31-やり過ぎダメ絶対!!
「ぇえい、放せぇ!放すのじゃぁああ」
そう喚き散らしながら、その身を拘束してる鎖から抜け出そうともがく鬼角幼女さん。
さてなぜこんな状況になったかと言いますと、話はほんの少し戻りまして。。。
「・・きっちりと落とし前を付けさせて貰うのじゃぁああ」
鬼角幼女さんがそう啖呵を切りながら、僕たちに襲い掛かろうと飛び出したかと思ったら、
《エル!鎖に擬態してその子を捕縛しなさい!!発動するための魔法名は先程教えた通りです》
「わかった!じゃいくよぉ・・・『縛鎖エンキ』」
そう魔法名を叫んだかと思ったら、エルの形状がスライムから鎖に変化して、今にも襲い掛かろうと飛び出していた鬼角幼女さんをその鎖で雁字搦めに縛ってしまいました。
「ぬぅお!なんじゃこりゃ?!ぐっ、こんなもの吾の力で破ってやるのじゃ!!・・・ッ、なんじゃと。ぬ、抜け出せぬのじゃ!?」
放すのじゃぁあとそう喚きながら暴れてどうにか抜け出そうとするも、その鎖がビクともしない事に焦りを隠せないようで、さらに声と共に力の限りもがき叫ぶ鬼角幼女さんがそこに居ました。
なんだかよくわからないけど、取り合えずこれで落ち着いて話を聞いてくれるかも知れない。
「エル、よくやったよ!ってその状態でも話せるのかな?」
「やった褒められた!ますたぁー、ちゃんと話せるよ!エル偉い?あとで撫でて欲しい!!」
「ぁ、ちゃんと話せるんだね。ぅん、偉いよエル。な、撫でるのは取り合えずあとでね」
わかった!と嬉しそうに返事をしたエルは、後程のご褒美を期待してさらにやる気をだしたのか、その鎖の縛りを強めにしてしまったようで。
「あがっ。ちょ、ちょっと待つのじゃ!い、痛い、痛いのじゃ!?もう暴れないから少し緩めて欲しいのじゃぁああ」
「え、エル!やる気が出てるところ悪いんだけど、痛がってるみたいだから少し緩めてあげて?」
「わかった!!」
そうエルが言って、その縛りが緩んだのか、この機を待ってましたとばかりに鬼角幼女さんが、
「くはっ、甘々なのじゃ!これでやっと抜け出しておのれらを・・・って抜け出せぬぅ。なぜなのじゃぁあああ!?」
確かに鎖の縛りは緩んだようですが、それでも全然抜け出せないようで、また暴れ出す鬼角幼女さん・・・意地が悪いみたいだね。
まぁでもこれで抜け出せない事はわかってくれただろうし、こっちの話を聞いてくれるかな。ではでは改めてコンタクトと参りましょう。
「ちょっと落ち着いて。こっちの話も聞いて欲しいのだけど」
「放せぇ!放すのじゃぁああ!卑怯じゃぞ!尋常に落とし前を付けて、吾に裁かれるのじゃぁああ」
とそう言ってこっちの話を全く聞いてくれる気配が無いのですが・・・これどうすっぺ。
《エルに指示してもう一度縛りを強くしましょうか?》
んー流石に幼い子を痛めつけるのは僕の信条としては無しだね。老いも若さも問わず女性には優しくするのがモットーなので。
《それは大変素晴らしい志かと思われますが、ではどう致しましょう?》
そうだね・・・こっちの話を聞いて貰う為には、一度落ち着いて貰わないといけないから・・・
「放すのじゃあ!!吾にこんな事して良いと思っとるのか!絶対許さないのじゃ!!あとでこのボケカススライム共々切り刻んでやるのじゃ」
カッチーンと来ちゃったよ、僕。
僕の事はまぁ少しぐらいなら馬鹿にしても良いけど、こんなぷりちぃで愛らしくて素直なエルをボケカス呼ばわりしたどころか、切り刻むだなんてそんな酷い事をしようなんて・・・許さぬ!これはお仕置きが必要なようですね!!
確かドロップ品の中に、羽根ペンみたいなのがあったよね・・・ごそごそっと四次元バッグから探したらば・・・ぁ、あった。
よぉしぃ。じゃ、刑を執行したいと思います。
題して、「悪い子にはお仕置きだべぇ」
羽根ペンを片手に持ち、もう片方の手をワキワキとさせながら、罪人を刑に処すべく近づいていくと、その僕の異様な雰囲気に気づいた罪人こと鬼角幼女さんが何かを察したのか慌て始め、
「な、なんじゃお主は。ち、近づくではないわ!そ、それにその手に持ってる物はなんじゃ。あとそのワキワキとさせた手の動きはやめるのじゃ!なんだか凄く気色が悪いのじゃ」
なにが気色が悪いだ!許すまじ鬼角幼女!!これは手心を加える必要も無いようですね、存分にやったろうじゃないですか!!
《・・・女性には優しくでは無かったのですか?まぁ私も少し気分を害しましたので、別に良いのですが》
相棒の許しも出た事ですし、徹底的にやったろうではありませんか!!
「なんて口汚い子なんだ・・・これはお仕置きが必要です!エル、そのまま縛っててね」
「わかった!ますたぁーも頑張って!!」
「にゃ!ちょ、待つのじゃ!話せばわかるのじゃ!!何をするのかわからぬが、なんだかそれはイケない気がするのじゃ!だから待つのじゃ・・・ってぁあああ」
「こちょこちょこちょこちょこちょ・・・」
「ッ!あひぃ、あぎゃあははははははは。や、やめるのじゃ!こそばゆいのじゃ!!ちょ、マジでやめ・・ッ、あははははははははははなのじゃぁああああ」
『秘技!?こちょば拳!!お主は既に笑い転げておる』
を発動した僕は、その妙技を遺憾なく発揮し、鬼角幼女さんのその幼い体を蹂躙すべく羽根ペンを走らすのでした。
「ちょ、あは。ま、待ってなのじゃ!ほ、本当にこれ以上は・・・あひゃ」
僕の妙技に耐えられないのか、目尻に涙を溜めつつ笑い声を上げながらも、その体を捩りながらどうにか逃げようとするも、エルに縛られていてそれも叶わない様子です。
「君が悪いんだからね!切り刻むだとかボケカスだとかそんな悪いことを言う子は許しません!年長者としてここは心を鬼にしてお仕置きを敢行します!ぁ、心を鬼にした僕も君と同族だね?良かったね、同族として責任を持って君を矯正してあげられるよ」
「な、なにが同族じゃ!こんな同族が居てたまるか!!」
「まだ全然堪えて無いみたいだね・・・ここからは本気で行かせてもらうよ!!」
鬼角幼女さんは全く反省をしていない様子なので、本当はこんな幼い子にこの技を使うのは躊躇われるけど、仕方がありません。
「真・こちょば拳!?千手快拳」
と二つ目の羽根ペンを取り出し、もう一つの羽根ペンと併せて両手に持って、その絶技を発動させた僕は、鬼角幼女さんを菩薩の如く説き伏せるためにその秘めた力を遺憾なく発揮するのでした。
「ちょぉおお!それ以上は、本当のホントにダメなのじゃぁああ!?謝るのじゃ!ご、ごめんなさいなのじゃ!!だからゆるし・・・ッ、うひゃあはははは、じ、じぬぅ!これいひょうわ、らめぇなのじゃぁあああああああ」
とあまりの刺激に白目がちになりながら、悶え苦しみながらもどことなく艶めかしくなりつつある笑い声を轟かせていたら、不意にその両目の焦点を戻し、その笑い声も止め、
「ぁ、もうダメなのじゃ・・・・」
そんな諦観を感じさせた言葉を口ずさんだかと思ったら、何やら下の方から水音が聞こえ始めて・・・
ちょろ・・・ちょろろろ・・・・
「「《・・・・・・・・》」」
「や、やり過ぎたぁあああああああああ!!」
《御主人様って結構おバカですよね?》
「そ、そんなこと無いもん」
「ますたぁーボクも流石にこれは無いと思う!」
「え、エルまで!?」
そんな二人の態度にやるせない気持ちでいると、当の失禁鬼角幼女さんはというと・・・
「・・・もうお嫁にいけないのじゃ・・・ぐすん」
眼を閉じながら羞恥に悶え、そう呟きながらしくしくと泣き出して、涙だけじゃ足りないそんな水たまりを作ってしまったその姿からは、先程までの僕たちを粛清しようとしてた覇気はどこにもありませんでした。
「ど、ドンマイ」
と慰めの言葉を僕が口ずさんだら、ナビとエルの二人がそんな僕を非難するかのように、
「《御主人様最低です》かも!」
そう異口同音に言われてしまいました。
ぼ、僕は何も悪くないもん!!




