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55-モラルの欠如した世の中で幼女は何を想う

「ん?こん獣臭い懐かしぃ気配・・・あのにゃんこがわざわざ理由もなく降りてくるわけないわなぁ。いっちょ行ってみよか。うち先に向かうよって、あとから付いてきてなぁ」


「ちょ、待ちなさいよ!」


「待つのじゃシュセン!われはまだ気配察知が不得手なのじゃが?!」


 どういう事よもう!

 あいつの居場所が分かるって言うから、この二人に付いてきたのにあいつのもとに全然辿り着けないじゃない?!

 何やら痴女鬼があいつ・・・アキクンに渡したアイテムに追跡機能があるらしくってそれを頼りに探していたのだけども、その追跡機能が指し示す場所に向かってもアキクンを見つける事はできなかったの。

 それに何故か指し示す場所に近づく度に指定された場所が変わったりして、何度目かでやっと何者かに妨害されている事に気付いたってわけ。

 それで振り出しに戻ってしまった私たちが途方に暮れそうになるのも束の間、急にあの痴女鬼がとある方角を向いたかと思ったら何かを察したらしく、さっきの捨て台詞を残して私たちを置いて先に行ってしまったわ。


「ぐぬぅ。シュセンにしては慌て過ぎなのじゃ!それほどまでに彼奴アキクンが心配だというのか?むむっ、これはうかうかしていたら、本当にシュセンに先を越されるかも知れぬ・・・ってまぁ彼奴は吾の事が好きみたいじゃからな、大丈夫じゃろうて!ガハハハハ!!」


 何なのよこの鬼っ子。急に笑い出して気味が悪いったらないわね。

 この様子じゃ頼りになりそうにないし・・・困ったわ。

 って待って。あの痴女鬼が向かった方角って、確かあの屋敷があるところじゃないかしら?

 あの屋敷なら今は無人だろうし、アキクンを連れ込むにはいい場所かも知れないわね。

 となると可能性は高いわ。それにここでジタバタしてても埒が明かないし、行ってみる価値はあるわね。


「ガハハハッ・・・って、なれどこに行くのじゃ?シュセンが向かった先がわかるのか?」


「・・・ちょっとね。それじゃ」


 この鬼っ子に構ってられないとあの屋敷に向かって走り出す私だけど、それに付いてくるようにして私の横を並走する鬼っ子。

 いまの私は全身に魔力を行き渡らせて身体能力を上げてから走ってるのだけども、問題無く付いてくるわね。

 それに私みたいに魔力を操作している気配が無いから、素の身体能力だけで付いてきてるみたい。流石は鬼の種族ってところかしら?


「いやいやいや待つのじゃ!質問にちゃんと答えておらんし、それと何故にそう冷たくあしらうのじゃ?汝も彼奴を探す仲間じゃろが!」


「あら可笑しいわね?奪うだとか盗賊だとか言ってなかったかしら?そんな子に冷たくあしらうのは当然だと思うのだわ」


「ぬぅお!そうじゃった・・・ッ、し、しかしなアレは汝が彼奴を蔑ろにしよるのが悪いのじゃろが!もう少し彼奴を尊重してやっても良いのではないか?」


「失礼ね、十分してるわよ。だからこうやって助けに向かっているんじゃないの。それにある程度の処遇は私が決める事であって、あなたに指図されることでは無いわ。だって私はアキクンの御主人様なのだから!そう言うわけで、主人として健全にアキクンをアイドルとしてぷろでゅーすしてあげないといけないの!それでアキクンが性転換しようともそれは仕方ないことなのよ・・・きっと喜んで受けてくれるはずだわ」


 ムフンと自信たっぷりに宣言する私。どう考えてみても、私以上に従魔の事を考え導いてあげる主人なんて居ないと思うの。まったく、アキクンは幸せ者よね?


「何がそう言うわけでそうなるのじゃ?!絶対に彼奴が喜ぶわけないじゃろが!それに彼奴は吾に懸想しとるのじゃぞ?それなのにわざわざ女子おなごになろうと思うはずが無いのじゃ!ぐぬぅ、やはり汝の下に彼奴を置いてはおけぬ。彼奴を助け次第、汝からも引き離さなくてはならぬのじゃ!」


「な、なんでそうなるのよ?!これだからお子様は話が通じないのよ!それに懸想ですって?アキクンがあなたのことを想っているわけ無いじゃない?!もしそれが本当だとしたら、何故私の下に戻って来たのかしら?ふふっ、答えは既に出ているのよ。アキクンの主人として言わせて貰うけど、あまりアキクンに近づかないでくれるかしら?アキクンは今から大切な時期に入るの。すとーかぁーの所為で変なすきゃんだるぅとかになって、アキクンのアイドル活動に支障が出たら困るのよ。そんなにアキクンが好きなら、今後はきちんとした正規の手続きを踏んで会いに来てくれるかしら?そうね、握手会ぐらいなら一度ぐらい招待してあげても良いわよ?」


 そうなのだわ。アキクンがアイドルになったらこう云ったすとーかぁーだとかの問題も出てくるわね。

 それに既にメルにも拉致されちゃったりしてるし、ここはきちんとアキクンのぷろでゅーさぁとして、身辺整理と警護について考えないといけないわ。

 ん、これから忙しくなるわね。この一大事業が成功したらまーじぃんがガッポガッポのウハウハで、何もしないでも大金が転がり込む計算なのだわ。

 だからとっととアキクンを見つ出して、すぐにでも彼の国で性転換しないとね。それならメルも諦めるでしょうし、一石二鳥どころか丸儲けで笑いが止まらないわ・・・


「うふっ、うふふふふ、くぅひひひひっ」


「ぬおっ!なんじゃその気色悪い笑い方は?!吾が汝の荒唐無稽な話に呆気に取られておったら、急に笑いだしよってからに。一体何をまた良からぬ事を考えておるのじゃ?!ほんといい加減にするのじゃ・・・って、だ、ダメなのじゃ。何を考えておるのかわからんが、目の焦点があっておらぬのじゃ?!な、なんなんじゃこのわれべは・・・アカンのじゃ。すぐにでも彼奴を助けねば本当に女子にされてしまう!ま、待っておるのじゃぞアキクン!吾が絶対に助けてみせるのじゃあああああ」


 ん?どうしたのかしらこの鬼っ子、急に叫び出したりしちゃって・・・やっぱりすとーかぁーって危ないわね。

 リサが危険視してたのはこういう事だったのかしら?鬼族ってそう言った気質があるのかも知れないわね。

 そうなるとあの痴女鬼も怪しいわ・・・まったく、色んな所で色目を使うんだからあいつは。

 まぁでもアイドルとしての資質が十分備わっているっていう証明かしらね?

 さてとグダグダ考えてたらそろそろあの屋敷に到着する頃だけど・・・アキクンたちは居るのかしら。


「むっ?近くにシュセンの気配がするのじゃ・・・となるとあの屋敷か?!それにこの気配は・・・まさかポチかの?珍しい事もあるのじゃな、ポチが下界に降りてくるとわ。ふむぅ、久方ぶりにあの毛並みを堪能させて貰うのじゃ!にしてもなんでポチが来とるのじゃ?」


 やっぱりあの屋敷で間違いないみたいね。それに何だか他にも人が居るみたいだけど、一体何が起きているのかしら?

 取り合えず、このすとーかぁー鬼っ子よりも先に到着しないとね。魔力をもっと回すのだわ。


「ぬぅお!ま、待つのじゃ?!」


 待ってと言われて待つバカがどこにいるのかしらね?

 レディとして少しはしたないかも知れないけど、ここは譲るわけにはいかないのよ。

 そうして出し抜けに成功して先に玄関前に着いたわけだけど、扉は開け放たれたままみたいね?

 

『ッ!ぁあああああああああああああ?!!』


 ぇっ、この叫び声はなんなの?!もしかしてアキクンに何かあったのかしら!?

 やっぱりもう手遅れで、メルがアキクンに大変なことを仕出かしたのでは・・・でもそうなると、先に行ったあの痴女鬼は一体どうしたのかしら?

 って幾ら考えても仕方が無いわね。取り合えず扉の先に行かない事には始まらないわ。


「ちょっと!一体そこで何を・・・って、あんた何をしているのよ?」


「へ?リーファ?何故ここに・・・ぁ、もしかして助けに来てくれたの?」


「ぇ?そ、そうね。確かに助けに来たわけなのだけども・・・それで一体あんたは何をしているのかしら?」


「ん?それは見ての通り・・・・」


「あ、ぁああああん!!そ、そこはダメです、御主人様(マスター)?!そ、それ以上は・・・ダメぇえええええええ!!?」


 扉の先に居たのは、メルに拉致され御主人様の私に助けを求め続けているとばかり思っていた、アキクン本人だったわ。

 見た限り服装に乱れがなくどうにか間に合ったことはわかるのだけど、それにしてもアキクンが今していることが難解かしら。


「見ての通り、ナビにお仕置き中だよ?」


「ぐきぃ!ご、ごめんなさいなのです、御主人様(マスター)!どうかもうお、御許しくだ・・・さ・・・ッ、うはぁああああん」


 そう言って、ひたすらにあのエルって言うスライムの子を撫でまわしているアキクンが居たわ。


「ちゃんと反省したかな、ナビ?もう次からはこんな事を仕出かしちゃダメだからね?」


「で、ですが、今後の御主人様(マスター)のためにと行ったことでして、完遂した暁にはきっと御主人様(マスター)もお悦びになると・・・」


「まだわかってないみたいだね、ナビ?それじゃ仕方ないよね・・・僕の全力の撫でりんこ術を全て出し切るまでだよ!!」


「ッ?!お、お待ち下さい御主人様(マスター)!!これ以上は本当に・・・ッ、ぁあああああああん」


 何かしらこれ。

 あのエルってスライムの子をアキクンが抱きかかえたまま、撫でたりつねったり時には甘噛みしたりして、弄んでいるようにしか見えないのだけども。

 それにエルって子の様子も変だわ。前は幼くて可愛らしい声音だったと思うのだけど、いまは何故か妙齢な女性の喘ぎ声に変わっているもの。

 一体全体どういう事なのかしら?まぁその辺は置いといてだわ、取り合えず・・・


「ま、まさか御主人様(マスター)から授けられる快楽がこれ程とは想像以上です?!エルは今迄これを味わっていたと云うのですか!?ですが、私には刺激が強すぎで・・・ッ、御主人様(マスター)それはもう撫でりんこじゃありません!甘噛みは卑怯でぇええあああああああ」


「はむはむ・・・ぺろり。真の撫でりんこ術とは、全身全霊を使った妙技では無くてはならないのだよ!?それにしても何だか楽しくなってきたぞい!・・・ってあれ?どうしたのリーファ?そんな気持ちの悪そうな顔をして・・・どこか体調でも悪いの?」


「・・・もいわ」


「ん?やっぱりどこか・・・」


「キモイって言ったのだわ!お仕置きだか何だか知らないけど、その妙な声を出すスライムもアキクンも気持ちが悪いって言ってるの!アイドルはそんなことしちゃいけないのだわ!!」


「き、キモイって酷いよリーファ?!これはれっきとしたお仕置きで僕も仕方なく・・・ってアイドルって何の話?」


「だから・・・私が本当のお仕置きを見せてあげるのだわ!従魔調教術『おいたわダメよ!』」


「ぇ?!な、なんでそうなるの・・・ってあばばばばばばばばばばばば!!」


「ま、待ってくださいリーファ嬢!このままですと御主人様(マスター)に抱きかかえられたままの私にも刺激が・・・ッ、ぁああ御主人様(マスター)の逝きそうで逝けない卓越した技の所為で、敏感ですのぃいいい!もうイっグぅうううううう!?」


「成・敗・☆なのだわ・・・ッ!!?」


 かはっと白目を剥いて気絶するアキクンと妙な叫び声をあげてぐったりとしたスライムは、無事に鎮まったみたいね。

 ふっ、これが本物お仕置きと云うものかしら!

 これからは私がレディとして、そしてこの子達のぷろでゅーさぁとして導いてあげましょう!?


「さぁ新たな幕開けかしら!!おーほほほほほほほほほっ」


 そうして屋敷中に幼女様の欲に塗れた笑い声が響き渡るのでした。。。



「・・・これなんなの?」


「シッです、エリスお嬢様。いまのリーファ様に関わるとロクなことが無い気がします・・・ぁ、でもそうなるとエリスお嬢様の面白痴態が見えるかも知れませんね?・・・いまです!エリスお嬢様!!リーファ様の横にずずいといつものように絡んで参りましょう!!」


「・・・この侍女首にしようかな・・・」


「冗談ですって!エリスお嬢様!!ですからそんな眼で私を見ないで下さいませ?!でないと、でないと・・・ッ、感じてしまいます!!?」


「わたしが言うのもなんだけど、モラルって大切だと思う・・・それを考えて思うの。リーファの真似ばかりするんじゃなくて、こんな駄侍女みたいなダメな大人にならないように真面目にしなきゃって・・・わたし、がんばる。そしていつの日かリーファをきちんとした真人間にしてみせる!」


 一連の事件を垣間見たとある幼女さんが、自分より年嵩としかさを経た大人たちの所業を目にし、志を新たにこのモラルの欠如した世界に挑む事になるのは・・・まだ少し先の未来のお話。

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