27-出会いのあとには別れはつきものです
「じゃ今度こそ先を急ごうか!」
「ぅん!行こうアキクン!!」
《御主人様、その前にドロップ品の回収は宜しいのですか?》
ハッ!忘れてた!?ちゃんと回収して置かないと、ここに落とされた意味が・・・って好んで落とされたわけじゃないんだけどね!
「そうだね、じゃ回収しようか!ぇっと悪いんだけど、エルも回収手伝ってくれるかな?」
「分かった!任せて!アキクンのためならなんでもするよボク!!」
と頼もしく言ってくれるけど、そのドロップ品は君の同族の遺品みたいなもんなんだけどね・・・何だろう僕が考え過ぎなのかな?
なんて思っている間にも、僕の数十倍の速さでドロップ品を片っ端から拾い集めるエル・・・ってかホント速っ!?
エルが遺品ことドロップ品を拾う際、一度体内に保管してるみたいで、物凄く効率の良い手法を取ってて、僕が10個ぐらい広い集める頃には、眼に見える範囲で落ちているものは、全て集めきってしまいました。
「アキクン拾い終わったよ!!」
フンス!と鼻息|(鼻が略)を荒くしながら、褒めて褒めてとアピールしてくるエルは、かなりのぷりちぃさだと思うけどこれ如何に?
《私は御主人様派ですので。まぁでも分からなくはありませんね・・・お手と言ってみてはどうでしょうか?》
ダメだよそんな事しちゃ!エルは、ペットじゃ無くて仲間なんだから・・・って言う僕も、まぁその気持ちはわかるけどね。
思わずそう意地悪したくなっちゃうほどに、いまのエルは従順で健気で、僕のために何かをやり遂げることが凄く嬉しそうなんだよね。
本当に長い間、孤独感を味わってたのかも知れない・・・こんな初対面な僕に、ここまで好意を示してしまうぐらいには。
よし!せっかく仲間になったんだから、目一杯構ってあげようじゃないか!!
《御主人様、私もお忘れなく》
はいはい。
「凄いよエル!こんなに早く集まるなんて思わなかったよ。本当にエルと仲間になれて良かったかな」
とエルが集めたドロップ品を四次元バッグに入れ、そうエルの事を褒めながら、その頭をなでなでしてみました。
うわぁぷにぷにしてる中にも少しひんやりとした触り心地で、かなりの良質なもち肌を感じさせる、最高に良い撫で心地なんですけど!
「褒められた!ボク嬉しい!!ボクもっと頑張る!!・・・ぅ、く、くすぐったいよ!ぁ、でも何だか気持ちいい・・・」
ハッ!思わず一心不乱に撫でまわしてしまった!!
ついついこう撫でまわしやすい子が居るとやっちゃうよね!!
《御主人様、完全に事案です》
ぇっ!?そ、そこまで言う事無いじゃなイカ?
むぅでも確かにポチたんの時もやり過ぎちゃったからな・・・気をつけねばなるまい。
「ご、ごめんね、エル。だ、大丈夫?」
「はわぁ・・・ッ、だ、大丈夫!も、もっとして欲しい!!」
「ぇ?そう?じゃ遠慮なく・・・」
《御主人様?》
ッ!わ、わかってますって!!
「な、名残惜しいけど、今回はここまで!また頑張ってくれた時に撫でてあげるからね!!」
ぐぅとここは堪えて撫でるを止めます。流石にこれ以上やっちゃうと僕の変なスイッチが入って、止まらなくなると思いますし。
ちなみにだけど、小動物だとかそう言った子限定だぞ?本当に事案になるようなことは今までしてないもん!!
《幼気な小動物を手籠めにするのもどうかと思いますが》
て、手籠めとか言う無し!!そんなつもりは僕には無いんだから!!
「ぅ、もっと撫でて欲しかった・・・ボク、もっと気持ちよくして貰うため頑張る!!」
《・・・・・・・・・・・》
僕はなにも悪くないやい!!
謂れのない誹謗中傷を受けた僕は《事実かと》(うるさいよ!)、足早にダンジョン攻略のため歩を進めるのでした。
・・・ってそう言えばどこ行けば良いんだろうか?
「エル、ちょっと良い?」
「なに?アキクン??」
「ここの出口って分かるかな?出来ればこのダンジョンの外に出たいんだけど」
「んーちょっと待ってて!他の仲間にちょっと聞いてみる!!」
そう言って、未だに僕たちの周りを囲むように居るスライムさんたちに向けて、何やら意思疎通を図ってくれるエル。
お喋りは出来ないって言ってたけど、ある程度の事は相互理解が出来るみたいだね。
「んとね・・・ダンジョン?の出口はよく分からないけど、下に行くための階段はあるんだって!ボク場所わかるから付いてきて!!」
ピョンピョンと跳ねながら、その下に向かう階段の場所まで僕を案内してくれるみたい。
「ありがとうエル。それに他のスライムさんもありがとうございました!エルの事は任せて下さいね!!」
僕の言った事を理解してくれたのか、ザワワとうねりを上げて、応えてくれるスライムさんたち。
「ッ!ぅん!ボク頑張るよ!!みんなも今までありがとう!!」
何やら僕だけじゃなく、エルにも別れの挨拶を送ってくれたみたいです。
「良かったねエル。他のスライムさんたちから大切に想われてたみたいで」
「ぅん!今なら分かる!こんなにもボクの事を想っててくれたって!大切な家族なんだって!!」
「ぅんぅんそれはよか・・・ったね!!」
そんな家族を結構屠ってしまった事を思い出した僕は、たらりと冷や汗を流しながら、そんな事は全然気にしてないエルとスライムさんたちの雰囲気に、何だか居た堪れない気持ちになって、自然にこの場から離れようと速足になる僕は、小心者なのでした。
「それにしても下に続く階段かぁー。出来れば上にあがる階段が良かったんだけどね」
なんてついつい愚痴をこぼしちゃいます。
だってもし上に行く階段があったら、そのまま上がって行って、ダンジョンを脱出すれば良いですし。
《私の見解ですが、御主人様が落下された穴からここまでの深さを考えますと、もし順繰りに階層を上がったとしたら、ひと月以上掛かる可能性があります》
マジで!?
《はい。ですのでこのまま階層を下って行けば、最下層に何かしらの脱出口があると思われます・・・ゲームのダンジョンとかだとそうですし》
なるなるそうだよね・・・って待って!ゲームって!!そんなあやふやな理由で大丈夫なわけ!?
《・・・なんくるないさぁ?》
そんな南の島の適当な返事をされても!!
「ごめんなさい。そこ以外にそれらしい場所は無いみたい」
僕の愚痴を耳にしてしまったのか、そう言ってシュンとするエルに慌てて僕は、
「ぁ、いやそういう事じゃなくてね!エルは何にも悪くないよ?むしろエルの御蔭で下の階層に行けるんだから、大助かりだよ!!」
と必死にエルを宥めすかしている僕が居ます。なんだろうエルが悲しいと僕も悲しくなる・・・これが父性というものです?
「・・・アキクン優しい!ボクアキクン好き!!」
「ぅんぅん僕もエルのこと大好きだよ?」
わぁ~ぃと凄く嬉しそうにピョンピョン跳ねるエルのそんな姿は、とても愛らしく思います。
《・・・私は、御主人様のことをこの世全てのどんなものにも負けない程に、強く愛しています》
重ッ!!
《酷いです!?》
なんてやり取りをしてたら、やっと階段まで着いたみたい。ここを下りれば次の階層ってやつだよね。
果たして鬼が出るか蛇が出るか・・・。
「エル、下の階層ってどうなってるかわかる?」
「んーと・・・ボクわかんない!ボクここで生まれてからずっとみんなと一緒に居たから」
とそう答えるエルの様子が、何かを想って寂しそうに見えたのは、きっと気のせいじゃないよね・・・だから、
「そっか・・・じゃ、今後は僕とずっと一緒だね!」
「!!・・ぅん!ずっとアキクンと一緒!!」
ベタンと僕の体にのしかかるように纏わりつくエルは、凄く愛らしいと思うけど、捕食されてる気分になるから本当は少しやめて欲しい・・・けどまぁ今だけは良いかな。
《むぅ。御主人様は、エルに優し過ぎます・・・私ももっと構って欲しいです!!》
どこか不機嫌そうにむくれて言うナビが、面白くって可愛らしいけど、甘やかすとすぐ調子に乗るからここはスルーして置きます。
《御主人様のいけず!!》
そうみんなでいちゃつきながら・・・いちゃついてるって言って良いのかなこれ?っと取り合えずそんな感じで、次の階層に向けて、僕たちは階段を下って行くのでした。




