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60-行き過ぎた献身

《お疲れさまでした、御主人様(マスター)。以上で回想は終了となります。何か補足説明は必要ですか?》


「・・・さっきの回想にはナビが出てこなかったけど?」


《ぁあ、その事ですか。あのあとにリーファ嬢とメア様の打ち合わせに参加するために勝手な事だとは思いましたが、少しばかり御主人様(マスター)の身体をお借りして対応をさせて頂きました。それに御主人様(マスター)はお疲れのご様子でしたので、お休み頂くために深い催眠魔法を施しまして、異論を挟まないように・・・ゴホン。御主人様(マスター)に煩わしい事が無いようにと、その時に私自身の存在や今後の活動についてお話させて頂きました》


「そうなのよ、その時は吃驚したわ! まさかアンタの魂の中にナビみたいな存在がいるなんて思いもしなかったわよ?! それにしても便利よね。自分が眠っている時に代わりに色々と些事をしてくれるなんて・・・私も欲しいわ。そしたら色んな煩わしい事は任せてゆっくり出来るもの」


「・・・そうだね」


「ん? どうしたのアンタ? 元気なさそうだけど・・・」


《どうかなさいましたか、御主人様(マスター)?》


 僕の様子が少し変な事に気付いた二人でしたが、今の僕がどんな気持ちで居るか察せられてしまったら困るのでここは無の境地です。


「いや・・・なんでも。そう言えばここは何処かな? 何処かの部屋って事は分かるんだけど」


 今僕たちが居るのは、何処かの一室のようでした。


《現在、我々はラスベガラに向けて航行中の船内の客室の一つを利用しております》


 周りをよく見てみると、ベットが一つと今僕たちが座っている向かい合わせのソファーに壁側に設えられている化粧台と、まるでホテルの一室のような部屋で割と豪華な内装が広がっていました。


「さっき出発したばっかりだからあと数時間は掛かるんじゃないかしら? それにしても凄いわよね、メア様。こんな船まで所有されているなんて! それにね、メア様ったら・・・」


 前に僕にこの世界について教えてくれた時は、神ギルシュッメアについてはた迷惑な神々の代表みたいに語っていたはずでしたが、今は何処か信仰心すら芽生えたように神ギルシュッメアのことを熱く語りだす、現金幼女様ことリーファさんなのでした。

 本当にこの幼女様のフットワークの軽さには呆れるばかりです。


「・・・だからね、メア様は・・・ってなによ、その顔は? 文句でもあるのかしら?」


「いや、別に・・・っとごめんだけど、少し外の空気を吸ってきても良いかな? 回想の航海で少し頭が回らなくってさ。だからちょっと外の景色を眺めて来ようかなって思って」


「あらそう? そうね・・・私も気晴らしに付き合ってあげようかしら?」


「いやいやいや別に良いから! そ、それにトイレにも行きたいしさ。流石にリーファと一緒には行けないでしょ?」


「あ、当たり前よ! まぁそう言う事なら別に良いわよ・・・いってらっしゃい」


「ぁ、ぅん・・・いってきます」


 どうにかリーファの同行を阻止する事に成功したみたいです。

 ただ何かが引っかかるのか此方を探るような目線を送ってくるリーファでしたが、読心をされたら敵わないので僕の心境は無の境地と言ったら無の境地です。心頭滅却!?

 と心を読まれないために念仏でも唱えようかと思っていたら、この部屋にいるもう一人(一体?)の人物ことエルが同行を願って来ました。


「ますたぁーボクも一緒に行くよ! それとトイレって排泄物の処理だよね? だったらボクが処理する? ますたぁーのならボク大丈夫だよ?!」


「「ぇっ?!」


 ちょ、エル。いまなんて言ったの?! しょ、処理するって・・・まさか!?


「ぁ、アンタ! そんな事をその子にさせてるの?!」


「いやいやいやしてないよ?! 本当だってば! だからそんな悍ましいモノを見る目で僕たちを見ないでよ?!」


 エルの爆弾発言でドン引きのリーファが、僕とエルを交互に視線を向けながらも離れるようにして一歩後ずさり、青褪めた顔をして慄いていました。


「あれ? なんでそんなに吃驚してるの? ボク、なにか変なこと言ったの?」


「へ、変と言うかヤバいと言うか・・・えっとね、エル。そんな事をしちゃダメだよ?」


「ぇ? でもボク前からますたぁーの身体を綺麗にしているよ? だからそれと大して変わらないと思うんだけど・・・」


「「ぇっ?!」」


 さらに爆弾発言が投下されました・・・どういうことだってばよ?!


「や、やっぱりアンタ、その子に・・・ッ?!!」


「いやいやいや待って! 僕そんなこと知らないよ?! ど、どういうことなの、エル? ちゃんと説明して欲しいんだけど」


「んとね。ますたぁーを抱っこしたりして密着している時に、ますたぁーの身体を綺麗にしてあげようと思って、身体に付着した汚れとか老廃物だとかをボクの身体に取り込んでたんだよ?」


「・・・ぇっ、マジで?!」


 こくりと頷くような仕草をするエル・・・そう言えば、エルのあの揺り籠を堪能したあとは妙なスッキリ感と言うかさっぱりとした気持ちの良さを味わえてたんですよね。

 それにこっちの世界に来てから一度もお風呂にも入ってないのに、僕の身体って全然汚れてないどころか嫌な臭いもしたことないんだよね。

 これはファンタジー特有の生理現象排除のご都合主義だとばかり思ってたのに、そんなカラクリがあったとは・・・。


「や、やっぱりアンタ、その子に変なことさせてるじゃないの?!」


「いや僕全然知らなかったし?! え、エル? 次からはそんなことしなくて良いからね?」


 このままだと謂れの無いエルとの仲を邪推されてちゃうよ?!

 それは流石に不味いと僕がエルにもう二度と僕の身体を清めないで欲しいと伝えようとしたのですが・・・。


「ぇっ?! なんでなの!? 嫌だよ、ボク! ますたぁーの身体を綺麗にするのはボクの役目だし、それにますたぁーの身体の一部がボクの中に取り込まれていると思うと、凄くすごぉーく気持ちが良いの! きゅんとするの!? だからますたぁーのお願いでもそれは聞けないの!!」


「「・・・・・」」


 何と言う事でしょうか・・・エルはもう手遅れだというのでしょうか?

 あの純粋で素直で清らかなエルは何処いずこ・・・なにがいけなかったんでしょう・・・やっぱりナビの所為かな?


《流石にそれは酷いと思います、御主人様(マスター)! まぁでも分からなくもないどころか、凄まじく羨ましいのですが?! むむっ、やはり速急に身体を手に入れなくてはなりませんね》


 僕の眷属たちがアレ過ぎてツライ件。


「ハァ~もう良いわよ、ホント・・・とっとと部屋を出て行ってくれるかしら? 久しぶりにアンタのことで頭が痛すぎて少し休みたいわ」


「あんまりだよ、リーファ?! 僕が悪いわけじゃないのに・・・わかったよ。それじゃ外に出てるね・・・行くよ、エル」


「ぅん! ますたぁー!!」


 リーファの同行を無事に阻止出来て嬉しいはずなのに・・・でもなんだろうこのやるせない気持ち・・・部屋から出る際、リーファの僕たちの見る目が完全に汚物を見るそれだったのは気のせいだと思いたいです・・・ぐすん。

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