19-盤上に立たされるのは嫌な気もしますが、采配が良ければ見返りが大きい事も多々あります。結局は誰の元にあるかが問題ではないでしょうか(活殺自在)
魔物が喋るのが相当珍しいことは、リサさんの反応で十分すぎるぐらいわかったけど、この展開って今後も続くのかな?
そうなると行く先々で騒ぎになって気が滅入るのだけども。何かいい対策は無いものか。。。
ハッ!そうだ!!もうここはいっその事、魔物が喋るって事はなかなか浸透しないだろうけど、リーファの従魔の仔竜は、めっさ喋るって事を広めちゃえば良いんだ!?
流石は僕だね!この冴えわたる頭脳が怖ろしいやい♪(良かったですね)
よぉしぃ!じゃここはいっちょ盛大にやりますか!!
「しゃべったぁああああああああああああああああああああああああ・・・」
・・・リサさんいつまで叫んでるんだろうか・・・あれ?でもよく見たら、僕の様子を伺いつつ、次のアクションを待ってる様な気がするんだけど。
ぁ、いまウィンクして来て、「さぁ次は君の番だよ!」って・・・ぇっ!なにそのリアクション芸人みたいなノリ!?
ホントこの世界の人たちって自由過ぎやしないか!!?
ま、まぁでも畏れられてるわけじゃないから良いのかな?いい・・って事にして、じゃ次は僕の番だね!よしきた!!
「そう!いま喋ったのはこの僕!!仔竜にして、幾多の次元を渡り歩き、その叡智を我が身に宿し、そこに居るリーファ嬢に召喚された、その偉大なる者の名を耳にするがいい!!我が真名は・・・アキクン!!?」
ドドド、ドカーン!?
と背後に戦隊モノの登場シーンの様な無駄に火薬をふんだんに使った登場シーンが今、僕の脳内に流れております!!
き、決まったかな?と気持ち良い口上を並べ立てて、ついついノリに乗っちゃって、舞台役者みたいな決めポーズをしちゃったもんだから、目を閉じちゃったんだよね。
だから、ちらりと片目を開けて、リサさんを始めとしたオーディエンスの皆さんの反応を窺ってみる。
どうカッコいいじゃろ?
そこにはリサさんを始めとした、ギルド職員の皆さん、疎らに居た冒険者の方々、そして何故か呆れ顔のリーファを含めたみんなが、
「「「・・・ないわぁー」」」
異口同音でそんな声と共に、閑古鳥とユニソングを奏でながら、ギルド内に響き渡りました。。。
解せぬ!げせぬぅ!!げせぬぅぅうううううううううううううううう!!?
「ねぇねぇ、『幾多の次元』ってなに?」
「あれだろ?渡り歩いたって言ってたから、色んな町って意味で、色んなとこ回ってこの町に来たって事じゃね?それよりも、あのなりでしかも自分で偉大って・・・ぷぅークスクス」
「しかもよ、あんな壮大な口上しといて、名前が『アキクン』って、締まらないにもほどがあるよね!マジウケるんですけど!!ぁ、でもよく見たら可愛いかも・・・でもアキクン・・・ぷぅークスクス」
「もう!可哀想じゃない!見た目もそうだけど、名前も案外似合ってて可愛いんじゃない?ほらほらぁおいでぇ~アメちゃん貰う?」
顔を俯かせ、両肩を震わせながら、屈辱に耐える僕のライフゲージは残りわずかとなりました・・・このままだと僕は、この世界を呪う名付しがたい何かに変貌するかも知れません・・・まぁその前に羞恥で逝くかも知れませんが・・・またポチたんに逢えると良いな・・・えへへっ。
完全に打ちのめされた僕は、来世の旅路に思いを馳せっていると、僕の横で呆れた顔をしてたリーファが、珍しく助けてくれました。
「ハァ~アンタはもう・・・。ほらほら見世物じゃ無いわよ!散った散った!!これ以上私の従魔にちょっかい出すなら、私にも考えがあるわ!」
とリーファの体から紫電がバチバチと見せたかと思ったら、体の周りを帯電させて、威嚇するように周りを睨みつけました。
「ゲッ、よく見たら爆雷幼女のリーファじゃねぇか!」
「そう言えばさっき、あの仔竜がリーファに召喚されたって言ってたわよ?」
「マジかよ・・・ってしかも召喚魔法って・・・流石、この町イニティブラの三大イカレ幼女の一人だけあるな」
「なにか言ったかしら?」
ギロリと周りを睨み、それに怯んだ順に退散していくオーディエンスの皆さん・・・ご来場ありがとうございました(血涙)
それにしても僕を助けてくれるなんて、どんな心境の変化だろうか?何だかあとが怖いからさっさと感謝を述べようっと。
「あ、ありがとうリーファ・・・」
「ふん!べ、別にこれぐらいどうって事無いわ!そ、それにさっきはありがとう・・・ッ、ゆ、優美なレディは貸しを作らないものなのよ!!」
わかったらもうこの話は終わりとばかりにそっぽを向くリーファ・・・傍から見たら照れちゃって可愛いなんて感想を抱けるのでしょうが、ごめん・・・何だろう鳥肌立っちゃったんだけど僕。
あの暴君幼女でしかもさっき『爆雷幼女』っていう普通の幼女が絶対付かないような二つ名があって、しかも何て言われてたか覚えてます?
『三大イカレ幼女の一人』・・・そんな事いわれてる子が、素直に感謝を述べてきたら、警戒するって言うか鳥肌立っちゃうのも仕方なくない?僕そこまで人ってか竜が出来てないやい!ベビーだし!!(現実逃避ですね)
僕が何も言わない事に疑問を抱いたのか、僕の様子を窺うようにこちらに顔を向けるリーファ。
「ん?いったいどうしたのよ・・・ってなんでそこで怯えた顔になるのよ!フン!もう知らないわ!!リサ!それでもう登録は終わったのかしら!!」
さっきまで騒がし気に爆笑したり驚愕したりと忙しかった、そんなリサさんはと言うと、何故か黙ってこちらを見てたかと思ったら、こちらの視線に気づいてニヤニヤと厭らしい顔になりました。何だか手のひらの上で転がされた感があって、癪に思ったのは気のせいでしょうか。
「いししっ、上手くいったようで良かったわ。はいはい登録ねバッチリんこよ!ほいさギルドカード。あと本当は登録費もあるんだけど、ここはお祝いとして私が払っとくよ。もし余ったお金があるなら、パァっと祝杯でもどう?私の口利きで今日は安くサービスさせとくよ?」
ぉお!なんて粋な計らい!!少し疑うような感じに思っちゃって申し訳ないよ。
いやぁリサさんってまだ若いはずなのに姉御肌って言うか、妙な貫禄がある中にも人懐っこい感じで、絶対このギルド内の看板娘だよね?
ふむふむぅそんなリサさんが居るギルドなら、そう悪いギルドメンバーは居ないかもね。これで安心してここに通えるよ!
やっぱり平和が一番だよね!変に絡んでくる強面のおっちゃんとか勘弁なう。ぇ?やっぱ強面が苦手じゃないかって??
バッカおめぇ、好き好んで強面に関わるとかソイツ絶対どМだから、付き合い考えた方が良いよ?
「ありがとうリサ。でも祝杯の方は遠慮するわ。このあと用事があるし・・・ぁ、あと用意して貰いたいものがあるんだけど、いいかしら?」
「ありゃ残念。じゃまたの機会ってことでヨロぉ♪たまにはメルも含めて一緒にどんちゃんしようぜ!んで用意したいものってなに?」
ぇー断っちゃったよ・・・ホント用事ってなにさ?その用事のあとじゃダメなんだろうか・・・ハァ~僕もどんちゃんして、めっさ溜まってるはずの鬱憤解放しないとそろそろ反旗翻しちゃうよ?・・・ん、ごめん今の無し!どうせ悲劇しか待ってない!!(ドンマイです)
「そうねぇ・・・ちょっと待っててリサ。・・・アンタちょっと良い?」
「ん?なに??」
「少し時間がかかるかも知れないから、あっちのテーブル席で待っててくれる?ほら、飲み物代は出すから、注文はあそこに居る人に頼めばいいわ」
わかったわね?と有無を言わせずに、硬貨を握らせて、この場から追い出すリーファ。
まぁ別にいいけどね。この世界の飲み物ってなにがあるか気になるし、メルさんとこで出して貰ったお茶は結構美味しかったから、この世界の飲食に関しては期待出来るんだよね。
ぁ、そう言えば神が関わったりしてるんだっけ・・・ふむぅ道楽に関しては称賛を述べようでは無いか!
ふんふぅ~んとまだ見ぬ料理に思いを馳せながら、まずはこのギルドの飲み物から制覇してやるぜ!と勢い込みながらテーブル席に向かうのでした。




