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駄竜転生~幼女様から始まるゆかいなモラルハザード~  作者: ミズタマン♪
第二章 イニティブラのダンジョン下層攻略編
25/63

25-居候さんが厄介過ぎてツライ件

 切りが良いところで戦闘を中断して、次の対戦相手のスライムさんから距離を取った僕は、早速新たなパートナーで魂の居候さんが提示してくれた案を実行に移すことにしました。


しばし待たれよ!スライムたちよ!!?」


 と壇上に上がる舞台役者の様に振る舞う僕は、こう云った決め台詞が大好物なので、今後も演じることを覚悟して頂きたいです!

 何事かとスライムさんたちが困惑するような動きを見せたかと思ったら、直ぐにその騒ぎを止め、僕の次の行動を待ってくれるみたいです。

 流石は大和魂溢れるスライムさんの物分かり度は計り知れませんね。


「強者を求めるその志は分かった!だがしかし、無為に血を流すことが真に強者足らんとするその志に通じるのだろうか!?」


 そう大仰に語る僕を見つめながら(眼が何処にあるかわかりませんが)、ザワワとスライムさんたちが心を揺らしているのが、手に取るようにわかりました。何故わかるかは、空気読めってやつです!

 そして次の言葉を待つような多くの視線(眼が略)を感じながら僕は、更に声を高くして語ります。


「否!真に強者を求めるのなら、己らの最大の力を示し、戦ってこそ、真の強者と言えるのではないか!!だからこそ、僕はここに・・・


 一騎打ちを申し立てる!?」


 ドドン!!とバック文字が見える様なカッコいい僕の姿が見えた気がしました!《・・・御主人様(マスター)、可愛いです》

 ・・・今のは聞かなかったことにして!取り合えず話を進めます!!


「だからここにそなたらの真の強者を示すが良い!!そしてその戦いに勝った強者には、一切の手出しを無用とさせて貰う!!?」


 とそう声高に宣言してみますが、果たしてスライムさんたちの決断は如何に・・・。


 最初こそ大きくうねりを上げ、まるで洞窟全体を揺らすような、そんなスライムさんたちのどよめきが止んだかと思ったら、波をかき分けるように、一体のスライムが僕の目の前に現れました。


 そのスライムの姿は、他のスライムさんたちよりも一回り小さい感じがしますが、どことなくそのスライムが醸し出す雰囲気は、他を追随を許さないほどに強大な力を有していることは、僕が宣言した一騎打ちに応じたことでも分かるというものです。


御主人様(マスター)、あの個体は他の粘液生物群とは比較にならないほどの力を感じます。ご注意ください》


 ああ分かってるよ。一応、鑑定で確認してみるかな・・・何だか久しぶりな気もするけど、鑑定スキル発動!?


 ・・・・・あれ?発動しない??なんでさ!?


《・・・御主人様(マスター)、その事について申し上げたい事があります》


 ぇっ、なになに?もしかして何か不具合でも起きてるの?この状況でだと困るんだけど!?


《いえ、不具合というわけでは無いのですが。私が御主人様(マスター)の能力を勝手ながら最適化させて頂きました。その際、各種能力をステータスに依存する形ではなく、本来あるべき魂の虚空記録(アカシックレコード)を由来としたものにさせて頂きました》


 ぇっと・・・つまり?


《わざわざスキルの発動を行わずに、思うままに事象に干渉する・・・つまり、考えるな!感じろ!!です》


 ・・・・意味が分からないんだけど。


《ゴホン。取り合えずは、鑑定に関しては私の方で担当しますので、気になる事があれば私にお聞き下されば、お答えできるかと思います》


 ぇ、でもそれって逆に面倒になってない?


《・・・・申し訳ありません。御主人様(マスター)の負担が少しでも軽減できればと思いまして。それに・・・多く御主人様(マスター)との関わりを持ちたく、身勝手なことをしてしまったようです》


 どこかシュンとさせて落ち込むように謝罪をされてしまったら、これ以上突っ込むことが出来ないよね。

 だから・・・ん、気にしないで。僕のためにやってくれた事なんだし、それに確かに負担軽減にも繋がるだろうから。

 あとまだよく分からないけど、魔法の発動とかが簡略されて、発動し易くなったってことでしょ?それが本当なら大助かりだよ!

 だから謝らなくて良いからね?寧ろ感謝をしなきゃいけないよね・・・ありがとう!


御主人様(マスター)・・・》


 感極まった感じが伝わって来たけど、照れくさいことを言った自覚があるので、話を逸らしてしまう僕をヘタレって言うのは無しね!

 ・・・それで悪いんだけど、あのスライムの情報を教えてくれないかな?


《はい・・・あの個体の情報ですが、御主人様(マスター)と同じ『ユニーク』の特性を持ち、通常の粘液生物の個体とは数段も高い能力値があるようです》


 ユニーク?そう言えば僕も最初は『亜種』だったけど、途中から『ユニーク』に変わってたんだよね・・・面白いやつ認定されて馬鹿にされてるのかと思ってたけど、その様子だと違うみたいだね。


《はい。ある意味その認識で間違ってないところもあるのですが、同種族の中で他と違った存在に付くことが多く、面白い存在、即ち異常な個体がそれに当たるかと思います。そしてそれらに共通する点ですが・・・同種族より高い戦闘能力を有し、また特殊な能力を得る事が多いようです》


 なるほどね。じゃ、やっぱりあのスライムはヤバそうだね・・・勝てるかな?


御主人様(マスター)には『粘液生物の天敵』の称号があるため、各種補正がかかっているので問題無いかと思われますが、念のため十分に注意する事を進言いたします》


 ぅん、分かった。ありがとう。やっぱり君に任せた方が正解だったみたいだね?僕だけだったら、情報を見ただけでそこまで推察できないと思うし。

 本当に助かるよ!これからもよろしくね!!


《・・・此方こそ今後とも宜しくお願い致します。・・・貴方の元に降りられて本当に良かった》


 ん?何か言ったかな??ってもうそろそろスライムさんを相手にしないとマズイかもっと思って、そのスライムさんに意識を向けようとしたら、


「ボクガアイテニナル・・・オマエツヨイ。オマエタオシテナカマニスル」


 ・・・喋った!?片言だけど、ちゃんと理解できるし・・・やっぱりユニークの特性があるだけあって、本当に異常な個体なのかもね。

 だって魔物は基本喋らないはずだし、こんな場所で人の言葉を覚える事が出来るって事態、普通じゃ無いと思う。


「分かった。もし僕が負けたら君の仲間でもなんでもなってあげるよ!但し、僕が勝っても他のスライムがまた挑戦するのは無しで、このダンジョンから僕が脱出するまで手出し無用だよ!!」


「ワカッタ・・・ボクガマケタラ、オマエノイウトオリニスル。ホカノナカマモ、ソレヲマモルッテ、イッテル」


 ザワワと木々が騒ぐかのように、ざわめきが広がるけど、スライムさんたちが会話をしているようには見えない。僕と魂の居候さんと同じで、念話みたいな事をしてるのかも知れないな。


「じゃそういう事で良いかな。それじゃ・・・始めるよ!!」


「!!」


 様子見をしてみたいけど、そんな悠長なことをして初撃を受けるわけにもいかないし、まずは腕試しで僕から行かせて貰います!!

 と早速マジックブローを発動して、割と本気で切り裂くように振るうんだけど、そこはど素人の僕、見た感じは低学年の子が横断歩道を渡るために手を上げてるようにしか見えないと思うのは、気のせいです!《御主人様(マスター)可愛いです》だから気のせいだってば!!

 そんな感じで突撃を敢行してみるも・・・ん、やっぱり普通のスライムさんと違うみたい。

 今迄のスライムさんならそのまま攻撃を受けたはずだけど・・・俊敏な動きで躱されてしまった。

 他のスライムさんより小柄だから動きが速いって言うより、やっぱり基礎能力が段違いに違うんだと思う。

 参ったな・・・僕には『粘液生物の天敵』の補正で、スライムさんたちからの攻撃が利き難く、その逆に僕の攻撃は、多分通常より数倍の威力を与えているとわかるぐらいには、一撃必殺なんだよね。

 それを分かっているみたいで、対戦相手のスライムさんは僕の攻撃を一切受ける気がないみたい。

 一撃でも与えられれば、勝敗は決まるんだけど・・・やっぱりそう簡単にはいかないか。どうしたものかな。


《やはりここは殲滅魔法で決着をつけてみては?》


 あのさ、どんだけ殲滅魔法使いたいのよ!?


《高難易度の魔法を使用する事で、私の有用性を理解して頂けるかと思いまして。殲滅魔法など大規模な魔法の構築は、通常なら何十節分の詠唱処理が必要なのですが、私ならその処理を通常の何十倍の速さで行い、そして・・・》


 だぁもう分かったから!君が凄く頼りになる事は分かったから!!そんなに張り切ってくれるのは嬉しいけど、僕そんな俺TUEEE主人公目指してないから!!ゆるくのんびりと余生を過ごす感じでのんびりしたいから!そんな英雄さんヨロシクな感じで覚醒しちゃったら、この世界のろくでもない神とかに目を付けられちゃうからヤメテ!!


《・・・そうですか残念です。御主人様(マスター)ならこの世界を牛耳ることも不可能では無いかと思いますが・・・謙虚なのですね。流石は私の御主人様(マスター)です》


 ・・・・なんだろうか。凄くヤバい子を魂に居候させてしまった気がするのは、僕の勘違いでしょうか?

 このままだとあれよあれよと力を示しちゃって、この世界の大戦に巻き込まれるとかいうストーリー始まっちゃいます?

 これはイケません・・・僕のライフスタイルには全然合わない!!

 どうにか魂から追い出したいものだけど《そ、そんな・・・》う、嘘だよん!ホントだって!!だからそんな凄く悲しい感じ出さないで!僕の魂に居座ってるからなのか、凄く居た堪れない気持ちになって僕も悲しくなるから!ナニコレ!?

 ぐぬぅ。今は戦闘中でそれどころじゃ無いはずなのに、まさか内面世界でも決着を付けないといけないことが出来ようとは!!

 と、取り合えず、今は目の前のスライムさんとの決着をどうにかするとして・・・僕も色々と考えてみるから、穏便な方向で対処出来ないか検討してくれまいか?


《・・・了解しました。それでは最適案を提出するため暫く対処個体を観察し、考察に入ります・・・ 御主人様(マスター)ご武運を》



 ん、これで暫くの間は静かにしてくれるみたいだ・・・また変なこと言い出さない内にどうにか良い方法考えないと!


「ボクモ、コウゲキ、スル。キミニ、ボクノチカラヲ、シメシタイ」


 ぇっ!?と思った時には、急にユニークスライムさんが・・って長いから略してそのユニスラさんが、地面から跳ねて僕の頭上に来たかと思ったら、


「ハンマースタンプ」


 ちょぉ!大槌みたいのに変化して僕に向かって振り落としてきたんだけど!!こりゃ流石に避けないとマズイよね!?


「だぁらっしゃぁああああ!!」


 とホームインするようにヘッドスライディングをどうにか決め込んで避ける事に成功!

 そんな僕が先程まで居た場所を確認するために振り返ると、そこには大槌に変化したユニスラさんと、直径1mぐらいのクレーターが出来上がっていました。

 ・・・・居候さんや、流石にあれ喰らったらマズイよね?


《そうですね。あの攻撃を受けたら即死とは言いませんが、戦闘不能に陥る可能性は高いかと思われます・・・あと、居候さんという呼称はお止め頂きたいのですが》


 遺憾です。みたいな感情が伝わって来ますが、今はそれどころじゃ無いのでスルーして、こりゃますますマズイんでない?

 どうにか僕の攻撃を当てない事には、ジリ貧だし、あと戦闘に慣れてない僕の集中力がそろそろ切れそうです。もう疲れた!帰りたい!!

 なんて思う僕の想いをよそに、ユニスラさんが立て続けに大槌ことハンマースタンプなる技を連続して僕に打ち込んで来ます。


「ソコ!ニゲナイデ!!マッテ!エイ!コノ!ヤァ!!」


「ちょ!まっ、逃げるし!や、っと!こら、へい!」


《・・・傍からみたら盆踊りの合いの手みたいですね》


 そんな妙な例え要らないから!こっちは必死で逃げてるんだからね!!

 うぉおおこれマジつらたん!一撃一撃が重くて、少し掠っただけでも意識が飛びそうになって、もう必死に避けてますよ、はい!

 攻撃どころじゃないんだけどこれ。何か決め手は無いものか・・・ぅーん・・・あんまり聞きたくないけどさ、何か打開策見つかった?


御主人様(マスター)、私の扱いがぞんざいな気がするのですが・・・少し気が急いていたのかも知れませんね。ここはじっくり慎重に懐柔せねば・・・》


 ぇっ?い、今なんか変なこと言わなかった?じっくりだとか懐柔だとか・・・。


《いえ、気のせいです。それよりも敵対個体こと御主人様(マスター)の呼称するところのユニスラさんについてですが、攻撃パターンがある程度分かりましたので、私がタイミングを見て合図を行いますから、その通りに行動に移して頂けますか?》


 んー明らかに気のせいじゃないってか不穏な気がするけど、そこはあとでちゃんと話し合うとして。

 ん、分かったよ!ちゃんと言われた通りに出来るか分からないけど、頑張ってみるから指示お願いね!!


《はい、お願いします・・・これが初めての御主人様(マスター)との共同作業・・・滾ります!!》


 ふむぅ。同志な事は嬉しいけど、それがすぐ傍ってか魂の中でやられると何というか・・・


 凄く痛いです。


《!?・・・失念しておりました。カルマを背負いし次元を駆る者の気難しさを・・・流石は御主人様(マスター)、勉強になります》


 魂の同居人が逞し過ぎてツライ件!?


「アノ、ナンダカボク、ムシサレテルキガスル!モットカマッテ!!」


 ぇ、何言ってるのこのユニスラさん・・・まるでこれじゃ板挟みのラブコメみたいな展開じゃないか!

 片やいつの間にか勝手に魂に住み着いた過激同志さん、片や絶賛戦闘中の大槌変態粘液生物かまってちゃん・・・誰得なう?

 もうこんな訳の分からない状況はとっとと終わらせてやりましょう!頼みましたよ!ドドリ・・・居候さん!!


《任せて下さい!御主人様(マスター)の戦闘力53万ならきっとやれます!?》


 ・・・痛いって言ってごめんなさい。いい仕事するよ君!!


 とお互いにサムズアップする姿を幻視しながら、僕は、ユニスラさんに立ち向かって行くのでした。

 

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