32-鬼退治
二人の非難する言葉に居た堪れなくなった僕は、未だしくしくと地面を濡らすおもらし鬼角幼女さんに、どうにか便宜を図ってもらおうとして、先程よりも丁寧に慰めの言葉を口にすることにしました。
「ぁーほらでもあれだよ!まだ君は幼いんだし、おもらしする事ぐらいよくある事だよ!僕も10歳ぐらいまでは、よくおねしょとかしてたしね。ぅんぅんだから気にする必要は無いんじゃないかな?」
と少し苦しいかなと思いつつも、自分以外にも同じ失敗をする人が他にも居るんだよと共感性を持たせることで、その羞恥を少しでも和らげようかと思ったのですが、残念ながらその意図が通じる事は無く、
「10歳・・・吾はこれでも60歳なのじゃ・・・ぐすん」
「ぇっ?!僕より年上なの君!?ってかそれもうただのロリBBAじゃん!!」
僕があまりの衝撃的な事実につい思ってたことを口ずさんでしまったのがいけなかったのか、それが最後のトリガーとなってしまったようで・・・
「うっ・・・」
「うっ?」
「うわぁあああああああああああああああああああああああああん!!」
とこの世界の果てまで届けとばかりに、おもらし鬼角幼女さんが大絶叫で泣き叫んでしまいました。
「あわわ、どうしようどうしよう・・・こんなつもりじゃ・・・」
あまりの大絶叫に流石の僕も居ても立ってもいられず、オロオロと狼狽えていると、
《御主人様、落ち着いてくだ・・・》
「なんやうっさいと思って来てみはったら、おもろい事になってはるみたいやね?」
ナビが僕を落ち着かせようと声を掛けようとしたら、そんなどこか艶めかしい声が割って入りました。
《ッ、転移の気配がありませんでした!御主人様、先程の鬼娘とは別格と思われます。十分に気を付けて下さい!!》
わ、わかった。それにしても新たに現れた、この人物はいったい何者なんだろうか?
見た目は少女・・・いや痴女だ!痴女が居ますよここに!?
おもらし鬼角幼女さんと同じで、二本の角をその額に生やしている所を見ると同じ鬼の種族かと思うけど、何故か片方の角は半ばから折れちゃっています。
髪形の方はおもらし鬼・・・おもらし鬼っ子と相反するかのようにショートカットの藍色の髪で、少女の様な顔に不釣り合いな艶めかしいたれ目が印象的で凄く良いかと思います!
それで肝心な痴女さんの特徴ですが・・・半裸です。めっさ半裸です、ありがとうございます!!
じゃなくて!おもらし鬼っ子はその金色の髪に合わせた山吹色の着物を着ていましたが、その痴女鬼さんも同じようにその髪と同じ藍色の着物を着崩しているのですが、ですが、おもらし鬼っ子と比べ物にならない程に着崩しが酷くて、もはやただ羽織ってるだけって感じで、前を完全にはだけております。
一応残念な・・・幸いなことに、慎ましやかだけど形の良いお胸さんと下腹部の方は、女性用の下着ことランジェリーで隠されていますが、それがまた際どいったら無いのです。少女みたいな見た目に反して、その痴女スタイルも相俟ってどこか妖艶さを垣間見せ、凄くお色気ムンムンなのです・・・緊迫するこんな状況にありますが、僕ドキドキしてきちゃったんだけど・・・オトコノコだから仕方ないよね?
《御主人様しっかりして下さい!アレはそんな生易しいものではありません!!》
「なんや酷いわぁ。アレって言い方はあんまりやと思わへん?痴女鬼さんもどうかと思うんやけどなぁ」
《ッ、こちらの会話どころか、御主人様の考えてる事も筒抜けですか・・・エル!その鬼娘は解放して、アレを捕縛なさい!先程よりも強化した鎖でお願いします!!》
な、また第三の読心術者だと!?と僕が戦慄しているのをよそに事態は進み、
「わ、わかった!『縛鎖エンキ』」
一度元のスライムに戻り、また魔法名を唱えてから、再び鎖となったエルが、その痴女鬼さんをおもらし鬼っ子と同じように捕縛しました。
同じようにと言いましたが、先程行った捕縛とは違い、おもらし鬼っ子の時はまだ辛うじて顔や腹部など少し肌が露になっていましたが、今度の捕縛の方は、痴女鬼さんの全身を包み込むように完全な雁字搦めに捕縛をしたようです。
《今のうちに対策を考えてどうにかここからの逃走を図りましょう、御主人様》
こんなにナビが恐れをなしてるって事は、そんなにヤバい痴女なのかな・・・ま、まぁ確かに新たな読心術者だし、それに尋常じゃ無い痴女鬼さんだけども。
《御主人様、冗談を言ってる場合じゃありま・・・》
「ぅ、あ!ぐぅううううッ」
「ど、どうしたのエル!?」
急に苦しみだしたエルの様子に何事かと意識を向けたその時、不意に異音がこの場に響きました。。。
・・・ガリッ、バキッ、ゴリッ、バキバキッ・・・・
「い、痛い、痛いよ!ヤメテぇ!!食べないでぇ!!?」
「なっ!?」
《そ、そんなエルが擬態した鎖を食べているのですか?!通常の鎖をも遥かに超える強度を備えているはずです!ありえません!!》
「い、痛ぃいいい!ヤメテ!ヤメテぇえええ!!」
「ッ、ナビ、今はそんな事言ってる場合じゃないよ!このままじゃエルが食べられちゃう!!エル、直ぐに擬態を解除するんだ!!」
「ぐぅあ!・・・だ、ダメ!そんな事したらますたぁーたちが危ない!!」
苦しみながらも僕たちの事を想ってそう言ってくれるエルだけど、その身を食べられ尋常じゃ無い痛みと恐怖に苛まれているだろう事は、此方に心配させないためか押し殺すような呻き声が聞こえてしまう中、察せない筈もありません。
「ダメだエル!僕たちの事を心配してくれるのは嬉しいけど、それでも僕はエルを失う事だけは絶対に嫌だ!!」
「ま、ますたぁー・・・ッ、ぐぅうううう!!」
此方のそんな遣り取りを嘲笑うかのように、咀嚼する音をさらに響かせ、エルを苦しめてしまいます。
《ッ、え、エル!その鎖の状態を維持したまま、その身の一部分に意識を集中するのです!そしてその一部分を切り離して、それ以外は擬態を維持させなさい!!その際の処理は此方で持ちますから、早くするのです!!》
「わ、わかっ・・・ぐぅあ!ッ、このぉおおおお!!」
じゅっぽんとその雁字搦めになった鎖から切り離す事に成功したのか、その一部分を本体として元のスライムになったエルが、此方に飛び込んで来ました。
「え、エル!大丈夫!!」
とそんなエルを受け止めますが、前は僕と同じ小型犬ぐらいの大きさがあったのに、今は僕が軽く抱えられるほどに小さくなったエルの姿がありました。
「ま、ますたぁー怖かったぁ」
やはり凄く怖かったみたいで、僕の胸にその身をうずめながら震えているそんなエルをそっと優しく撫でてあげました。
「怖かったね。もう大丈夫だよ。安心して、あとは僕とナビに任せるんだ」
「ぅん。わかった、ますたぁー・・・はわわ、やっぱり撫でて貰うの好き!」
僕が撫でてあげる事でどうにか咀嚼された恐怖が和らいだようで、今は幸せそうに僕にその身を委ねてくれました。
《エル良かったですね・・・。ッ、もう少しエルのためにもゆっくりしたいですが、そうも言ってられないようです。御主人様、気を付けて下さい。来ます!!」
・・・ガギッ、バキキ、バガン!・・・
そんな通常じゃ聞いたことも無いような咀嚼音が響いたかと思ったら、一際大きな破裂音を響かせ、その身を縛っていた鎖から解き放たれ、ゆっくりとその肢体を露にした痴女鬼さんが、先程まで行動を阻害されてた事に気にした様子も無く、
「なんや、もう終わりかいなぁ。まぁ歯ごたえはあったんやないの?ほいで・・・次はどないすんの?そこなかいらしい子が相手するん?」
そう言って僕を指さす痴女鬼さん。エルにああ言った手前、ここは僕が出るしか無いと思いますが、果たしてどこまで相手が出来るのやら。
《御主人様、微力ながら私も支援致しますが、もしその時が来ても私はどこまでもお供致します》
そう言ってくれるのは嬉しいけど、それじゃ僕が負けちゃうみたいじゃない?そこはいつもの自信家のナビらしく、僕を持ち上げてくれても良いんだよ?
《ッ、申し訳ありません御主人様。はい、きっと御主人様なら大丈夫です!私が付いていますから!!》
その意気だよナビ!僕ならきっと大丈夫さ。なんてたって最高の相棒が付いているんだから!!
《はい!御主人様!!》
「ボクも居るんだから!忘れちゃダメだよ!!ますたぁーと一緒に戦う!!」
「そうだね、エルも一緒だよ。よし!じゃ、みんなで鬼退治と行こうか!!」
オー!と気合を入れて、痴女鬼さんに対峙するため一歩前に進み出る僕たちを待ち構えるかのように、
「くふふっ、なんやかいらしいわぁ。ただうちが悪者みたいで嫌やけど、仕方がないどすなぁ?ほな、いこか」
と先程感じた妖艶さとは別種の負のオーラを強く感じさせ、これが殺意なのかと生まれて初めて感じる怖ろしさに、今すぐ逃げ出したい気持ちをどうにか抑えて、僕はその痴女鬼さんの前に踏み出しました。
「ほーん、やるやないのぉ。思うてたより楽しめそうやなぁ」
そう言って舌なめずりをする痴女鬼さんは、本当に鬼の様に妖艶で美しいとこの状況も忘れて思ってしまいました。
「おおきに」




