41-芸術こそが異文化交流の近道
「な、なんで僕、いま叩かれたの?!」
突然の暴挙を見舞ったリーファに、当然の権利として非難の声を僕はあげました。
そしてその暴挙幼女様を睨んだろうと、リーファに顔を向けてみると・・・何故か顔を俯けて、わなわなと震える姿が目に入りました。
ぇっ、なんでリーファの方がお怒りのオーラを出しているの?!僕がリーファにブチ切れるなら分かるけどさ。
だって、何の事前の同意も無しに、単騎でダンジョンに落とされたんだよ?それにダンジョン下層という、明らかに最終攻略エリアの場所に向かわせて置いて、碌なアイテムも受け取って無いんだから。
あとドロップ品を稼ぐためだろうけど、それらを持ち運ぶためのアイテムが最上級ぽぃって何さ?!
絶対、あの四次元バッグに力を入れ過ぎて、回復アイテム等をケチった結果が、あの各種回復3本セットだと思う。しかもあまり使うなのお達し付き・・・あんまりだと思います!まぁでも全部使っちゃったけどね。エルのためだったし、これに関して文句言われたら強く抗議したる?!
そう色々と思い出してみれば、リーファに対して憤りを覚えるわけだけど、それでもその御蔭というかきっかけで、シュセンちゃんやラキちゃん、それにエルに出会えたわけだから、そこまで怒りを抱く事はなかった。
それに、過程を抜きにして結果だけを見れば、多くのドロップ品を得て、無事に帰還出来たのだから、結果オーライどころか一財産も得られて大成功なんだけどね。
だからまぁ僕にはもうリーファに対して、そう目くじらを立てる事も無いんだけど・・・それでも、何で僕が怒られなきゃいけないのかが分からなくて、納得できない。
ってそうか。まだリーファに成果について報告してなかったや?!
それにまだ一日しか経ってないのに、直ぐに帰って来たものだから、何の成果も得られずに逃げ帰って来たと思っているのかも。
ふふふっ、ならばその成果を披露してやろうではありませんか!?
さすれば、あの守銭奴幼女様ことリーファが、手のひらを返したように僕に傅くやも知れぬ!ぐふふっ、それは楽しみですな。それでは、報告と行きますか!
「ふふっ、リーファ聞いて驚かないでよ!実はね・・・」
そう僕が成果について語ろうとしたら、本題に入る前に、リーファに突然抱きしめられて、話すことが出来ませんでした。
ってぇっ、何で急にそこで僕を抱きしめるのさ?!ハッ!まさかまたあの絞め技を決めようと?!うおっ、やっべぇ早くに逃げ出さないと・・・と、僕が慌ててリーファを突き放そうとしたら、信じられない事に耳元からすすり泣くような声が聞こえてきました。
「本当に無事で良かった。ごめんなさい、アキクン。知らなかったとは言え、危険な場所にアキクンを向かわせて・・・本当にごめんなざい」
あの暴君幼女様とは思えない程に弱々しく、僕に許しを請うかのように、あのリーファがそう懺悔を口にしていました。
ぇ、ホントナニコレ・・・ほ、本当にこの子、あの爆雷で暴君幼女様なリーファなの?一体、たった一日で何があったのさ?!
もしかしてドッキリじゃないよね?そう疑いたくなるほど、この突然なリーファの豹変ぶりに、常に冷静かつ聡明な僕でも、この難事件を解明する事は難しいぞ?!
《御主人様、突然のハプニングに見舞われるとネタに走る癖は、どうかと常々思います。まぁそれはそれで私の出番が増えそうですが・・・問題はありませんね。どうぞ、そのままお続けください》
ぐぬぅ、ワトソン君が良い感じでヒントを出すどころか、試すかのようにホームズを追い詰めようとは・・・相棒としてどうかと思うよホントに?!
僕が目の前の信じられない状況に対応出来ないでいると、その危機を救ってくれたのは・・・
「もう、リーファったら急に駆け出すんだから・・・ってあら?そこに居るのはアキクンなの?」
我らが女神・・・は危ないので、心のオアシス兼僕が密かに抱いている恋心の相手こと、メルさんその人でした。
「ぁ、メルさん?!お久しぶりです!ってまだ一日しか経っていませんが・・・ってそうじゃなくて、リーファどうしたんですか?!もしかして何か問題が起きたのでしょうか!?」
「あらあら・・・大丈夫よ、アキクン。貴方が向かったダンジョンの先が、とても危険な場所だったの。その事をリーファが気に病んでね」
と僕がダンジョンに落とされてからの、今までの出来事を掻い摘んで語ってくれるメルさんの話だと、僕が落とされたあの場所は、危険度Sクラスのスライムの巣だったらしい。
その事をリーファ自身は一応知って居たらしいけど、僕がスライムに対抗できると思われる称号を所有していたものだから、危険性を軽視していたみたい。
それをギルド職員のリサさんに、何故あの場所がSクラスに指定されているのかと詳しく話を聞かされて、どれだけの危険が待つか分からない場所に僕を突き落としたのかと、気づかされたリーファは、そんな僕を助け出そうと一人でダンジョンに潜ろうとして居たみたい。
嘘?!あのリーファが僕のためにそこまでしてくれようとしていたなんて・・・やっぱり偽も・・・ってそれはいい加減言い過ぎだよね。
そうか、リーファ心配してくれてたんだ。
今も僕を抱きしめつつ、懺悔を口にするリーファを落ち着かせるために、僕は優しくリーファに語り掛けました。
「ぅん、心配してくれてありがとう、リーファ。ほら落ち着いて。僕は全然大丈夫だし、怪我も無いからね?だからもう安心して良いよ」
よしよしと頭も撫でてあげたりして、リーファを落ち着かせようと努めました。
「ぐすん。許してくれるの?アキクン」
「ぅん、許すよ。だらかもう泣かないで?それにさっきは言いそびれたけど、実はちゃんと成果があるんだよ?!」
一度、抱きしめてくるリーファから離れて、背中に背負っていた四次元バッグを下ろしてから、リーファの前に提出します。
「ほら、見てみて!結構な数のドロップ品があるんだ!これで当分は遊んで暮らせるんじゃないかな?」
ムフンと自慢するように腰に手を当てて、今回の成果をリーファに見せつける事で、先程の暗い雰囲気を払拭しようと明るく努めたのが功を奏したのか、みるみるうちにリーファの顔が気色に彩られました。
「な、なんですって?!・・・こ、これだけあれば、アキクンを呼んだ時に使った資金が戻ってくるどころか、お釣りがたんまり返ってくるわ?!やっぱり私は間違っていなかったのよ!今後もアキクンにじゃんじゃん稼がせれば、一生自堕落な生活が出来るはず・・・・うふっ、うふふふふふっ」
あれ?可笑しいな・・・先程までの素直でしょげた姿がどこか可愛らしかった、あのリーファさんは何処に逝ったのデス?
今、僕の目の前に居るのは、欲に駆られ濁った眼で僕を見つめる、そんな強欲幼女様が顕現されているのですが?
「コラ!リーファ。そんな風にアキクンを見たらダメでしょ?それにさっきまでの反省はどうしたの?まったくもう、リーファったら」
「ぅっ、ごめんなさい・・・アキクン」
メルさんに窘められて、そう素直に謝ってくるリーファ。
んーこう素直なリーファを見ていたら、気味が悪いって言うか、調子が狂うんだけど。
果たしていつまでこんなリーファを拝めるやら・・・
「・・・アンタまた変な事、考えてるでしょ?」
ビクンと体を膠着させてしまう僕ですが、このままだと折角の貴重な体験をみすみす壊してしまいかねません。
ここは早々に話を変えるのが得策というものです?!
「ぇ?そ、そんなこと無いですよ?ぁ、ぇっと・・・そうだ!新しい仲間が出来たんだよ!紹介するね?ほら、エル、こっちにおいで」
この場所に転移する前は、僕の腕の中に居たエルですが、先程リーファに抱きしめられる寸前に退避していて、今は大人しく僕の直ぐ傍で待機していました。
僕がリーファに絞め殺させるなんて思ってた時も、落ち着いて僕たちの様子を見守って居て、そんな空気も読めるスライムなんて世界広しでも、エルしか居ないのでは絶賛の嵐です。
《御主人様、私も大人しく見守って居ました。お褒め頂いても宜しいのですよ?》
ぁ、ぅん、そうだね。偉いね、ナビ。
《ん。御主人様の御座なりな対応もなかなか癖になりそうです》
・・・この相棒は色んな意味で面倒だから紹介を省こうっと。
「ぅん!ますたぁー抱っこ!!」
そう言ってエルが、僕の胸に飛び込んできたので、腕に抱えるように受け止めてあげると、ぷるりんと震えて僕の腕の中に納まりました。
「ほら、この子がスライムのエルって言うんだ。可愛いでしょ?」
「ボク、エルって言うの!ますたぁーの眷属なの!よろしく!!」
元気よく二人に挨拶をするエルは、可愛いだけじゃ無く、賢い子なのです!
「ぇっ、スライムって・・・大丈夫なの?!」
「あらあら、この子もアキクンと同じで喋るのね?それにきちんと挨拶も出来るなんて偉いわねぇ。私はメルって言います。よろしくね、エルちゃん」
リーファは、おっかなびっくりって感じだけど、メルさんの方は、好意的に迎えてくれるみたいで安心しました。
「大丈夫だから怖がらないでよ、リーファ。ほら、この子が僕の従魔契約者のリーファで、その隣に居るのがメルさんだよ、エル」
「わかった!それとボク、怖くないよ?」
リーファの怖がり様に少し寂しく思ったのか、エルがそう言って、僕の腕の中から飛び出し、リーファの元に近づいて行きました。
すると、リーファにアピールするかのように、あのジャンピングテクニックを披露し始めました。
「ちょっと、あんまり近づかないでよ・・・って、何それ?!ダイナミックな動きかと思ったら、一つ一つの動きが繊細かつ美麗で、まるで一つの絵画を描き出すような放物線を魅せるだなんて・・・これはもう一つの芸術だわ?!」
「わ、わぁー凄いわね。確かに素晴らしいけど、本当にこの子スライムなの?こんなスライム、私今まで見た事無いのだけども・・・新種かしら?」
エルの御蔭で、どうにかリーファにも受け入れられたみたいです。
それにしもエルが披露するジャンピングテクニックは、毎回見る度に進化している様な気がするんだけど。
一体どこまでその芸術の域を高めると言うのか・・・エル、怖ろしい子?!




