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20-華やかなお茶会に憧れるものですが、ふとした日々の中にも、遜色のない華やかな時間はあるかと思います。でもそれは、その時間を共有できる相手が居れば、さらに楽しめるのかも知れません(邂逅茶会)

 いま、僕の目の前には空のコップが一つ置かれています。

 そんなコップの前で僕は、傍から見ても分かるぐらい悲壮感に浸って居りました。

 いえ別に何か酷いことが起きたわけでは無いのですよ。無いのですが・・・取り合えず少し前に戻りたいと思います(トーン低め)。


 さぁ今からドリンクフェスだ!わっしょぃ!!と早速注文するために、可愛らしい制服を身に着けたウェイトレスのお姉さんに注文をしようと呼びかけたら、いい返事は頂けたけど、最初僕のことに気づかなくって、ちと寂しく思うも仕方ないと、こっちだよアピールした後、気づいてくれたお姉さんにギョッとされたけど、先程の騒ぎを見てたらしく、直ぐに可愛らしい笑顔で対応して頂きました。流石はプロだよね♪

 それでいざ注文しようとしたらメニュー表が無いことに気づき、メニュー表をお願いしたらそんなものは無いとの事で、仕方なく口頭にて、取り合えず今はドリンクの種類だけ聞いてみたところ、水とお茶とシュワビルしか無いとのこと。

 シュワビルってなんぞ?って聞いてみたら、優しく丁寧に教えてもらい、結局は強炭酸ジュースみたいなものらしい。

 一応お酒もあるらしいけど、ギルド内の規定で昼間は出さないんだってさ。まぁ昼間から飲んだくれとか外聞も悪いだろうしね。

 じゃそのシュワビルをこのお金で買える分お願いします!って元気よくお願いしたら、何だか可愛らしくも残念そうな子を見る目で見られました。

 可愛らしくのとこはまぁ良いとしても、何故に残念そうな子に向ける目で見るのかと思ったら、お姉さんが持ってきた、そのシュワビルで謎が解けました。


 リーファから受け取った硬貨1枚で頼めたシュワビルは・・・1杯でした。


 ・・・ん、まぁ正直何と無くわかってた。あんな稼ぐ稼ぐばっか言ってる守銭奴幼女が気前が良いはずが無いって。

 でもさ、少しは期待するもんじゃない?しかも一応さっき、感謝の言葉を聞いた後だよ?やっぱり少しは期待しちゃうって!

 まぁあの後、僕の態度がアレで怒っちゃったけどさ。

 ちぇ、ケチケチしてないで、2、3杯ぐらい奢ってくれても良いのに。

 ん?幼女に奢られるのはどうかって?そんなこと思うやからが居たら、僕はこう言ってやりたい・・・・


 きゅわ?きゅわわわん??(ぇ?僕ベビードラゴンですがなにか?)


 前の世界の基準で考えてたら、この世界では生きていけないと思うので、自分に正直でありたいと思います!

 さてっとそんなどうでも良い事は置いといて。

 ウェイトレスのお姉さんに給仕の感謝を述べ、早速シュワビルを飲んでみたいと思います!

 ぉーシュワワンと炭酸が凄くて見た目、完全に麦のアルコール漬けだけど、まぁでもこれはノンアルコールですからね?

 匂いは何と無く甘い感じがする・・・ではでは・・・ゴクっごくッゴク・・・・


 ぅ、うっまぁあああああああああああああああ!!?


 ぇっ!ナニコレ!?めっさ美味しいんだけど!!

 甘い中にも少し苦いと言う矛盾した表現かも知れないけど、それが丁度よく口の中で調和され、さらにアクセントも効いてて、飲んだ瞬間にふわっと甘みが来たと思ったら、飲み干す頃には、少しの苦みが後味の良さを舌に残し、また飲みたくなると言う無限ループが・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・

 ・・・・ん、あまりの美味しさに一息で飲んでしまったんよ。


 そして残った先にあるのは、空になった一つのコップがありましたと。。。

 もうお分かり頂けただろうか?快楽の先にあるのはいつも虚しさなんだって・・・もう1杯飲みたいなう。

 今度はもう少し味わいながらゆっくり飲むからさ、だからお願い・・・なんてまぁ無理だよね。

 頼まなくてもリーファの顔の表情筋まではっきりと思い浮かぶぐらい、拒まれる道しか見えない。特にお金が絡んでると。

 ぁあ何故僕は、あの1杯を大切に飲まなかったのだろうか・・・とそんな悲壮感たっぷりに想い浸っていると。


「こんにちは、可愛らしいドラゴンさん。こちら座っても良いかしら?」


 コップをひたっと両手で掴んで、女々しく中身がまだ残って無いかなってコップの中をじっと見てた僕は、そう声を掛けた相手に顔も向けずに、


「ぁ、はい。どうぞ・・・」


 と空返事をしました。そんな御座なりな僕の対応に気を悪くした風でも無く、むしろ今の僕の様子を心配するかのように、


「あらあら・・・とても悲しそうね?なにかあったのかしら?」


 と此方の事を気遣ってくれる声が聞こえてきて、流石にこれは悪いことをしたかなって思った僕は、先程の失礼な態度を謝ろうと、声のする方へ顔を向けたら、そこに居たのは・・・


 濡羽色ぬればいろのローブを目深にかぶり、如何にも怪しい然とした、魔女みたいな恰好をした人が、目の前に座っていました。


 何故魔女というか女の人かってわかるかと言うと、口調もそうだけど、声が若くて艶めかしい感じがして、どこか男心をくすぐる色気のある声だった。

 僕はそのことに気づいて、さらに警戒心を高めることにした。だってそんな如何にもな恰好でしかも男受けする声って・・・もう明らかに物語の冒頭に出てくる悪い魔女じゃないですかぁー。次元の探究者を舐めんなよ!(その通りです)

 まぁでも一応心配してくれたし、それについては少しは答えても良いよね?紳士の嗜みとして大事だと思いますし。


「先程は失礼しました。あとご心配頂きどうも。でも大丈夫ですので、気にしないで下さい」


「あらら、つれないわねぇ・・・せっかくこうして出会えたのですから、少しはお喋りに付き合ってくれると嬉しいのだけども。でもそうねぇ・・・そちらの方よろしくて?」


 何やらウェイトレスのお姉さんに注文をしているみたいですが、僕は我関せずにコップの中身がどうやったら増えるかと考えるのを優先します。

 やっぱり、リーファからお金を借りるしか無いのかな・・・でも絶対利子取るよね、あの暴利幼女。

 欲しいものはやっぱり自力で稼いで、手に入れるしか道は無いよね。軽々しくお金を借りるのは、闇金と言う魔の獣の口に自ら飛び込むようなものだもの。人に貸しても借りるなってやつよ。ぅん、頑張って稼いで、たらふくシュワビルを飲むんだ!

 ぅおおおお!とやる気が満ち溢れてきたと思ったら、目の前になにやら甘い匂いのするモノが置かれました。

 はてこれはなんぞやとピントを合わせてみるとそこには・・・シュワビルさんが3杯もありました・・・ぇっ!?


「どうぞ、私の奢りですわ。その代わりと言ってはなんだけど、暇な私と少しばかりお喋りに付き合って欲しいわね。お茶の時間は、会話に華を咲かせてこそ、甘美なひとときを過ごせるのよ?」


 そう言って、自前ぽぃティーセットでお茶を楽しんでいました。いつの間に出したんだろう?

 絶対ギルドのじゃないと思うんだよね。こんな高そうな陶器のもの毎回使ってたら、直ぐに傷んでダメになると思うし、冒険者みたいな荒くれ者が使うには上等過ぎて、まずギルドが出すはずがない・・・ホントこの人何者だろうか?


「ふふっ。そんなに警戒しないで?せっかく注文したのですから、ぬるくなる前にお飲みになった方がよろしいわ。シュワブルは、キンキンに冷えた時の方が美味しいと聞きますから」


 私には少し刺激が強すぎて飲めないのだけどね、なんて言われちゃ飲まないわけにはいかないよね?

 いやいや大丈夫!ちゃんと警戒はしているって!それに・・・シュワビルに罪はないだろ?(漢らしい顔で)


「そ、そうですね!じゃ遠慮なく頂きます!!・・・ゴクッごくゴクッ・・・ぷはぁーこのために生きてるって感じ!」


「うふふっ・・ぁ、ごめんなさいね。つい懐かしくって・・・昔の仲の良い子達も同じことを言っていたものだから」


 と少し寂しくも懐かしい思い出に浸る姿からは、なんで今まで警戒してたんだろうと不思議に思うくらいには、悪い感じはしなかった。

 それにフードを目深にしているから目元は見れないけど、僕をみる視線はまったく敵意を感じなくて、むしろ温かくどこか慈愛に満ちた様なこそばゆいものだった。

 だからその所為ってわけじゃないけど、ついついリーファに対しての愚痴や、これまでの事、もち異世界云々は抜かせてだけど、リーファに召喚されてからここまでの事を掻い摘んで語ってる自分が居た。


「あらあらそれは大変だったのね・・・でもその子はそう悪い子だとは思えないわね」


「ぇーちゃんと話し聞いてました?本当に酷い目に遭ったんですから。それにシュワビルもケチるし」


「あら、それはあまり褒められなことじゃないわね。男の子なんだから、あまり女の子に頼ってばっかりじゃダメよ?」


「ぅっ、確かにそうですけど・・・ぁ、シュワビルこんなにご馳走になってごめんなさい!いつかこのお返しはしますね!!」


「ふふっ、私は良いのよ気にしなくて。それに私はもう女の子って言う歳じゃないのだし」


「いやいや何を言いますか!美に気を使い続けられる女性は、みな女の子ですよ!!」


 と前に母さんがそう言って、父さんに高い化粧品の必要性を語り、「お父さんは私がいつまでも女の子だと嬉しいわよね?」と有無を言わせない感じで、父さんが楽しみにしてた新型バイクの購入資金をふんだくってた。

 それにただ単にそう言ったんじゃないんだ。

 確かにフードを被っててこの人の顔は窺えないけど、仕草の一つ一つやティーセットの取り扱い方がとても洗練されていて、きっとこの人の在り方そのものに一つの美を感じさせられたから、自然にそう口から出たんだと思う。


「あ、あらそうかしら?ふふっ、そんな純粋そうな目で見られたら、嘘だとは言えないわね。ん、少し懐かしい気配がしたから声をかけたけど、なかなかどうして・・・さて、私はそろそろお暇しますわね」


 またしてもいつの間にかティーセットが消えていて、静かに席を立つその所作も美しく、やっぱりこの人は只者じゃ無いと思ったけど、やっぱりもう警戒心を抱くことは出来なかった。

 とそこでふと、まだこの人の名前を聞いて無いことに今さらになって気づいた。


「ぁ、ちょっと待ってください!お名前を伺ってもいいですか?シュワビルの事も含めてまた後日お礼もしたいので」


「ふふっ、本当に気にしなくて良いのよ。これも投資みたいなものなのだし。それに名前はまたの機会に楽しみにしているわ。それじゃまたね、アキクン」


 ぁ、止める間もなくギルドから出て行っちゃた・・・あれ?そう言えば僕、自己紹介したっけ?

 ってさっき大声で口上を並べ立てて名前もだしてたから、その時に聞いてたのかも。

 でもやっぱアレ聞かれてたか・・・なんだろう、あの人には聞かれたくなかったと思っちゃうのは、やっぱり僕がまだまだお子様だからかな?

 

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