆきお姉ちゃんは髪も目も黒くてキレイ」


突然褒められた。なんだ、この年の子にこんなお世辞言われるとは思ってなくてビビる。

高校に入っても身長は伸びず147センチしかない小柄な体格も何故か大きくなった胸も自分ではあまり好きではない。目も近眼だし髪は伸ばしっぱなしになってるだけのロングヘアを今日は暑いのでポニーテールにしている。


「《オプスクーリタース》みたい」


何? 謎の言葉を言われたけど、曖昧に笑って誤魔化してみる。ダニエルはいいことを言った!みたいな顔をしてるけど、何だかアニタさんは少し不安げな顔をしているから。

人付き合いは苦手だけど、空気を読む力は人一倍!




それがわたしと彼の出会いだった。

これはここから始まる物語。






突然思い立って書き始めた異類婚姻譚。

わんこ系男子×おかん女子のふたりが幸せになるまでを書くつもりでいます。

のんびりゆっくりお付き合い下さいませ。

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