29-諸行無常の響きあり
エル大丈夫だろうか、もし怪我なんかしちゃったりしたらどうしよう・・・と初めてのおつかいを見守るお母さんみたいな気持ちでいた時も、僕にはありました。。。
「んぅぅぅぅぅ、ッ、やぁあああああああ!!」
そんな掛け声を上げて、矢の如く一筋の光の軌跡を残しながら、数多の鬼たちを屠るエルの姿がそこにありました。
繰り広げられる殺戮の嵐に、何が起きてるのか僕にはわかりませんが、取り合えずエルさんの雄姿を伝えたいかと思います。
まずそんな殺戮の嵐をもたらす行為についてですが、まるで弓矢の弦を引き絞るかの様に、その丸みのあるぷりちぃな体をへこませたかと思ったら、その弦から放たれる矢の如く、その身を槍のような形状に変えて解き放ち、数多の鬼たちを蹂躙するその姿からは、あの健気で純粋な可愛らしいエルの面影は一切無く、純粋な殺戮兵器にしか僕には見えませんでした・・・ホントなにこれ。
《ふふっ、御主人様どうですか?この素晴らしいエルの活躍は》
ぇ?ぁ、ぅん。凄いと思うよ・・・で、でもさ、ちょっとやり過ぎじゃない?あと気のせいかな、何だかこの光景見た事ある気がするんだよね。。。
《この程度は、本物の戦闘では普通ですよ。それと御主人様が感じている既視感ですが・・・御主人様が前の世界で楽しまれていたゲームからインスパイア致しました》
やってやりましたよ!とサムズアップするナビの姿を幻視した気がしたけど、ちょっと待って、それってぱくr・・・。
《インスパイアです!それにあちらは泥人形ですが、こちらは粘液生物です・・・何も問題ありません!!それに槍の形状は少し違いますし、宝具ほど制限があるわけではありませんから、此方の方が頻発して発動できる事を考えますと、オリジナルと宣言しても問題無いかと思われます》
十分問題あるよ!ヤメテ!どっちが先だとか本家だとか権利を主張するほど、面倒で泥沼の戦いは無いんだからね!!ノット利権問題!?
なんてナビと権利主張がどれだけ怖ろしいものかと素人ながら、遵守する事の大切さと違えた時の罰の重さをナビに説いていると、そんなインスパイアしちゃった技とは知らず、思いのままに存分にその力を発揮したエルが、それが齎した結果を褒めて欲しいかのように、僕の元に元気よく飛びついてきました。
「どうアキクン凄いでしょ!ボクこんなに強いんだからね!!褒めて褒めて!!あとさっきみたいに撫でて欲しい!!」
そんな風に求められちゃ仕方ないよね?ってわけでご褒美と言う免罪符を得た僕は、エルをさわさわと撫で繰り回してあげます!!
《エル、いけませんよ?先程も言いましたが、アキクン様の事は御主人様とお呼びになりませんと。アキクン様の眷属として示しがつきません》
いつから眷属になったの!?しかも先程って・・・僕を意識から外した理由はそれか!もしかして他にも色々とエルに吹き込んじゃいないよね!?
《・・・それでエル、わかりましたか?》
ちょ、無視されちゃったんだけど!?
「はわわっ気持ちいい・・・ん、ぇーアキクンはアキクンだよぉー。でもアキクンの眷属?になる事は別に良いよ!だからもっと撫でて欲しい!!」
良いの!?ってかエルは、眷属の意味わかってるんだろうか・・・ってまぁ別に僕が、エルやナビを下僕みたいに使役するわけじゃないし、それにナビが勝手に言ってる事だから、ほっといても良いかな。と投げやり気味に思いながら、さらにエルへの撫で繰り技術を強化し、その域を高みへと導いていきます。
《まったく仕方がありませんね。まぁ今は眷属を増やすことが先決ですし、規律等は後程検討すれば良いでしょう。お任せください御主人様。きっとあなたを最高神へと導いて見せます!!》
ぅぇええええ!?そ、そんな事頼んでないよ!だから僕のライフスタイル的には、のんびりまったりと次元を駆り続けるのが理想なんだって!本当に次元の中の世界みたいに、巻き込まれチート主人公は勘弁なんだってば!傍観者として楽しむのが一番なんだからね!!
《ふふっ、わかっております御主人様》
ぁ、やっとわかってくれたの?聡明なナビなら僕の気持ちをわかってくれるよね?ぅんぅんやっぱり安全圏内の傍観者こそが、歓楽を享受する一番の手段なんだって。
《ぇえ、わかっておりますとも・・・押すな押すなの芸人魂なんですね?お約束はきちんと厳守致しますのでご安心を御主人様》
いやだから遵守をきちんと守ってぇえええ!?問答障害にも程があるよ!!
《それはさて置きまして・・・よろしいのですか?御主人様》
さて置かないでくれる!?ってよろしいって何が?
《・・・エルが快楽に浸り過ぎて、今にも昇天しそうなのですが・・・》
「ぅ、ぁ・・・ぎもぢいいよぉ、アぎグんぅうううう!!」
僕の卓越し過ぎた撫でりんこの技術に耐えられなくなったのか、ビクンビクンとその体を震わせ、うわ言の様に僕の名前を呼ぶエルのその姿は、完全に事後です、ありがとうございました。
「え、エルごめん!少しやり過ぎたかも!?」
と直ぐにその神域に達しそうな撫でりんこを僕が止めると、昇天しかけた魂をどうにか現世に留まる事に成功したエルでしたが、息も絶え絶えで今にも意識が途絶えそうな中、どこか悲痛ささえも感じさせる声音で、
「もっと・・・もっと、撫でて・・・おねが・・い、アぎグんん!!」
そんなヤックンを求めるジャンキーさんみたいな嬌声をあげるエル・・・アカン完全にやってもうた!あわわ、どうしよう!?
《御主人様、あれだけ忠告致しましたのに・・・それにしても一体どれほどの御業だと言うのでしょうか。私も一度体験してみたいものです・・・》
うわぁ~ん!だって、めっさ触り心地良かったんだもの!!そりゃもう一心不乱にさわわしちゃいましたよ!?
この手が悪いんだ!メッ、もう次から気を付けるんだぞ!!
《・・・まるで痴漢をした容疑者みたいな発言ですね、御主人様》
辛辣ッ!?
「アキクンおねがいだ・・から・・・もっと、もっどぉ!!」
エルがマジでヤバい!?禁断症状みたいに震え出したんだけど!!どうしよう、ナビ!?
《・・・はぁ、まったく仕方がありませんね。エル、良いですか?》
「い、いまあとにしでぇ!アキクンにもっともっと撫でて貰わないと・・・逝けないの!!」
《エル、そんな貴方に金言を授けましょう・・・我慢をした先に訪れる快楽は、更なる享楽を貴方に与えることでしょう》
「!!」
《それにあまりアキクン様・・・御主人様に迷惑を掛けますと、今後は撫でて貰えなくなりますよ?御主人様の更なる寵愛を受けたいのなら、敬虔な眷属として、粉骨砕身に御主人様のために、その身を捧げなさい!!》
「わ、わかった!!ボクあきく・・・御主人様のために頑張る!!」
ッ!?え、エルまでついに御主人様呼びになっちゃた!?幾ら何でもこれはどうかと思うよ、ナビ!!
《仕方が無かったのです・・・エルをあの快楽の海から引きずり上げ助けるためには、この様にするしか・・・私も心苦しいのです》
とどこか悲痛な声音を響かせ、僕にそう伝えました。
そっか、ごめんね。そんな辛い役目を押し付けて・・・こんな不甲斐無い御主人様で申し訳ないよ。
《御主人様がそう気に病む事はありません・・・半分冗談と言いますか、これでエルの御主人様への忠誠心は、確固たるものになりましたので》
ちょ、ぇえええナビさん!?
《それより良いのですか?目の前のこの光景を放置してて》
ぇっ?なにが?・・・・って、うわぁナニコレ!!?
ナビに促されるままに目の前の、先程までは鬼のバーゲンセール会場だったそんな鬼畜エリアで、魑魅魍魎が跳梁跋扈してた光景をエルの無慈悲な殺戮で事態を一変させ、そしてそこに残ったのは・・・・
金銀財宝もかくやと言うほどの、様々なドロップ品の山が存在していました。
《このエルにより齎された戦利品を頂かなくてよろしいのですか?これだけあれば、リーファ嬢もお喜びになる事でしょう》
ハッ!?そう言えば稼ぐためにこのダンジョンに落とされたんだった!!
た、確かにこれだけあればあの暴君幼女様ことリーファも納得するに違い無い!そして僕の待遇改善を要求出来る!?
《・・・御主人様の行く末が少し心配になりましたが、それはそれで私の有益性の向上を図れそうなので、敢えてここは何も言わず、成り行きを見守る事に徹したいかと思います》
今、物凄く問題発言を聞いた気がするけど、そんな事よりドロップ品をかき集めねば!
僕たち以外に他の誰かが居るって訳じゃ無いけど、庶民派の僕としては、こんな宝の山を無造作に放置なんて出来やしないよ!
「よぉしぃ!それじゃドロップ品をかき集めて、四次元バッグに入れるよ!エル、手伝って!!」
「わかったよ!御主人様!!」
・・・アキクンって名前を恥ずかしいって思ってた時期もあったけど、それでもエルがアキクンアキクンって連呼してくれて、段々と慣れ親しみつつあったんだ・・・失って気付く大切な事ってあるよね。。。
《諸行無常こそ、この世の真理なれば》
誰の所為だと思ってるんだよ!!
《御主人様の所為では無いかと?》
それはそうかもだけど・・・ッ、解せぬ!!




