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47-ラスボスは突然に

「ッ、流石にこれは幾らなんでも急激に変化し過ぎて無いかしら?!いつもより激し過ぎると思うのだけど、リサどう思う?」


 先程までは、落ち着いた雰囲気だった二人でしたが、メルさんの野生言語化によりこれは只事じゃ無いと認識を改めたようで、戦慄を顔に表し一歩後ずさるように引き気味です。

 その中でありながらも、どうにか活路を見出そうと額に汗を滲ませつつ、リーファがメルさんに意見を求めるように語り掛けました。


「むむっ、こんなメルは初めてだね・・・いつもなら段階を踏んで狂暴化バーサーカーモードになるはずだけど、それよりも更にワンランク上のギアに入ってるねこりゃ・・・さっきの発言を鑑みるに、相当アキクンをお気に召したんだろうね」


「そ、そんな・・・どうにか元に戻す事は出来ないの?このままじゃアイツとんでもない事になるんじゃないのかしら?!」


「・・・正直、私にもわかんない。冒険者時代、ショタ狂い(スモールビッチ)なんて二つ名のあったメルだけど、最後まで逝ったって話しは聞かないんだよね。大体は、メルに捕まった子がマジ泣きしたり、狼狽したりして抵抗を示したりしたから、流石のメルも冷静になれたんだけど・・・今のアキクンの様子だと、寧ろ好ましく想っているみたいだし、それにその事にメルも本能的に気付いているのか、私も見た事無いようなドキツイ顔してるよ・・・長年の腐れ縁だけど、アレ本当にメルなの?」


 化け物でも見る様な目でメルさんを見ながら、青褪めた顔で語るリサさん。よく見たら、リサさんの膝がガクガクと震えているので、冗談で言ってる訳では無いみたいです。


「ちょ!しっかりしてよ、リサ?!貴方が一番メルと長い付き合いなんだから、何か対策とか無いのかしら?!」


「そ、そう言われても・・・ハッ!そうだよ?!さっきも言ったけど、捕まった子が抵抗を示したらメルも諦めるはずだから、アキクンが抵抗すればもしくは・・・ッ?!」


「ッ、あ、アン・・・アキクン聞こえたでしょ?!リサの言う通りにメルに抵抗なさい!でないと、本当にどうなるか知れないわよ?!」


「わ、わかったよ!やってみる!!?」


 よし!任された!!演技力じゃ他の追随を許さない僕の神髄見せてやろうではありませんか?!!

 では、いっくぞい!!


「・・・わ、わぁー、いやだぁー、たすけてぇー・・・ホントこわぁーぃ」


「「・・・・・」」


 シラーっと此方に痛い子を見る様な視線がビシバシと感じますが、気のせいだよね?


「カワイスギル!!モウガマンデキナイ!!タベル!!?」


「た、食べるって何?!!」


 想像だにしない発言に、恐怖を感じるのが普通なのでしょうが、この時の僕の心境は・・・凄くときめいて居ました。

 だ、だってですよ?ショタ狂い(スモールビッチ)なんてそんな二つ名を冠したメルさんの発言ですよ?そりゃもう前の世界でもピュアな心と清らかな身の上としては、期待しちゃうってものですよ?!

 仕方ないじゃん!据え膳何とやらですよ?!


《・・・御主人様(マスター)、もう一度頭上を見てみましょう?》


 ぇっ?何よ急にナビは・・・さっきから見守るスタンスみたいな感じで我関せずって感じだったのに、まったく・・・んで、なになに頭上がなんだって??


「ニッコォオ」


「ヒィ!!」


 肉食獣どころか混沌すら這い寄れそうにも無い、そんな名付しがたいTHE変態の顔がそこに・・・下手なホラーより怖いんですけど?!

 ハッ!もしかしてこれが、性の対象として常に晒される女性の皆さんの気持ちなのでは?!

 凄く気持ちの悪い目線が僕を舐め回すようにねっとりと動き、モゾモゾと僕の幼くも未熟な体に、その豊満な肉体を擦り付けてきます。

 あれ?別にそんなに嫌じゃないかも?あの気持ちの悪い目線を気にしなければ、温かくも良い匂いのするこの世全ての寝具を以ってしても味わえない甘美なひと時を過ごせるのならば寧ろ・・・ッ、うぇっ?!ぇっ?今、僕の臀部から変な感触が・・・うわわわわっ、ガシッとお尻を鷲掴みにされたかと思ったら、次の手と言わんばかりにモミモミと揉みだしたんですが?!


「うひっ、うひひひひひひひっ」


「・・・・・・・・・」


 ダメだ。今、心が死んだ。

 気持ちの悪い目線どころか、耳障りで気色の悪い奇声も聞こえ始め、さらに獲物の味を隅々まで味わうかのように僕の体をまさぐって悦に浸る、そんなこの世ならざる変態の顔を見たら・・・ポッキリと心の何処かにある、野郎でも持ち合わせてるらしい乙女の芯が折れました。


「いやぁああああ助けてぇえええええ?!!」


 うわぁあああああんと恥も外聞も知った事ではありませんとガチ泣きを敢行す、ショタっ子な僕、童心に返る也。

 あの美しくも慈愛に満ちたメルさんは何処・・・信仰に近い恋心が儚くも散り、そして僕が勝手に作り上げていた女神像をも音も無く崩れ去るそんな幻視を思い浮かべながら、現実のメルさんこと変態ショタ狂い(スモールビッチ)の存在も一緒に消えて無くなって欲しいと切に願います。


「よし!最初はどう見ても棒読みだったけど、今度のは本物の悲鳴だわ!よくやったわ、アキクン!!」


 サムズアップを決めるリーファさんとかそんなの要らないから!


「そんな事はどうでも良いからマジで助けてぇええええ?!ぇ、待って、何で割れ目の奥に指を入れるの?!いや、そこは・・・ダメぇええええ?!」


 僕の大切な何かが失われる前にぃいいいいい?!


「ちょ、メル何やってるのよ?!はわわっ、そんな事まで・・・」


 隠し切れていない目線カットなんてしてないで、助けてよリーファ?!


「うわぁ・・・メル、アンタって奴は一体どこまで逝くのよ・・・って待って。なんでアキクンが悲鳴を上げて嫌そうにして居るのに、止めようとしないの?・・・・ま、まさか?!」


 外道に堕ちてしまった友人を見て、慄きつつもどこか哀愁を漂わせる様な眼差しを向けていたリサさんでしたが、僕が阿鼻叫喚に救いを求める中にも以前代わり映えしないメルさんの乱心に、疑問を感じたように首を傾げ、そして、最悪な事態に至って居る事に気づいたのか、その顔を驚愕に染めました。


「ソノ、ナキガオモ、ソソル」


「「「なっ?!」」」


《ふむ。流石は、ショタ狂い(スモールビッチ)・・・分かっていますね。御主人様(マスター)の予期せぬ事態に慌てる姿は、とてもとても滾るのですよ!》


 どうしようもない状況に我を忘れそうになったけど、そう言えば僕には頼もしい相棒を見の内に秘めているのです。

 な、ナビ、冗談言って無いで、助けて欲しいんだけど?!


《お任せください、御主人様(マスター)


 そんな頼もしい声が僕の身の内から響き渡り、恐ろしい淫獣に抱き抱えられた事で冷え切ってしまった心に、希望の灯が宿った気がして、この窮地から抜け出さねばと再度気持ちを奮い立たせることが出来ました。

 な、ナビ・・・信じていたよ!流石は僕の相棒だよね?!


《きちんと録音録画の準備はしていますから、安心して下さい。私が御主人様(マスター)の初めてを頂けないのは残念ですが、傷心に沈んでも、快楽に溺れたとしても、それはそれで二番煎じを楽しむ方法は幾らでもありますから、寧ろバッチコイです!ぁあ、一体どんなお姿をお見せ頂けるのか・・・濡れる?!》


 突如湧いた希望が一瞬にして水泡に帰し、その起伏が齎した感情の波に翻弄された僕は・・・


《ッ!す、素晴らしいです、御主人様(マスター)!?ぁあ、この何とも言えない感情の波・・・滾りますッ?!まるで、真っ白な穢れの無いキャンパスを思い起こすようなこの心象風景!一体どのような色彩を以って描けば良いのか・・・これぞまさに純粋無垢なショタの境地ですよ!!?》


「クハァ、ワカッテル、アナタハドウシ」


《ハッ!私とした事が、つい同じ波長にある者と同調してしまいました・・・ですが、これもまた必然!同志ショタ狂い(スモールビッチ)様、その狂乱の宴に是非ともお供させて下さいませ!!》


「カンゲイスル」


 この瞬間、僕は、獣欲なる混沌の女神にその身を抱かれ、さらに僕の内にある魂さえも、道を指し示してくれる相棒と信じていた悪しき道祖神により裏切り掌握され、そして何処にも逃げ場を無くした僕は、無の境地に至るしか他も無く・・・


「だ、誰と喋ってるのメル?お願いだから、正気に戻ってよ!!」


「な!急にメルの魔力が収束する気配がするんだけど、これ気のせいじゃないよね?何をする気なの、メル?!」


「・・・・・・・・・・・・・」


 そんな二人の悲痛なる叫びも最早聞き取れないのか、その顔を俯かせるメルさん。

 すると、メルさんに抱き抱えられている僕だからこそ聞き取れる、そんな小さな声でブツブツと呪文の様なものが聞こえ始めたかと思ったら、自然抱き合った様に見えるそんな僕たちの足元から魔法陣が出現しました。

 そして、そんな僕らの周りが仄かに煌めきと共に輝き出して・・・もしかして、これって・・・


《なるほど転移魔法ですか・・・それならば転移先はお任せ下さい!同志の魔力量で足りる距離内で、誰にも邪魔をされずに情事を行える場所を検索します・・・見つけました。これより同志の転移魔法陣に座標を組み込みます・・・成功しました。オールグリーンです、同志ショタ狂い(スモールビッチ)!!》


「カンシャスル・・・テンイ」


「「えっ?!」」


 そして、僕たちは眩い光に包まれ、突然の事に驚愕な表情を張り付けたそんな二人に見送られる形になりながら、その場ことギルド内からまだ見ぬ獄楽へと向かうのでした。

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